繁殖販売業者への数値規制を知っている?保護団体へアンケート調査【ニュース】

繁殖販売業者への数値規制を知っている?保護団体へアンケート調査【ニュース】

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コロナ禍で新たなパートナーとの暮らしを望む人が増え、ワンちゃん、ネコちゃんの新規飼育数は増加傾向にあります。
その一方で、国内の犬猫殺処分数は年間約3.3万頭にのぼります。

近年は有名人による発信の影響もあり、保護犬や保護猫を迎える文化も一般的なものとして浸透してきました。
しかし、狭いスペースで大量に繁殖させるなど、悪質な繁殖・販売事業者の問題は根深く残っています。

これらへの対策として注目されているのが、動物愛護管理法改正に伴う「数値規制」の導入です。
ケージや運動スペースの広さ、スタッフ1人あたりの飼養管理頭数の上限設定、繁殖を引退させる時期に関する定めなどがなされ、悪質事業者の排除やペット流通市場の健全化が期待されています。

この「数値規制」について認知状況などを明らかにすべく、2021年5月15日~5月19日の期間に、審査制保護犬猫マッチングサイトが意識調査を実施しました。
マッチングサイトに登録する46の保護団体と、2,262名の個人会員を対象に行われた調査結果を見ていきましょう。

 

「数値規制」へ期待する団体が過半数

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まず、数値規制への期待度を尋ねると、「期待している」が41%、「とても期待している」が13%となり、合計で54%が前向きに捉えていると回答しました。

一方で「どちらともいえない」が過半数に近い41%にのぼり、慎重な見方をしている団体も多いようです。
数値規制によりすぐに根本的な解決ができるわけではありませんが、この期待に沿った未来が待っていることを祈るばかりです。

 
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続いて「数値規制」が犬猫の繁殖・販売業の適正化につながると思うか尋ねたところ、「やや思う」が最多の54%で、「どちらともいえない」が17%、「やや思わない」と「全く思わない」が合計で28%という結果に。

悪質事業者の排除に対する実効性としては、想定より期待値が低い団体も少なくないことが分かりました。

実質的に「数値規制が運用されないこと」や「繁殖事業者の廃業による殺処分の増加」を招いてしまうこと、「繁殖事業者からのレスキュー頻発による保護活動の負荷」の上昇などが懸念点として挙げられ、50%以上の団体から指摘されています。

また、「そもそもの数値基準が甘い」と、設定値自体に疑問を呈する声もありました。
 
 

「数値規制」の対象となる保護団体も基準を満たせるのか

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「数値規制」については繁殖・販売事業者への準用に注目が集まりますが、じつは第二種動物取扱業者に該当する動物保護団体にも準用されます。
これについて知っているかどうかを尋ねたところ、65%は「知っている」と回答したものの、22%は「知っているが、よく分からない」とし、13%は「知らなかった」と回答しました。

「知っている」と回答した団体の中には、すでに保健所とのヒアリングを完了しているところもあるようです。

その一方で、施行目前の段階でも残る35%には十分に認知されていない現状が明らかになりました。
第二種動物取扱業者とは、営利を目的とせず飼養施設で一定数以上の動物を飼養している団体のこと。
使用施設を有していない、もしくは飼養頭数が少ない場合には対象外となり、すべての団体が対象ではないことも、認知があまり進んでいない要因の一つかもしれません。

 
 
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アンケートに回答した保護団体の60%は、動物取扱業の届出を行っており、今回の規制の対象ともなりますが、数値基準を満たせると感じるかどうか尋ねた結果では、78%と約8割が「基準を満たせる」とした一方、15%の団体は現時点で「基準を満たしていない」と回答し、中には「改善も難しい」とするケースもあったそうです。

数値規制には3年の経過措置が取られており、改善のための対応期間が一定程度設けられていますが、悪質事業者が犬猫の保護・譲渡先を確保しないまま遺棄したり、殺処分したりする危険もあります。
保護先として検討される民間保護団体においてもリソース不足に悩む団体は少なくなく、引き受けケースが急増すれば、多頭飼育崩壊になりかねません。

施行を控えその影響を感じているかどうか尋ねた設問で、20%の保護団体が影響を感じ始めているとしたことも報告されており、「団体運用の見直しが必要」と考えている団体もあったそうです。

 
 

飼い主側の認知度はまだまだ低め

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ここまで、保護団体に対する調査を紹介してきましたが、飼い主さんは「数値規制」をどう捉えているのでしょうか。
個人会員を対象にした調査結果を見ていきましょう。

個人会員に「数値規制」について知っているかどうか尋ねたところ、「よく知っている」人は全体のわずか10%にとどまり、「少し知っている」が40%、「知らないが興味あり」が48%という結果になりました。

保護犬・保護猫のマッチングサイト会員が対象であるため、殺処分問題などについては、一般に比べ関心が高い傾向にあると考えられますが、そうした対象者でも数値規制に対する認知度はまだまだ低く、浸透していないことが分かります。

規制が真に機能するには、社会全体で悪質な事業者を許容しない風潮を作り、最低限のレベルを満たしていることが社会的な常識になるようにしなければなりません。

その点で、認知拡大は今後の課題ですが、繁殖・飼育環境の適正化や、命への責任を求める意識の高まりはみられており、ペットの繁殖・販売事業者に求めることを複数選択可で問うたところ、回答率の高い上位3つは、「繁殖引退犬猫や販売しない子も最後まで責任をもつこと」が91%、「犬猫にとって適切な環境を整えること」が89%、「十分なケアを行える人員を確保すること」の59%だったことが報告されました。

 
 

まとめ

動物たちと私たちがともにより豊かに、気持ちよく暮らしていける環境を整えるため、社会全体で悪質事業者らを許さず、市場の健全化とアニマルウェルフェアの意識を向上させていくことが強く求められています。

「数値規制」の導入に関しても、まだまだ課題は多く、今後の取り組みが注視されるといえるでしょう。

より良い社会づくり、環境づくりのため、一人一人にできることを考えながら、命と向き合っていきたいですね。

 

 

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