早期発見が大事!ワンちゃんのクッシング症候群とは

早期発見が大事!ワンちゃんのクッシング症候群とは

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ワンちゃんのホルモン異常の病気で「副腎皮質機能亢進症」、通称「クッシング症候群」と呼ばれる病気があります。
比較的発症頻度が高い病気です。

最初は症状に気づきにくいですが、徐々に進行していくためいかに早く発見してあげられるかが重要なこの病気。
もし発病した際、ワンちゃんに適切な治療を受けさせることのできるよう、症状や原因、治療法について解説します。

 

クッシング症候群とは?

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中年期以降のワンちゃんに発生率が多いと言われる「クッシング症候群」。
具体的には、どのような病気なのでしょうか?

 

クッシング症候群の特徴とは

「副腎皮質機能亢進症」、通称「クッシング症候群」は、その名のとおり副腎皮質に異常をきたす病気です。
この病気にかかると、ワンちゃんの副腎皮質が過剰に活動し、内分泌ホルモンである「コルチゾール」が必要以上に多く産生されてしまいます。
このホルモンの過剰分泌が、ワンちゃんの体のさまざまな部分に悪影響をおよぼしてしまうのです。

 

発生元の「副腎」とは?

そもそも、コルチゾールの過剰分泌をしてしまう「副腎」とはどのような臓器なのでしょうか。

副腎とは腎臓のすぐ側にある小さな臓器。
皮質と髄質という二つの層からできており、腎臓と同じく左右に2つ存在しています。

副腎そのものからは数種類のホルモンが分泌されており、副腎皮質から生成される副腎皮質ホルモンのひとつがコルチゾール。
コルチゾールは、代謝や、免疫反応、ストレス反応といった働きがあり、生体の維持に不可欠なホルモンです。

副腎皮質から分泌されるホルモンは、脳内の下垂体でコントロールされています。
コルチゾールの分泌量も通常は下垂体でコントロールされているもの。
しかしクッシング症候群になると、コントロールが異常となり過剰に分泌されてしまうのです。

 

かかりやすい犬種・年齢とは

クッシング症候群になりやすい犬種は、プードルやダックス・フンドなどがあげられます。
年齢的には、中高齢犬(5~8歳以上)のワンちゃんに多く見られる病気です。

 

クッシング症候群の症状

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コルチゾールが過剰に分泌されてしまうクッシング症候群。
罹患したワンちゃんには、具体的にどのような症状が発生するのでしょうか?

 

多飲・多尿になる

クッシング症候群を患ったワンちゃんは、異常に多くの水を飲み、それに伴って排尿頻度も頻繁となる傾向があります。

水の飲みすぎとなる目安は、ワンちゃんの体重1kg当たりで、100mlを超える水の量。
体重が5kgのワンちゃんが、ペットボトル1本分の水をコンスタントに飲むようであれば、明らかに多飲状態と言えます。

ただし、夏場や激しい運動の直後、または短頭種のパグなどが興奮した後には、一時的に同様の量を飲むことがあります。
そのため、一時の状況を把握するだけではなく、日常的に水分摂取量が多くなっているかどうかで見分けることが重要です。

 

皮膚のトラブル

クッシング症候群のワンちゃんは皮膚が薄くなる子が多く見られます。
その薄さは、血管が見えてしまうほどです。
かゆみや皮膚の炎症が起こることもあります。

また、皮膚トラブルから白くて固いかさぶた状の皮膚病が発生することもあります。
これは皮膚の石灰化と言われ、なかなか治らないので長期の治療が必要です。

ほかには左右対称に脱毛したり、尻尾の毛が薄くなったりすることもあります。
これらの皮膚病は痒みを感じない場合がある、ということもひとつの特徴です。

 

異常な食欲・肥満

病気の初期段階では、ワンちゃんの食欲が異常に増すという症状があります。
たくさん食べたがるために、肥満につながってしまうことが多いです。

 

腹部誇張

クッシング症候群が進行すると、筋肉が減少し腹部だけが膨らんだような体形となってしまうことも。

コルチゾールにはタンパク質を分解し、糖に変換する作用があります。
この作用が過剰になると筋肉中のタンパク質が分解されて、筋肉が落ちてしまうのです。

また、筋肉量の減少と共に、お腹の中で肝臓が肥大したり、内臓脂肪が増加することで、腹部のみ膨らんでいるような状態となってしまいます。

 

他の病気にかかりやすくなる

クッシング症候群を発症して高コルチゾール血症の状態が続くと、心臓・肺・肝臓・腎臓・脳などのほかの臓器の病気に罹患しやすくなってしまうという特徴があります。
具体的には、糖尿病、膵炎、感染症(皮膚炎や膀胱炎)といった病気があげられるでしょう。

 

クッシング症候群の治療法

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クッシング症候群の診断は、一般的な血液検査のほか、副腎機能検査、超音波検査などを行います。
それらを通し、病気の原因が脳下垂体にあるのか副腎にあるのかを確認するのです。
その後の治療方法は、下記の内容を獣医師さんと相談しながら決定していきます。

 

治療方法

内服療法
腫瘍が小さい場合、副腎皮質ホルモンを抑制させる内服薬で副腎から分泌されるコルチゾールを抑えて症状の緩和を目指します。
定期的に投薬を行わないと副作用を起こしてしまう、また治療の効果の確認をするために、ACTH刺激試験などを定期的に行いながら、愛犬に適した薬の種類と投与量を獣医師さんに調整してもらう必要があるでしょう。
内服療法だけでの完治は難しいため、薬を飲み続ける必要があります。

放射線治療
下垂体腫瘍が大きい場合、腫瘍による脳の圧迫を防ぐため、内服療法と放射線治療を併用するという場合もあります。
ただ、この治療法は一部の大きな病院(大学病院)でしか受けることができず、通常全身麻酔もしくは鎮静が必要となるため治療費は高額となります。

手術
腫瘍が大きい場合、手術で下垂体または副腎ごと腫瘍を切除するという治療方法もあります。
下垂体腫瘍も副腎腫瘍もその摘出手術は難易度が高く、リスクを伴うものです。
体にとって重要なホルモンを分泌する臓器を摘出するために、術後はホルモン補充療法が一生涯必要となります。

 

ステロイドが原因の場合の治療法

ほかの病気に対してステロイドを長期的に多量に使用した場合も、クッシング症候群を引き起こすことがあります。
この場合、薬の量を減らしていくといった治療を行うのですが、一気に使用を止めればいいというものではありません。
自分で判断せずに、獣医師さんに相談して治療方法を決定していきましょう。

 

家庭で実施できること

クッシング症候群のワンちゃんは、コルチゾールの分泌過剰によって、高脂血症を伴うことが多いです。
そのため、コレステロールや中性脂肪の値が高くなりがち。
同じように高血糖にもなりやすいと言われています。

よって、食事面ではなるべく脂肪量を低く抑え、血糖をコントロールすることが重要になってきます。
低脂肪で糖質と炭水化物を抑えた食事を与えるようにしましょう。

また、代謝異常により自分の体のタンパク質を分解利用することがあります。
このために、慢性的なタンパク質不足になってしまい、脱毛や筋力低下の症状があらわれることも。
よって、良質なタンパク質を十分に与える必要があるでしょう。

飼い主さんは、獣医師さんと相談しながら適切なフードを選んだり、食べてはいけないものなどの食材に気をつける必要があります。
不足する恐れのある栄養を含んだ食材を使用して、手作り食を作ってみるのもよいかもしれません。

 

まとめ

ワンちゃんのクッシング症候群は残念ながら予防法はありません。
しかし、早期発見が進行と重症化を防ぐことにつながります。

クッシング症候群のワンちゃんは、治療の程度、腫瘍の発生した位置、内科的治療・外科的治療などの違いによって状態が大きく異なっていきます。

普段から愛犬の様子と体の変化・皮膚状態などを観察して、異変が感じられる時は早めに動物病院で相談しましょう。

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