スミレとぼくと。

+2011年7月+

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あら、近所のハスキーの太郎ちゃんに似てるわ。ほら、こちらにおいで、おやつをあげるわね。とイエローストーン国立公園でハイキングの最中にオオカミと出くわした際、そう思って近づく、なんてことはまずないとは思う。なんとなれば、向こうから近づくことは、よほど腹が減っている一匹狼以外はありえないし、それでもあり得ないそうだ。とはいえ、すべてのタイミングがヒトにとって運悪く整ってしまうと、襲われる危険性がないこともない。要は、トラとかライオンと同じなのだ。しかし、出くわしちゃった場合でも、向こうがものすごい威嚇をしてくるのが普通で。それ以前にヒトが悲鳴をあげた時点で逃げる。と、スタン君が言ってました。これだけ穏やかな表情は、よほどリラックスしている証左で、それはヒトが近くにいない(つまりが望遠で撮影された)か、ヒトの下で飼育されていて、なおかつリーダーではないはずとのことだ。ちなみに、イエローストーン国立公園の広さは鹿児島県とほぼ同じだそうだ。

そんなこんなで、前回の「番外編」をはさんで、野生の世界に生きる犬の仲間たちについてのあれこれである。講師は、動物学者にして州やら国やらから助成金をもらい、いまは、ただひたすらにオオカミやコヨーテの生態調査と研究にいそしんでいるスタンリーことスタン君だ。


後述するが、彼はとんでもない状況に陥っていたことがわかったのだが、なにはともあれスタン君によると、山林地域でオオカミが激減し、そのために鹿が増えると、それはそれで困る状況になるのだそうだ。つまりが鹿という草食動物が好き勝手なさると、いわゆる自然界のバランスが狂ってしまい、ほかの鹿より小さな草食動物は、その影響を受けてしまうのだ。増えた鹿がたらふく食べることで食い扶持に困る別な草食動物も出てくるのである。そうして自然のバランスが食物連鎖によって狂うと、思いもよらぬことになるのだ。元に戻すのにも時間がかかる。

そこで、米国の広大な国立公園では、いまではオオカミの数を増やすことに熱心なのだそうだ。それによって、自然のバランスを元に戻そうというワケである。それには、オオカミの生態を知ることが重要となってくる。なんとなれば、駆逐するのは簡単でも、彼らにとって住みやすく繁殖しやすい環境を整えるには、彼らの生態を知らなければそれを実現することも難しいからだ。無茶な説明だが、ヤンキーの数を増やしたくともゲーセンやコンビニの店舗前の駐車場等、彼らの安住というかたむろできる場所がないとダメなことを知るのと同じだ。ってちがうか。でもまあ、そんなところだ。

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要はトラとかライオンと同じくらいの危険性をもつオオカミだが、ヒトのほうが彼らの生活圏に侵入してしまっているのだ。米国の開拓時代は、家畜の保護のためにオオカミ狩りが奨励され、数が激減したという歴史もある。それは、いまも変わらないけれど、しかしそれは人里に出てきてしまい、しかも幼稚園や小学校の近くだったりした場合だ。このオオカミも、そんな悲劇の一例である。しかし、なんと大きなことか。このハンター氏も、6フィート以上というから180cm以上の背丈である。しかし、残念なことである。それはハンター氏にしても同じだ。

それはさておき、アメリカのオオカミはデカイ。日本にもいた日本オオカミは小ぶりで、まだ生息していたときは、捕獲されて欧州に送られ、大型犬の小型化に一役買っていたそうだ。そんなオオカミも、動物園にいる動物やヒトのように、育児放棄するのもいるのだそうだ。そういった子供のオオカミ(これをカブという。クマとかキツネとかも、その子供のことをカブという。野球のシカゴ・カブスのマークは子グマだ。ボーイスカウトの幼年組のカブ・スカウトの名もここからきている)は、まだ命あるうちに見つけられれば、その飼育専用施設にて育てられる。そして、野生に帰せるものは帰そうとする努力がされている。映画にもなった「野生のエルザ」(原題はBorn Freeだ)は、そのライオン版である。


しかし、そこはそれ、ヒトに慣れてしまうと、簡単に野生に戻そうとしても、そうはうまくコトことは行かない。とはいえ、オオカミの血というかDNAをダイレクトに100%備えている彼らは、ヒトに慣れ、ヒトを群れのリーダーと認識しても、たまに無茶なことをしてくる。その無茶とは何か。それは群れの2番手だか3番手の若手が、自分にもリーダーの資質があるかもしれないと、力試しとばかりにリーダーたるヒトに戦いを挑んでくることだ。人との長い共生期間を経たイヌの場合は、なかなかそうはならない。でも、きちんとした共生観念を身に付かせていない場合、たまに報道される残念な出来事も起きたりする。ちなみに、メスの場合、発情期を迎えるやプツンとなることもあるそうだ。

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世界的に名のある、そして実績あるアニマルトレーナー氏とじゃれ合うオオカミ君。名前は知らない。こうして遊んでいられるのも、トレーナー氏とそのスタッフ、あるいは奥さんくらいしかそばにいないときだそうだ。映画やテレビに出演することにおいては経験深いそうだけれど、発情期等はダメといった条件がいろいろとあるそうだ。スゴイなあ、しかし。これで小さめの若いメスだってんだからなあ。これでヅラをとられてじゃれられたらツライよね。オオカミにじゃれられてもとれません、というのは売り文句になるワケが、ないな。

スタン君のお仲間に、まるで小型のワニに真横から顔を噛まれたかのような傷のある御仁がいるのだが、彼の場合、ふと気を抜いていたところ、群れの2番手のオオカミに半分じゃれた感じのまま戦いを挑まれたそうで、その際に向こうは首を90度曲げて頭にかじりついてきたそうである。彼は、いつものようにじゃれ合いつつも、なんだかちょっとしつこいし、激しいな、くらいに思ってたのだそうだ。幸い、首の骨と延髄に損傷はなく、半年の入院後に現場復帰したそうだ。ボクなら考えるところだ。


そういうときはどうするのか、とりあえずは安全を確保する。この安全の確保というのは、襲ってきた二番手オオカミの目に向かって目つぶしをくらわすことだそうだ。そして、とにもかくにも、常に携行しているこん棒でぶちのめすしかないという。相手は、ちょっとした打撃くらいにはビクともしないので、鼻先とか、つまさきとか、こん棒で叩かれたら痛くてたまらない部分を集中して攻撃し、スタコラ退散するまでそれを続けるのだそうだ。その間、空いているほうの手で緊急信号の発信器を押し、そしてとにかく止血にこれつとめるしかない。いやあ、オオカミのリーダー役になるのも大変である。いまではその際の教訓が活かされ、ナンバー2役までをヒトが担当し、一人にならないことが決まりになっているそうだ。

そういった代替わりの儀式でなくても、ちょいと機嫌が悪いことを示すような、いわゆる甘噛みをしてくることもあるそうで、しかしそれがオオカミとなると、もうそれは大変である。もう内出血の跡なんてのができるのは日常茶飯事だそうで、ある日、妙に具合が悪いなと医者に行ったら、内部での止血はできていても組織の損傷の回復のために必要な体力が、日々の生活を送ることにまで費やされほど減退していることが判明したりすることもあるとか。そりゃ大変だ。自然保護も命がけである。スタン君は、まさに、そんな目に遭い、入院を余儀なくされていたのだそうである。よく考えてみるとけっこう怖い話しだ。


そういうことを平気でするのは、育児放棄され、群れの中での社会化教育を受けてこなかったオオカミに多いのだそうだ。そんなワケで、そういう噛み方をしたら、即座に、そうするとこれくらい痛いんだぜ、と親兄弟や仲間に変わって同じことをしてやらないとイケナイ。それをするときも、ちゃんと安全を確保してからやる。よく超大型犬を飼うことに慣れてオオカミと犬の混血のオオカミ犬、いやオオカミを飼いたいと考える向きがいるが、そうしていいのは、混血でもオオカミ1/8どまりにしておくべきだとのことだ。


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オオカミではない。オオカミさんと、もっとも近い親戚筋の犬種で、その名をアメリカン・アスラチアンという。スゴイ迫力である。大きさも、ほぼ灰色オオカミくらいあるらしい。と言われてもわかりにくいが、ジャーマン・シェパードのXLサイズのモスコウ(モスクワ)・シープドッグくらいは楽にあるそうだ。と、言われてm、それでもピンと来ないのも致し方ないけれど、要はジャーマン・シェパード界のヘビー級のプロレスラーくらいデカイということだ。中には灰色オオカミおり大きいのもいるそうで、いまでは絶滅した大型オオカミのナンタラの復活のカギを握っているらしい。


ところで、スタン君にオオカミの食について聞いてみたところ、北米とカナダの場合は、100%肉食と言っても過言ではないそうだ。冬場になると酷寒の地になる地域というのは、夏場は蚊がやたらめったら多いそうである。蚊が多いとフィラリアになる可能性も高くなる。フィラリアとは、蚊を媒介して伝染する寄生虫病で、犬の体内で育った線虫は心臓に寄生する。そして心臓は弱り、最終的には循環器系の病気で死ぬこととなる。つまり、フィラリアは死を意味するのだ。


ペットの世界ではフィラリアを予防する薬品の技術も向上し、予防さえしていればあまり恐れることもなくなった。けれど、野生となれば話は別だ。オオカミや野生の犬族にとって、その知識はなくとも、その予防法ともいうべき野生の知恵があるようなことを聞いたときは驚いた。なんとなれば、オオカミたちは、犬のようにある種の雑草を食すのだそうである。そして、その成分がフィラリアの進行を抑制する効果があるというのだからスゴイ。


昔の人たちの知恵にも感服するが、野生の知恵にも感心させられる。ちなみに、その草は、政治的に正しい呼称でいうところの「ネイティブ・アメリカン」、いわばインディアンの間でも虫下しの効果があることで知られている。漢方のように欧米でも現代医学以前の民間療法の中には、刮目すべきことが少なからずあるのだ。インディアンついでに言うと、天然のハチミツは、きわめて強力な殺菌作用があるそうだ。だから彼らは、部族間の出入りがあったときはそれを使って応急処置をしたそうだ。スタン君も携行しているそうだ。いわば天然の傷口用殺菌剤なワケだ。

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フロリダ州のあたりの部族、セミノール・インディアンの縄張りでしか採れないホワイト・トゥペロのハチミツは、ごく少量しかとれない希少品だそうだ。昔は、殺菌剤としても使われ、甘味としても重宝されたそうだ。ただ、彼らの間でも赤ん坊には与えてはいけないことは常識だったそうだ。まだこれから定着しようとしている腸内の善玉菌までヤラれてしまうからだそうだ。ナルホド。ホワイト・トゥペロは、希少ゆえに高価で、偽物も少なくないとの由。ホンモノは、ハチミツの中でも極めて高価なのだそうだ。女性陣の皆様、そんな特性があるので、天然のハチミツならお肌のお手入れにも効果があるそうですよ。天然ものしかないと思ってたら、日本のみ、砂糖を混ぜた物が認可されているそうだ。そいつないよなあ。

オオカミといえば完全な肉食獣と相場は決まっているように思われるが、スタン君いわく、そうじゃないのもいるんだ、との由。それは知らなんだ。てっきり、みんな120%の肉食獣だと思ってた。とはいえ、それはその地域性にもよることなのだそうだ。ということで、次回は、その風変わりなオオカミについてをお送りする予定である。



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