ワンちゃんが突然体をけいれんさせ、手足をひきつらせるてんかんの症状。突然このような場面を目にすると、飼い主さんはどうしたら良いかわからないと同時に、非常に驚いて焦ってしまうことでしょう。
ワンちゃんのてんかんにはいくつかの原因がありますが、わりとよく起こる症状だと言われています。
突然の発作が始まったときに、慌てないように対処法などを知っておきましょう。
てんかんは、脳細胞の活動が異常になり、その結果としててんかん発作が現れる病気です。
脳の異常な興奮が体のけいれんや意識障害を引き起こしてしまいますが、原因や症状は多岐にわたります。
てんかんは「突発性てんかん」「構造的てんかん」「反応性てんかん」に分類されます。
それぞれどういったものか、順に見ていきましょう。
まず、「突発性てんかん」は発作症状は現れるものの脳自体には明らかな異常は見つからず、血液検査や尿検査、MRI検査などでも不自然な点が見られません。
脳波検査ではてんかん特有の異常が検出されますが、原因が全くわからないものや遺伝的要因に関わるものもあります。
シニア期よりも少し手前のプレシニア期までに発症することが多く、初めて発作を起こしてから繰り返し発作が起きることが特徴です。
発作がないときはいたって正常で、日常生活も普通に送ることができます。
一方「構造的てんかん」は、脳炎、脳梗塞、脳出血、頭部外傷などの脳の構造的な疾患により発作が起こるてんかんです。
てんかん発作以外に旋回や徘徊などの歩行異常、失明などの症状が見られることがあり、高齢のワンちゃんに多く見られますが、脳炎は比較的若いワンちゃんの発症が多く見られます。
診断は脳脊髄液検査やMRI検査で判断されます。
「反応性てんかん」の場合は、低血糖・腎不全・肝不全・ミネラル異常など内臓の疾患に反応して発症するてんかんです。
脳に構造的な異常はないのですが、二次的に脳の過剰興奮が起き、てんかん発作が生じます。
熱中症で体温が高くなりすぎたときや、なんらかの中毒症状を起こしたときにも二次的にてんかん発作が起こることもあります。
「反応性てんかん」は、一般的な血液検査で異常が見つかることが多く診断されます。
てんかんの発作には、さまざまな症状があります。
「焦点性てんかん発作」は体の一部に限局してあらわれる症状で、手足がひきつる・よだれを垂らす・顔面の一部がぴくぴくするなどの症状が見られますが、意識は正常であることが多いです。
「全般性てんかん発作」は突然意識を失う、横になったまま激しく手足をけいれんさせるなどの全身性の発作の症状です。
ワンちゃんに最もよく見られる症状ですが、初めて見た飼い主さんは驚くことが多いでしょう。
意識がないことが多く、飼い主さんの呼びかけにも反応しません。
また、強直性発作という四肢が緊張して強く突っ張ってしまう発作、遊泳するように四肢をリズミカルに動かす間代性発作、両方が続いて起こる発作は強直間代性発作とよび、よだれや尿失禁も同時に起こることがあります。
激しいけいれん症状は2~3分で治まることが多いですが、発作が終息した後もうろうろと徘徊したり、ふらついたり、反応が鈍い様子が見られます。
このような後遺症は、通常は時間と共に消失することが多いです。
「非けいれん性全般てんかん発作」の場合は、脳の神経細胞では発作が起きていてもけいれんなどの強い症状が見られず、ワンちゃんは力が抜けて脱力していたり、寝ているだけのように見えたりするので発作かどうかの見極めが非常に困難です。
ワンちゃんのてんかんには、前兆のような症状が見られることもあるようです。
ワンちゃんが普段より甘えん坊になったり、不安そうな様子を見せたりと、まるでワンちゃん自身が予兆しているように思えます。
人間のてんかんでは、低気圧などの気圧の変化により発症すると考えられています。
一方で、ワンちゃんのてんかんの原因についても、気圧の変化が影響を与える可能性があります。
ワンちゃんのてんかん発作を目の当たりにすると、飼い主さんは驚いて慌ててしまうことが多いようです。
発作時に飼い主さんはどのような行動をするべきでしょうか?
発作中のワンちゃんはけいれんで体は動かしていても、意識はなく周りの状況も認識していません。
飼い主さんが慌てて無理に触ったり抱っこしようとしたら、噛まれたりケガをしてしまうこともあるので、そっと見守りましょう。
ワンちゃん自身が舌を噛まないようにと、口に手やタオルなどを入れる行為も危険ですのでやめましょう。
ワンちゃんの周りにぶつかると危険なものがある場合は片付けをし、片付けられない家具などはクッションなどでカバーしてワンちゃんがケガをしないように注意しましょう。
ワンちゃんの発作中は飼い主さんは心配で余裕がないかもしれませんが、できればワンちゃんの様子を動画に撮っておくのがおすすめです。
スマホなどで動画を撮っておくと、ワンちゃんの発作の状態を動物病院で説明する際に、獣医師さんの診断の判断に役立つことがあります。
てんかんの発作は大体が2~3分ほどすれば消滅することが多いのですが、中には5分以上続く場合もあります。
1回の発作が5分以上続く時や、発作が治まりきる前に次の発作の波が来てしまう症状を「発作の重積状態」と言います。
また1回目の発作から24時間以内に2回以上の発作が起こる症状を「群発発作」と言い、どちらも深刻な状況です。
どちらの症状も脳に大きなダメージを受けることで後遺症が残る危険性があるため、緊急で対応が必要になります。
様子を見ずに早急に動物病院に連絡をして、判断を仰ぎましょう。
てんかんの発作には原因によって症状もさまざまですが、どのような治療が行われるのでしょうか?
てんかん発作の頻度が多いワンちゃんには、抗てんかん薬という発作を止める薬が有効です。
抗てんかん薬には種類がいくつかあり、獣医さんがワンちゃんの年齢や状態、発作のタイプなどから判断した薬が処方されます。
一般的に抗てんかん薬は、生涯にわたって服用することが多いです。
ほとんどの場合、毎日決まった時間に飲むように指示されるので飲み忘れないよう、規則正しい投薬を心がけましょう。
飲ませるのを忘れたり、勝手に投薬の中止や量の調整をしてしまうと、重いてんかん発作を引き起こすリスクがあります。
投薬について気になることがあれば飼い主さんの判断での変更は避け、必ず獣医さんに相談しましょう。
構造的てんかんの場合は脳に疾患があることが原因のため、MRI検査などで診断後に外科治療を必要とすることがあります。
その場合は入院して、原因疾患の治療と同時にてんかん治療を行うことになります。
また、発作の重積状態や群発発作が起こったワンちゃんも入院治療になることもあります。
どちらの発作も早期に受診して早期に治療を始めなければ、命にかかわることもあるので注意しましょう。
ワンちゃんの難治性のてんかんに、中鎖脂肪酸(MCT)食が発作回数を減少させることが報告されており、MCT食の療法食も販売されています。
抗てんかん薬で発作がなかなかコントロールしにくいワンちゃんは、獣医師さんに相談してみてもいいかもしれません。
ワンちゃんのてんかんは、残念ながら完全に治癒することはないことが多いのですが、適切な治療と飼い主さんの看護で発作をうまくコントロールできれば、通常の生活を過ごすことができることも多く、本来の寿命を全うすることもできます。
今回の記事を参考にして、突然愛犬がてんかんを起こしたとしても、慌てずにしっかりと対処できるように心構えしておきましょう。
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