近年は動物医療の分野も技術的進化や機器の進化がめざましく、かつてであれば分からなかった病気でも早期発見、早期治療ができるようになってきました。
さらに外科手術を含む高度治療により、愛犬・愛猫の健康寿命は延びていると言えるでしょう。
こうしたワンちゃん、ネコちゃんたちの健康を支える検査医療機器として重要視されるのが、X線を使って体の断面を撮影し、体内の状態を見ることができる獣医用CTスキャナー。
レントゲン検査や血液検査だけでは発見できなかった病気も、CTスキャナーならより精密に検査することができます。
以前は大学病院など、特別な設備を備える大型の動物病院でしか利用されていませんでしたが、最近は少しずつ街の身近な病院でも導入しているところが増えてきました。
今回は、世界における「獣医用CTスキャナー市場にかかる調査レポート」の概要を紹介します。
市場調査を行うリサーチ会社は、CTスキャナーの市場価値や市場ボリューム、成長率など多岐にわたる情報をまとめ、SWOT分析やバリューチェーン分析、PESTEL分析といった多様なツールに基づいた市場分析を行いました。
レポートによると獣医用CTスキャナーは2022年で1億7,400万ドルの市場価値となり、さらに2030年末までには2億9,800万ドルに到達するとされ、大きな市場拡大が見込まれています。
また、2022年から2030年の間には、CAGR(compound average growth rate・年平均成長率)が8%で拡大する予想となり、顕著な市場成長が期待されます。
獣医用CTスキャナーは、ワンちゃんやネコちゃんなどの小動物をはじめ、大学病院や学術機関を中心に馬や家畜、その他さまざまな動物たちにも使われています。
体の周囲360度を回転しながら連続撮影し、一度に数多くの断面データを得ることができるため、骨格異常や臓器系の異常、腫瘍の有無や現在の状態などを詳しく把握するのに欠かせません。
立体3D画像を作り出せる点も大きな特徴で、手術が必要となった場合に、その精密な設計図、計画を立てていく際、とくに役立つものと期待されます。
そんなCTスキャナーの市場拡大が見込まれる背景にはどういったことが挙げられるのでしょうか。
人獣共通感染症に対応した研究・調査が活発になっていることのほか、愛犬・愛猫らを家族として迎え入れる人々が増えていることが、今後の獣医用CTスキャナーに対する需要を底上げし、市場成長を促進する要因になるとみられています。
また、画像の進化や愛犬・愛猫らにかける医療費の世界的な増加傾向、ペット保険の普及率上昇、世界中で活躍する獣医そのものの数の増加といった要素も、市場において獣医用CTスキャナーの需要を高めていくと考えられました。
中でもワンちゃんやネコちゃん、家庭で飼われるような鳥、小型哺乳類などを含む、「小型コンパニオンアニマル」に用いられる獣医用CTスキャナーは、市場全体を牽引するものになると予測されています。
世界中の多くの人々が動物を家族として迎えるようになっていること、多額の医療費をかけたケアの広がり、ペット保険ニーズの高まりが主な背景としてあり、身近な動物病院での導入・利用が今後さらに当たり前になっていくと考えられました。
レポートは、北米、アジア太平洋、ラテンアメリカ、ヨーロッパ、中東・アフリカという地域別でも分析がなされました。
中でも北米地域に属するアメリカが、引き続き大きな市場シェアを維持すると見込まれています。
American Pet Products Association(APPA)が行った2017年から2018年の全国調査によると、アメリカの世帯全体の68%にあたる約8,500万世帯が、愛犬や愛猫などと暮らしていることが判明しました。
アメリカでは犬猫を里親として迎える家庭の増加はもちろん、犬猫にかける医療費の増加が見込まれています。
さらに、私たちの身近に生きるさまざまな動物の疾患や外傷の有病率が上昇していることも、さらにCTスキャナーの必要性を増す要素になってくるでしょう。
2014年以降では家畜の数も着実に増加し、米国農務省全国農業統計局による調査では、2017年には牛と子牛があわせて9,370万頭、2018年には9,440万頭が飼育されていました。
アメリカではこうした飼育数の増加に加え、市民の間で動物の福祉や健康へ高い意識が寄せられるようになったこともひとつの要因かもしれません。
先述のAPPAによると、2018年の米国における飼育する犬猫のための支出は総計725億6,000万ドルにものぼったそうです。
こうした傾向は今後も続く見通しで、獣医用CTスキャナーへの需要も高い状況が続くと予測されました。
人間の医療に比べるとまだまだ普及状況や機械の操作力、画像診断力など、実施レベルの整備面で課題のある獣医用CTスキャナー。
しかし徐々に身近な動物病院などでも有効な利活用が進み、それに応じて大きな成長が見込まれる市場となっているようです。
費用面もあわせて問題になりますが、長く健康を保つための病気の早期発見、早期治療が可能になること、高度な手術も高い成功率をもって受けられやすくなることは、愛犬・愛猫と共に暮らす飼い主さんにとって、非常に歓迎すべきことでしょう。
今後、さらに身近な検査技術となっていってくれることを望みたいですね。
参考リンク
PRTIMES
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