百獣の王ライオンに代表されるように、ネコ科の動物は肉食性が強いといわれています。
ですがわたしたちの身近にいる猫は、炭水化物が多く含まれているキャットフードを主食としていたり、時たま草を好んで食べていたりと雑食傾向があるようにもみえます。
はたして猫は肉食動物といえるのでしょうか?
人間はもちろん、猫に比べて雑食性の高い犬などは、推奨はできないものの、肉なしの生活でも生きていくことが可能といわれています。
ところが猫は、生きていくために必要不可欠な栄養素が、肉類に多く含有されています。
その中でもとくに重要な栄養素が、必須アミノ酸「アルギニン」と「タウリン」です。
猫はアルギニンが不足すると尿毒症をおこし、そのまま放っておけば最悪の場合、命を落とすことになります。また、タウリンが不足すると、網膜や心臓などの重要な臓器に大きなダメージを引き起こしてしまいます。
これらの必須アミノ酸は体内で生成することができないため、必ず食事の中で摂らなければなりません。
そのため、野菜や穀類、果物だけの食生活では、猫は生きていくことができないのです。
生きていくうえで、肉などの動物性タンパク質が欠かせない猫。
腸の長さを見ても、体長の4倍程度と、雑食の人間に比べてはるかに腸の長さが短く、植物等を消化・吸収するのに適していないことがわかります。
体長を基準に腸の長さを比較した表。犬の腸の長さは肉食動物に寄っている。
とはいえ、草を食べている猫を見かけたことがある方も多いのではないでしょうか。
猫が好む草は、燕麦(エンバク)というイネ科の植物で、猫草として燕麦を売っているペットショップも多いです。
じつは、猫がどうして草を食べるのかは、まだ解明されていません。
有力な説としては、下記のものがあります。
毛玉については、ただ吐くために近くにあるものを選んでいるだけともいわれています。
ビタミンや葉酸についても、猫の栄養素を考えた食事を与えていれば不足することはありません。
好んでいる草はイネ科のものなので、人間がビールを飲むように嗜好品として燕麦を食べている可能性があると思うと面白いですね。
「エサの食べ過ぎ」を心配されることが多い犬に対して、猫は「エサをあまり食べない」ことで心配されることの方が多いですよね。
じつは猫は、食事の味にかなりうるさい動物です。
体調が万全でお腹が空いていたとしても、与えられた食事の味や食感が嫌いなだけで、全く食べようとしないこともあります。
ネコ科の動物は肉食に偏っている影響で、ほかの哺乳類とは味蕾の構造が異なり、甘みを認識することでできません。その分、苦味を感じとる部分が発達しています。
これは苦味を得意としているからではありません。肉に含まれているアミノ酸が腐敗したときの苦味を感じやすくすることで、腐ったものを食べるのを避けているためです。
与えられた食事を嫌がっている場合は、何らかの苦味を感じているからかもしれません。
そのほかに、必要な栄養素が含まれていない場合も、食事を食べない傾向にあります。犬や人間と違って、ただお腹を満たすだけの食事はしない傾向にあるのです。
ここまで猫の食事について注目してきましたが、猫の行動からも肉食動物としての資質を考えてみましょう。
外に出かけていた猫が、虫やネズミなどの小動物を捕まえて帰ってきたことに驚いた経験がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ペットとしてわたしたちの身近な存在になったとはいえ、猫には生きた動物を狩る習性が根強く残っています。
しなやかな体と暗闇でも獲物を捉えることができる目は、まさに狩りに適しており、最近ではネズミ捕りのため、イギリスの首相官邸や外務省が猫を英国政府職員として雇いはじめたことでも話題になりました。
そもそも肉食動物の定義は「生きた獲物を捕らえて食べる」ことであるといわれており、猫の優秀なハンターぶりは、まさに「肉食」の証とも考えられます。
食性と行動を考えるに、どうやら猫は「肉食動物」とよぶにふさわしい存在であるようです。
ではそんな猫のために、どういった食事を与えるのが一番良いのでしょうか?
前述したように、猫には必須アミノ酸である「アルギニン」と「タウリン」が必要不可欠です。
これらの栄養素は、肉や骨、内蔵といった動物性タンパク質に多く含まれているので、猫の食事は犬以上に肉を中心としたものを意識しなければなりません。
肉の量が多ければ、犬用のフードでも良いのではと思われるかもしれませんが、これは大きな間違いです。
猫は、犬が必要とする1.5~2倍のアルギニンとタウリンを摂取する必要があります。
大抵のドッグフードはここまでアルギニンとタウリンが強化されていない場合が多いので、なるべく必須栄養素が入ったキャットフードを与えるようにしましょう。
また近年では、保存・管理のしやすいドライフードが人気ですが、ドライフードは水分量が少なく、炭水化物の含有量が多いため、肉食に寄った猫の食性にはあまり向かないともいわれています。
できるだけ、水分や肉・骨などの動物性タンパク質の含有量が多い生タイプのキャットフードを選ぶようにしてあげましょう。
ドライフードを与える場合は、主原料が肉等の動物性タンパク質になっているか、日頃の猫の水分摂取量は十分足りているかなど、注意が必要です。
飼う側の管理のしやすさだけで猫の食事を選んでいると、思わぬトラブルにつながることも少なくありません。
大切な家族のために、好みや体質にあわせて、一番美味しく健康に食べられるフードを探してあげてください。
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