スミレとぼくと。

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あら、近所のハスキーの太郎ちゃんに似てるわ。ほら、こちらにおいで、おやつをあげるわね。とイエローストーン国立公園でハイキングの最中にオオカミと出くわした際、そう思って近づく、なんてことはまずないとは思う。なんとなれば、向こうから近づくことは、よほど腹が減っている一匹狼以外はありえないし、それでもあり得ないそうだ。とはいえ、すべてのタイミングがヒトにとって運悪く整ってしまうと、襲われる危険性がないこともない。要は、トラとかライオンと同じなのだ。しかし、出くわしちゃった場合でも、向こうがものすごい威嚇をしてくるのが普通で。それ以前にヒトが悲鳴をあげた時点で逃げる。と、スタン君が言ってました。これだけ穏やかな表情は、よほどリラックスしている証左で、それはヒトが近くにいない(つまりが望遠で撮影された)か、ヒトの下で飼育されていて、なおかつリーダーではないはずとのことだ。ちなみに、イエローストーン国立公園の広さは鹿児島県とほぼ同じだそうだ。

そんなこんなで、前回の「番外編」をはさんで、野生の世界に生きる犬の仲間たちについてのあれこれである。講師は、動物学者にして州やら国やらから助成金をもらい、いまは、ただひたすらにオオカミやコヨーテの生態調査と研究にいそしんでいるスタンリーことスタン君だ。


後述するが、彼はとんでもない状況に陥っていたことがわかったのだが、なにはともあれスタン君によると、山林地域でオオカミが激減し、そのために鹿が増えると、それはそれで困る状況になるのだそうだ。つまりが鹿という草食動物が好き勝手なさると、いわゆる自然界のバランスが狂ってしまい、ほかの鹿より小さな草食動物は、その影響を受けてしまうのだ。増えた鹿がたらふく食べることで食い扶持に困る別な草食動物も出てくるのである。そうして自然のバランスが食物連鎖によって狂うと、思いもよらぬことになるのだ。元に戻すのにも時間がかかる。

そこで、米国の広大な国立公園では、いまではオオカミの数を増やすことに熱心なのだそうだ。それによって、自然のバランスを元に戻そうというワケである。それには、オオカミの生態を知ることが重要となってくる。なんとなれば、駆逐するのは簡単でも、彼らにとって住みやすく繁殖しやすい環境を整えるには、彼らの生態を知らなければそれを実現することも難しいからだ。無茶な説明だが、ヤンキーの数を増やしたくともゲーセンやコンビニの店舗前の駐車場等、彼らの安住というかたむろできる場所がないとダメなことを知るのと同じだ。ってちがうか。でもまあ、そんなところだ。

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要はトラとかライオンと同じくらいの危険性をもつオオカミだが、ヒトのほうが彼らの生活圏に侵入してしまっているのだ。米国の開拓時代は、家畜の保護のためにオオカミ狩りが奨励され、数が激減したという歴史もある。それは、いまも変わらないけれど、しかしそれは人里に出てきてしまい、しかも幼稚園や小学校の近くだったりした場合だ。このオオカミも、そんな悲劇の一例である。しかし、なんと大きなことか。このハンター氏も、6フィート以上というから180cm以上の背丈である。しかし、残念なことである。それはハンター氏にしても同じだ。

それはさておき、アメリカのオオカミはデカイ。日本にもいた日本オオカミは小ぶりで、まだ生息していたときは、捕獲されて欧州に送られ、大型犬の小型化に一役買っていたそうだ。そんなオオカミも、動物園にいる動物やヒトのように、育児放棄するのもいるのだそうだ。そういった子供のオオカミ(これをカブという。クマとかキツネとかも、その子供のことをカブという。野球のシカゴ・カブスのマークは子グマだ。ボーイスカウトの幼年組のカブ・スカウトの名もここからきている)は、まだ命あるうちに見つけられれば、その飼育専用施設にて育てられる。そして、野生に帰せるものは帰そうとする努力がされている。映画にもなった「野生のエルザ」(原題はBorn Freeだ)は、そのライオン版である。


しかし、そこはそれ、ヒトに慣れてしまうと、簡単に野生に戻そうとしても、そうはうまくコトことは行かない。とはいえ、オオカミの血というかDNAをダイレクトに100%備えている彼らは、ヒトに慣れ、ヒトを群れのリーダーと認識しても、たまに無茶なことをしてくる。その無茶とは何か。それは群れの2番手だか3番手の若手が、自分にもリーダーの資質があるかもしれないと、力試しとばかりにリーダーたるヒトに戦いを挑んでくることだ。人との長い共生期間を経たイヌの場合は、なかなかそうはならない。でも、きちんとした共生観念を身に付かせていない場合、たまに報道される残念な出来事も起きたりする。ちなみに、メスの場合、発情期を迎えるやプツンとなることもあるそうだ。

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世界的に名のある、そして実績あるアニマルトレーナー氏とじゃれ合うオオカミ君。名前は知らない。こうして遊んでいられるのも、トレーナー氏とそのスタッフ、あるいは奥さんくらいしかそばにいないときだそうだ。映画やテレビに出演することにおいては経験深いそうだけれど、発情期等はダメといった条件がいろいろとあるそうだ。スゴイなあ、しかし。これで小さめの若いメスだってんだからなあ。これでヅラをとられてじゃれられたらツライよね。オオカミにじゃれられてもとれません、というのは売り文句になるワケが、ないな。

スタン君のお仲間に、まるで小型のワニに真横から顔を噛まれたかのような傷のある御仁がいるのだが、彼の場合、ふと気を抜いていたところ、群れの2番手のオオカミに半分じゃれた感じのまま戦いを挑まれたそうで、その際に向こうは首を90度曲げて頭にかじりついてきたそうである。彼は、いつものようにじゃれ合いつつも、なんだかちょっとしつこいし、激しいな、くらいに思ってたのだそうだ。幸い、首の骨と延髄に損傷はなく、半年の入院後に現場復帰したそうだ。ボクなら考えるところだ。


そういうときはどうするのか、とりあえずは安全を確保する。この安全の確保というのは、襲ってきた二番手オオカミの目に向かって目つぶしをくらわすことだそうだ。そして、とにもかくにも、常に携行しているこん棒でぶちのめすしかないという。相手は、ちょっとした打撃くらいにはビクともしないので、鼻先とか、つまさきとか、こん棒で叩かれたら痛くてたまらない部分を集中して攻撃し、スタコラ退散するまでそれを続けるのだそうだ。その間、空いているほうの手で緊急信号の発信器を押し、そしてとにかく止血にこれつとめるしかない。いやあ、オオカミのリーダー役になるのも大変である。いまではその際の教訓が活かされ、ナンバー2役までをヒトが担当し、一人にならないことが決まりになっているそうだ。

そういった代替わりの儀式でなくても、ちょいと機嫌が悪いことを示すような、いわゆる甘噛みをしてくることもあるそうで、しかしそれがオオカミとなると、もうそれは大変である。もう内出血の跡なんてのができるのは日常茶飯事だそうで、ある日、妙に具合が悪いなと医者に行ったら、内部での止血はできていても組織の損傷の回復のために必要な体力が、日々の生活を送ることにまで費やされほど減退していることが判明したりすることもあるとか。そりゃ大変だ。自然保護も命がけである。スタン君は、まさに、そんな目に遭い、入院を余儀なくされていたのだそうである。よく考えてみるとけっこう怖い話しだ。


そういうことを平気でするのは、育児放棄され、群れの中での社会化教育を受けてこなかったオオカミに多いのだそうだ。そんなワケで、そういう噛み方をしたら、即座に、そうするとこれくらい痛いんだぜ、と親兄弟や仲間に変わって同じことをしてやらないとイケナイ。それをするときも、ちゃんと安全を確保してからやる。よく超大型犬を飼うことに慣れてオオカミと犬の混血のオオカミ犬、いやオオカミを飼いたいと考える向きがいるが、そうしていいのは、混血でもオオカミ1/8どまりにしておくべきだとのことだ。


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オオカミではない。オオカミさんと、もっとも近い親戚筋の犬種で、その名をアメリカン・アスラチアンという。スゴイ迫力である。大きさも、ほぼ灰色オオカミくらいあるらしい。と言われてもわかりにくいが、ジャーマン・シェパードのXLサイズのモスコウ(モスクワ)・シープドッグくらいは楽にあるそうだ。と、言われてm、それでもピンと来ないのも致し方ないけれど、要はジャーマン・シェパード界のヘビー級のプロレスラーくらいデカイということだ。中には灰色オオカミおり大きいのもいるそうで、いまでは絶滅した大型オオカミのナンタラの復活のカギを握っているらしい。


ところで、スタン君にオオカミの食について聞いてみたところ、北米とカナダの場合は、100%肉食と言っても過言ではないそうだ。冬場になると酷寒の地になる地域というのは、夏場は蚊がやたらめったら多いそうである。蚊が多いとフィラリアになる可能性も高くなる。フィラリアとは、蚊を媒介して伝染する寄生虫病で、犬の体内で育った線虫は心臓に寄生する。そして心臓は弱り、最終的には循環器系の病気で死ぬこととなる。つまり、フィラリアは死を意味するのだ。


ペットの世界ではフィラリアを予防する薬品の技術も向上し、予防さえしていればあまり恐れることもなくなった。けれど、野生となれば話は別だ。オオカミや野生の犬族にとって、その知識はなくとも、その予防法ともいうべき野生の知恵があるようなことを聞いたときは驚いた。なんとなれば、オオカミたちは、犬のようにある種の雑草を食すのだそうである。そして、その成分がフィラリアの進行を抑制する効果があるというのだからスゴイ。


昔の人たちの知恵にも感服するが、野生の知恵にも感心させられる。ちなみに、その草は、政治的に正しい呼称でいうところの「ネイティブ・アメリカン」、いわばインディアンの間でも虫下しの効果があることで知られている。漢方のように欧米でも現代医学以前の民間療法の中には、刮目すべきことが少なからずあるのだ。インディアンついでに言うと、天然のハチミツは、きわめて強力な殺菌作用があるそうだ。だから彼らは、部族間の出入りがあったときはそれを使って応急処置をしたそうだ。スタン君も携行しているそうだ。いわば天然の傷口用殺菌剤なワケだ。

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フロリダ州のあたりの部族、セミノール・インディアンの縄張りでしか採れないホワイト・トゥペロのハチミツは、ごく少量しかとれない希少品だそうだ。昔は、殺菌剤としても使われ、甘味としても重宝されたそうだ。ただ、彼らの間でも赤ん坊には与えてはいけないことは常識だったそうだ。まだこれから定着しようとしている腸内の善玉菌までヤラれてしまうからだそうだ。ナルホド。ホワイト・トゥペロは、希少ゆえに高価で、偽物も少なくないとの由。ホンモノは、ハチミツの中でも極めて高価なのだそうだ。女性陣の皆様、そんな特性があるので、天然のハチミツならお肌のお手入れにも効果があるそうですよ。天然ものしかないと思ってたら、日本のみ、砂糖を混ぜた物が認可されているそうだ。そいつないよなあ。

オオカミといえば完全な肉食獣と相場は決まっているように思われるが、スタン君いわく、そうじゃないのもいるんだ、との由。それは知らなんだ。てっきり、みんな120%の肉食獣だと思ってた。とはいえ、それはその地域性にもよることなのだそうだ。ということで、次回は、その風変わりなオオカミについてをお送りする予定である。


これが隠れた被災地、千葉県は東京湾沿いの埋め立て地域における311の状況だ。12階建ての集合住宅の10階以上の階に済む人たちは、多かれ少なかれ、こういう状況になった。聞けば5〜6階では、花瓶が落ちたくらいで、それより下の階は、揺れはしたけれど、こういうことにはならなかったそうだ。これは食卓の近くで、ここでは写真でいうと右奥に、壁に直角、もっと右手にある冷蔵庫と背中合わせの本棚が倒壊した。どうやらひねりながら倒れたらしく、中味が考えられないところに落ちていた。想定外の震度は、考えられないことを次々と引き起こしたが、それはわが家の中とて変わらないのだった。


またまたブログのアップが遅れてしまいました。その理由は、震災で会社のある浦安市の、しかも湾岸高速の海側である埋め立て地エリアが甚大な被害を被ったこと。そして、スタン君からの便りがプツリを途絶えてしまっからだ。

のっけから脱線で恐縮だけど、浦安市ほか、千葉県の東京湾沿いにある比較的新しめの埋め立て地は、のきなみ液状化現象というのにヤラれた。これは湖や港湾を埋め立ててできた平地に発生することが多く、サンフランシスコ大地震のときも同様な現象が確認されている。要は、埋め立てられたことでできた水分の多い地質の土地が、地震による震動によって、水や砂、小石や岩が分離され、重いほうが沈んで水が表出することで起きる。ボクは、舗装された路面が次第にうねりはじめ、それが波打ち、そして割れたところや、道路脇のすきまから、水分の多いセメントのような水が出てくるのを目の当たりにした。 すごいところでは、そのスライミーなのが噴水のように吹き出ていた。

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上は、1989年のサンフランシスコ大地震の際、液状化現象が発生した同地のマリン郡の埋め立て地域だ。元々、港湾だったところを埋め立てて平地にした場所で、それはそのまんま浦安から幕張、そして東京ではお台場と同じである。とはいえ、そのリスクを見越してか、高層あるいは重量級の建物が立つところは、それなりの土壌改善というか対策が施されている。一戸建てが前提の住宅地だと、軽いからそれは不要と、地盤対策が行なわれないのが、昔では普通のことだったようだ。そのために浦安から舞浜地区にかけての一戸建てエリアは悲惨である。1989年のサンフランシスコ大地震と液状化現象については、こちらをどうぞ。写真も、同サイトから了解を得て使用させていただいた。(リンクを示すのが約束でした。ここです)http://pubs.usgs.gov/fs/1999/fs151-99/

その結果、地盤沈下が起きる。銀行や病院、そしてそれなりの高層建築等については、念入りな基礎工事が行なわれているようで、建物はそのまんまでも、周囲が沈下する。そのためアプローチの部分が割れ、たとえば駐車場だけが全面的に地盤沈下を起こしてクルマが道路に出られなくなるところが続出した。悲惨なのは、一戸建ての住宅地で、比較的軽量な木造住宅を主に造成された地域の家は、軒なみ、わずかであれ、傾いた。わずかでない悲惨な家も少なくない。一戸建ては銀行やマンションのような重量級の建築ではないので、地質あるいは地盤改良なりは、さして必要ないと判断されたからだろう、それらの地域では、逆に道路はそのままで家の方が傾き、沈んだ。たとえそれが10cmであろうと、大騒ぎだ。なんとなれば、下水本管への下水路が下がったことで流れなくなり、それはすなわち水が使えないことになるからだ。


Youtubeにアップされている震災発生時の新浦安地域の生々しい映像だ。画面の左側に見え隠れしているセブンイレブンは、この後、閉店せざるを得ない状況となった。はす向かいのK'sデンキは、一階部分の駐車場の舗装がヤラれた。歩道のタイルがあっちとこっちでズレるようにして揺れ、地震によってその下で土や石、水が分離され、水がすき間から出てくる様子がわかる。周辺の重量級の建造物には、あまり被害はなかったけれど、周辺の道路や歩道、そしてアプローチ部分は地盤沈下を起こし、マンションや一戸建ての駐車場では、出たら入れない、あるいは、出られないというところが続出した。まだ建設中だった超高級マンションは、売れ行きがよろしかったそうだが、震災後の週末から、購入予約キャンセルが殺到し、周辺の道路に渋滞が起きた。

それだけではない。耐震やら免震構造というのも命の安全を保証するものではない、ということがわかった。なんと、ボクとスミレ、そして奥さんは、12階建ての集合住宅の11階に住んでいるのだが、古い耐震構造は、地震のエネルギーを逃がすため、上の階に行けば行くほど揺れる。まるでムチのように振れ、揺れるのだ。その結果どうなるか。わが家の居間にあった本棚やガラス戸棚、そしてテーブルやイスは、文字通り全壊した。もうバッキバキのコナゴナである。本棚は、TQハンズご推奨の組立式の耐震構造の家具を本棚にしていたのだけれど、それが災いした。ビルトイン式の耐震のつっかえ装置が天井に接したまま、重い本を満載していたがため、まるで重量級のアンコ型力士のように倒れないまま部屋の中をねり歩き、あらゆる家具を破壊しつつ、自らもダメージを負い、そこから考えられない状態に自壊していた。しかも、そのうえに本をすべて文字通り吐き出しての狼藉ぶりときたもんだ。

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いわゆる居間のダイニング&リビングのところだが、この惨状の中で何がショックだったかといえば、左のカウンターの向こう側に底の部分だけを見せている、そこで倒壊している本棚だ。その前はキッチンで、さすがのボクもキッチンの通路に本棚は置かない。それは、この写真の正面の白い壁のところにこちらを向いて立っていたのだ。それは耐震用のつっかえ板を内臓している耐震仕様のもので、そこには本がギッシリと収められていた。つまりが重量級であったのだが、この耐震仕様が災いした。それは天井を持ち上げるような格好で居間の中を練り歩き、ヘビー級チャンプの関取がごときパワーで当たるものをすべて破壊し、自らも傷つき、最後にキッチンのところまで行って自壊して倒れたのだ。こんなことが起きるほど、古いタイプの耐震構造は揺れる。そして建物は倒壊せずとも、人にとっては危険きわまりないのだ。みなさま、重い家具、そしてガラス扉は危険です。ちょっとした金具と木ネジで壁に留めておくことをお勧めします。

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象が乗ってもとは言ってはいないが、「強度については自信がある」とされていた組立家具も、このとおりである。日本の集合住宅を鑑み、軽く、各所に工夫がされている良品ではある。しかし、パーツ単体、あるいは試験時の完成品は、耐震強度の確認には適していなかったのだろう。そうとしか言えない。アルミの鋳造金具が曲がっているのを見つけたときは、その裏側にある強度付加用のリブがあることも手伝い、大地震によって揺らされる際の力の強大さをあらためて思い知らされた。それはメーカーの人もそうで、連絡したところ見に来た誠実そうな担当者はそれを見て言葉をなくしていた。すべてが想定外だったということだ。

無論、その後始末を含め、会社のほうもけっこうな騒ぎとなった。一見、なんともないように見えたオフィスの二階建ての建物も、市の測量みたいな検査で、少々歪んでいることが判明した。わずかではあるが、それでも妙なところでそれが露見した。たとえばトイレ。トイレの扉は、たまにだが、ロックをしていても、あるとき突然にパァ〜ンッと開いたりする。オフィスにあるトイレは広く、ドアを開けて3〜4歩で便器に到達する。なんでかって、そういう作りだからしょうがない。でもって、お客さんが使っているときにそれが起きたもんだから、みんなビックリ。でもお客さんは、ドアに手が届かないから、誰かが背中を向けて近づいて後ろ手で閉めて上げないとならないのだ。バツの悪そうなお客さんのほうに、背中を見せて近づくなんてのは、まるでコントだ。でもホントの話だ。

ということで、今回は被災した番外編のお話でした。次回から、野生界の犬の親戚たちのお話に戻る。最後に、スミレは、無事だった。もし、居間にいてドアが閉まっていたりしたら、彼女は、それはものすごい恐怖を体験したうえ、最悪の場合、死んでいたかもしれない。倒れてきたタンスだか戸棚の下敷きになり、その怪我がもとで亡くなったペットもいるくらいだから、そんなことがあっても不思議はなかった。でも、スミレは、いつもそこに入り込むと怒られるベッドの下に潜り込んでいて助かった。ホントによかった。とはいえ、入っちゃダメよの場所からホコリだらけで出て来たときには、ああ、と安心したのと、掃除機かけなきゃというのがゴッチャになった妙な気持ちになった。ま、いいか。いいことにしよう。スミレは無事だったんだから。

そんな浦安市は、東京にもっとも近いにもかかわらず、激甚被災地に指定された。とは言っても、傾いた家が元通りになるワケではなく、保険金の支払いや補償を受ける際、対策関連の融資の際の考慮になるくらいだ。中央公園と名前だけ立派な公園の芝生には地割れが走り、いまでは立ち入り禁止のロープが張ってあるだけで放置されている。いまでは、雑草が生い茂り、何の手も打たれていないので、小さな子供が入り込んで怪我をしないかと心配になる。管理事務所があるけれど、死角はたくさんあるからね。首相が、青春スターの成れの果ての県知事とやってきて市長の案内を視察をしていた光景が報道されたが、どこまで何をやってくれるのか、心の底から知りたいもんだと思う。その際、真剣な表情の首相と市長の背後でおちゃらけてなかりいる県知事の姿は、実に印象的だった。

とことん地震と液状化でヤラれた交番も、どうやら市の土地と施設であるらしく、それは一番あとまわしになるらしい。その壊れ具合からして見て、手抜きというか、耐震以前の安普請造りであることは明らかで、そこに勤務するおまわりさんに思わず同情してしまった。古いと言えばそうだけれど、こりゃないだろうという出来の悪さが露見してしまった。普段は、災害時のためのナントカカントカ言っていた設備もてんで使い物にならない。今回の震災は、千葉県の東京湾沿いの自治体、中でも浦安市のダメさ加減を浮き彫りにしている。ディズニーランドがあるだけで、そこからの事業税だか地方税歳入があるだけ。それだけのイメージ先行の街だということがイヤになるほどわかっちゃったのだ。

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これは、押して内側に開くドアの部屋の内部だ。その向こう側で倒れた本棚やら、そこから吐き出された本の山やらのためにドアを開けることはかなわなかった。では、どうしたか。ニュースでよく聞く「バールのようなもの」の1めーとる強あるのをホームセンターで購入し、それでドアの蝶番、ヒンジのところを引っこ抜いたのだ。幸い、地震の揺れでか、長い木ネジが甘くなっていて、予想外にスッコンと引っこ抜くことができた。で、そのままドアを外して横にどけたのだけれど、その際は、山となっていた本が雪崩のごとく廊下に流れ出てきた。実は、まだこの部屋は片付けきれていない。見るだけでゲンナリしてしまうからだ。あの揺れの恐怖、液状化現象とそれによって引き起こされた様子が、まざまざとよみがえってくるからだ。でも精神上よろしくないという指摘を受けたので、近々、一気にやっつけるつもりだ。

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スタン君との付き合いは3年目だというのに、食物としての獲物を間にすると、たまには懐いてくれるリーダー狼のビンゴは、こういう剣呑な顔つきになるそうだ。おっかないよこれは。それでも威嚇度は7割くらいらしい。7割でこれ。8割で犬歯が前にそっくり返るくらいの勢いで出てくるそうだ。体重は60kgを越える、それは見事なノース・ダコタ在のオスの灰色オオカミだそうだ。事情があって保護した狼の数が増え、それが広いフェンスの中で群れを形成するとリーダー代わりを演じなくてはならない。そうなると、たまに2番手が腕試しをしてきて死ぬ思いをすることもあるとか。噛まれたこともあるそうだが、犬歯の破壊力は犬も狼もあまり変わらないそうだ。

毎度、本稿のようなブログとは言えないブログをご覧になっていただき、まことにありがとうございます。でもって、Twitterにいろいろな感想や質問もお寄せいただき、それにも感謝しております。なんて、いつものボクらしくない書き出しをしてしまったが、その理由は、先ほどまで大好きだった故・古今亭志ん朝師匠のCDを聞いていたからだ。そのときどきに耳にしていた言葉に、ボクはものすごく影響を受けてしまう性分というか、妙なクセがあるのだ。

とはいえ、ある意味、それは身を助けるときもある。例えば、サンフランシスコのゲイ・タウンのど真ん中とは知らずにランチを食べていたら、妙な方々が「ハ〜イ」とボクのテーブルに勝手に相席をして占拠されてしまったことがあるのだけれど、5分もすると、自分がイヤになるほど米国西海岸のオネエ言葉を操っている自分がいて、いつの間にやら、政治的表現でいうところの「不可侵条約を踏まえての友好関係」になっていたりするからだ。そのランチの直後に、ストレートでゲイとは無縁な友人との約束があったりすると、しっかりとしていないとオネエ言葉が出てしまって妙な勘違いをされることもある。

そんな言語的訓練は、以前、お仕事をしていた浅草の会社にいたときにも磨かれた。その当時、ボクは仕事がハネるとスタバの雷門前店の外の席でコーヒーを飲みながらリラックスするのが好きだった。浅草といえば観光地。そこには日本全国はもとより、海外からも観光客が集まる。中には地図を片手にまちがいようがない道で迷っている人たちもいて、たいてい、それは米国の大学生だったりする。実にわかりやすく、イリノイ州立大なんてプリントしたTシャツをお揃いで着用していたりする。そんな彼らが、あっちだ、いやこっちよなどとやり合っているのを見聞きしているだけで、アクセントがつかめてしまう。

そんなワケで、ミネソタ州立大のグループがスタバの前で道に迷っているところ、彼らの土地の言葉で「兄ちゃん、姉ちゃんたち、どしたべな」みたいに聞くと、まるで落雷を受けたような驚いた顔をしたりする。「「アンタ、なんしてわかると?」みたいに返されると、これがまた面白いのだ。ヒアリングの訓練にもなる。まさに、そんなシチュエーションで知り合った米国人でスタンという男がいる。スタンの名は正確にはスタンリーで、姓をタレンタインという。

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スタン君いわく、日本はとても興味深い国だという。たとえばこれ、薬局の看板である。薬局となればクスリ、クスリとなれば効き目という、ある意味、信用が命のビジネスなのに、こんなキュートな犬を看板にしている。米国では考えられないという。そういって見せてくれたのど飴には、いかにも気持ち良さそうな声で歌っているカナリヤのマンガが用量のステッカーにあった。そういったことが、とても奇妙に眼に映るらしい。

この名を聞いて、アレッと思った方は、同姓同名のジャズのサックスプレイヤーがいたからだ。黒人のスタンは、米国でもドのつく田舎の州のノースとサウスの両ダコタ州の大学に行っていて、あったときは2校目のノースのほうの修士課程を終えて博士に進むところだった。スタンはお出来が大変によろしいのだ。なにせ、とっくにサウスのほうのダコタで修士号を得ており、本人いわく「テキトーに書いて出しといた」論文が博士課程の対象に選ばれていたのである。その前には東部はニューヨークのコーネルでも学んだというからあらゆる意味でスゴイ。あらゆるというのは、オツムの出来もよろしければ、そっちのほうでも返却無用の奨学金やら助成金等々、あらゆるスポンサーマネーも得ているからだ。

そんなスタンの専攻は動物学で、初めて会った際は、コヨーテの研究とそれに関する新たな生態研究の成果を提出したばかりで、追々、灰色オオカミの研究をするんだと言っていた。いつも通り、ちょいと話は脱線するが、最初に南北ダコタ訛りでのコヨーテは、さすがに聞き取れなかった。普通は、カヤテみたいな感じで、大体それで通じるし、大抵の場所でもそう言っている。ところがスタンは、キャヤウテと言ったので、なんじゃそれは、となった。ゴジラ対キャヤウテなんてのは、なかったっけ、とかまるでバカみたいだが、一瞬、そう思ったくらいだった。

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なんというか、まるでキツネっぽい柴犬である。柴犬っぽい、柴犬系の雑種というか。賢そうな表情で、実際、賢いそうだ。下の親子というか、母子なんてまるでワンコだよ。撮影しているスタン君への信頼感あってこその、この表情だろう。

ここで賢明なる読者の方は、スタン君は、学生さんなれど、若かないなと思うはずだ。ピンポン。スタン君は、ヘタをするとボクよりも上かというくらいのフケ顔で、若白髪も少なくなかった。そんなワケで、「スタン叔父ちゃん」とか「叔父貴」とかふざけて呼んだら、ちょっとムクれた。でもそこはお茶目さも知性のうちと言われる欧米のこと、 うまいこと冗談に乗りつつ、しっかりとボクのことをやりこめた。スタン君はキレ者なのだ。そんなスタン君は、学究スゴロクの最初がコーネル大で、そこでディンゴの研究をしたというのだ。ディンゴったら、ああた、オーストラリアの野生の犬でんがな。ちょいと柴犬に似ていなくもないあれだ。

聞けばスタン君はそうとうな犬好きで、そもそもディンゴについて興味をもったのは、父親の仕事でオーストラリアで過ごしていた子供時代、家の近所にいたディンゴに子犬をさらわれてしまったことにあった。これまた近所に住むアボリジニのオジちゃんが言うには、死産だったかなんらかの理由で、生まれた子犬を失った母犬が、その代わりにほかの子犬をさらうことがあると聞いたのだそうだ。それがあまりに印象的で、彼の進む道は決まった。犬と犬族の研究、そして行き着く先はオオカミのそれとなったのだ。三つ子の魂ナントヤラである。

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疲れたところでまどろんでいる、という感のあるディンゴの表情。これはこれで完璧な野生なので、犬と勘違いして不用意に近づくと怖い思いというか、それなりの代償を払うこととなる。さすが犬の仲間で、オーストラリアの原住民であるアボリジニと仲良く共生しているのもいる。こっちは、ちょいと馬面の、日本でもよくいそうな感じの顔つきの犬に見える。

その後、彼は父親が鉱山調査の技師という職業もあってアフリカへも行き、そこでアフリカン・ワイルド・ドッグなる犬族と遊んだこともあったという。話を聞いていると、なんだかハイエナのようにも思え、危険な香りがプンプンしてきたが、本人は至って平気で、ハイエナとはちゃうねんと、ダコタ訛りで言うのだった。ハイエナの歯は、まるでのこぎりのような鋭さで、生まれたばかりの、まだ目の見えない子ハイエナも、腹が減れば、生まれたときから備わっているノコギリ歯で兄弟を食ってしまうそうだ。そりゃ怖いよ。でも自然の世界だもんな。自然はキビシーのだ。

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アフリカン・ワイルド・ドッグとは、なんとまあベタな名前なんだろう。これでも犬の親戚筋だ。ところで、おおよそ犬とその親戚筋は、ご先祖さまのオオカミとDNA的にはとても近しい存在だそうだ。われわれの身近なワンコたちなぞは、どれも99.8%がとこはオオカミと同じだそうである。ヒトとチンパンジーのそれが98.8%ということを考えれば、犬とオオカミはとても近い存在であることがわかる。

そんなスタン君に、ボクも大の犬好きで柴犬と暮していると言ったら、彼は、同行の士と思ったのか、まあ思われても一向にかまわないのだが、それこそ堰を切ったように犬の仲間たちの話をはじめ、止まらなくなった。聞き役に徹して延々1時間半。イヤというほど南北両ダコタ訛りを叩き込まれつつ、話は、翌日、横浜のズーラシアという動物園にいるブッシュドッグ、ジャパニーズでいうところのヤブイーヌを見に行くのが楽しみで楽しみでと、まるでAKB48の握手会に出かける予定のアイドルオタクのごとき、うれしそうな笑顔を見せた。30半ば過ぎで、大好きな犬族の学問まっしぐらのスタン君は、さしずめ、鉄道ファンが鉄道研究の道に進んだ大学の教員のようだった。

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スタン君いわく、ブッシュドッグ、すなわちヤブイヌは、南米に生息する犬の親戚の中ではユニークなタイプで湿地帯を好み、泳ぎが得意なのだと言う。ニューファンドランド(NFL)とどっちが上手いのかなと、よけいなことを聞いたのがマズかった。その直後から、また延々とNFLのユッサユッサという泳ぎ方とブッシュドッグの滑らかなそれとの比較の実演を見せられ、講義を受けた。浅草のスタバの外の席で、である。それは見ものだったらしく、となりの席で年季の入った象牙のシガレットホルダーといういまどき珍しい喫煙具でタバコを吸っているおっちゃんに同時通訳をするハメにもなったのだった。

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それ以来、スタン君と直接会って話をする機会はなくなったが、いまやスカイプという無料のオンラインTV電話なんつうものがあるから、彼との付き合いはまだ続いている。で、彼は、念願かなって、大学名はまだ内緒で教えてもらっていないのだが、某有名校から教授として迎えたいとのオファーを受けたと喜んでいた。ちなみに、その仕事のオファーがなくとも、いまやTV局まであるナショナル・ジオグラフィック協会からの仕事やらで十分にやっていけているとのことだった。

そんなスタン君に、犬族の観察や研究は、何からはじまるのかと問うと、「糞にはじまり、糞に終わる」という名言を吐かれた。まずは生態圏に足を踏み入れたかどうかは糞の有無で知り、その内容物を見ることで、食物の予想を立て、獲物を狩る場所を想定し、観察拠点を設営する。より新鮮な糞が見つかれば気分はヤッホーだそうである。でもって、生体を発見し、その観察をするうち、糞を見れば若手、落語家で言えば見習いか前座、あるいは二つ目か、ことによると真打ち、しかも相当なベテランというふうにわかってくるそうだ。しまいには、その糞を見て、観察中につけたニックネームのあいつのだな、と予想がつくまでになるというからスゴイ。

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突然、このファイルが送られてきて、どんなものを食べたか、予想されるものを列挙して述べよときた。グレーの毛が多いことから、ネズミ、あるいはオポッサムでも食べたか。排泄して1〜2日だろうと返信したら、Aをくれた。これはロサンゼルス郊外で発見されたもので、多分(オ)ポッサムをたいらげたんだろう、とことだった。オポッサムは、ロサンゼルス近辺にゴロゴロいるのだ。たまに生け垣や花壇から登場して威嚇する。でも威嚇仕返すと、とたんに死んだフリをする。突いても起きない、見事な死んだフリ様である。

犬の親戚筋で野生のとなると、ボクが実際に目にしたことがあるのはカヤテことコヨーテだ。ディズニー、ハンナ・バーベラに次ぐ米国アニメビッグ3のひとつであるワーナーブラザーズのキャラクターの中にワイリーコヨーテというのがいるが、文字通りあれはコヨーテなのだ。ちなみに、クルマのクラクションの鳴き声で飛ばずに超ハイスピードで走り回るあの鳥もモデルが実在していて、それは砂漠地帯に生きるシャパラルという。クルマ好き、中でも古いレースカー好きならピンとくるはずのこの名前は、その昔、カンナムというカナダとアメリカの両国にまたがって開催された大排気量モンスターマシンのレースシリーズに登場した名車の名と同じなのだ。シャパラルというクルマは、ブレーキングによって角度が変化する空力ウィング等の画期的な技術が盛り込まれたユニークなクルマだった。

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その昔、バブル時代に調子こいていたダイエーは、米国ワーナーブラザーズ(WB)のキャラクターショップの経営権を取得し、日本で展開しようとした。そのフラッグシップ・ストアは、いまディオールになっているところにあった。これは、その当時、そこに勤めていた友人の手前、何か買わなければと購入したワイル・イー・コヨーテ(というキャラクター名なのね)の置物だ。下の左は、実際にネバダとかの砂漠に入る超高速で走る、飛べない鳥のシャパラルだ。それがWBの手にかかると右になる。WBでのキャラクター名はロードランナーだ。アニメでの鳴き声は、クルマのクラクションだ。

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それはともかく、ボクがコヨーテを見たのは、全米第二の都市であるロサンゼルスのド真ん中でだった。しかも、そいつは、真夜中のロサンゼルスの車道を渡り、ビバリーヒルズよりもリッチなベルエアのお山の方面へと消えて行った。最初は、ちょいとワイルドな雰囲気のミックスちゃんかと思ったが、となりでいっしょに信号待ちしていたタクシーの運ちゃんが「カヤテだ」と言って教えてくれたので、それとわかった。あと、ロス郊外の友人宅の猫はカヤテにやられていなくなり、そこの旦那の孫は、ハイキング中にカヤテの群れに囲まれて危機一髪なんてこともあったそうだ。

全米二位の大都市とは言うけれど、ロサンゼルスは、ひらべったくだだっ広い、偉大なる田舎都市だ。自然との共存という点でも、われわれが考える以上に密接な関係にある。なにせ、スカンクとかもけっこういて、運悪くそれを轢いたクルマは、それはモノすごい匂いを発しながら走り、走った後に悪臭を残して行く。ロサンゼルス近辺のちょいと町外れにあるコンビニに行くと、賞味期限切れの業務用トマトジュースの大きな缶が堂々と売られているのを目にすることがある。あれは、なんのために売られているのかといえば、スカンクの悪臭落とし、というか匂い消しのためだ。スカンクのくっさいのは、トマトジュースで洗い流すのが一番なのだ。

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人里に出現したコヨーテのように見えるが、実際は、その逆で、コヨーテの公道範囲内に人間が住みはじめた結果である。もし、このコヨーテが腹を減らしていたら、通りの向こうの子供は危ない。下は、シカゴの街中で発見、捕獲されたコヨーテだ。この場合、州のレンジャーの手に渡され、野に戻される。放せよコノヤロー、てなところである。

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ついでに触れておくと、ロサンゼルス近辺には、そのほかの野性動物もけっこういる。ハリネズミ、オポッサム(あるいはポッサム)、鹿等は普通にいる。とはいえ、より自然に近い区域になればばるほど、の話だが。でも確実にいる。その中で極めつけのワイルドワンがコヨーテで、なんとなれば彼らもまたオオカミがルーツの野生の犬族のひとつだからだ。実際、ミックスにしては、ずいぶんとワイルドで剣呑でヤバそうな雰囲気だなあとのんきに思ったノクだが、そりゃそうなのだ。なにせ、野生なんだから。獲物と目せば、猫だろうが人の子だろうが、腹が減っていれば、生きるための食物としてロックオンされてしまうのだ。猫は俊敏に動くことができるが、距離を稼げないので、場所によっては十分にコヨーテの餌食にされてしまうのだ。

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カリフォルニアの郊外にあるゴルフ場の片隅に登場したコヨーテの子供達。子犬の場合はパピー、子猫の場合はキトゥン。ほかの動物の場合は、カブと呼ばれる。野球のシカゴ・カブスのマークは、熊の子だ。ボーイ・スカウトの幼年の下部組織はカブスカウトと呼ばれるが、それもこの「カブ」からきている。

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コヨーテはともかく、より大きめなディンゴは、家畜を襲う。そして数も増える。となると、オーストラリアの州政府は、数を限っての狩猟を許可したりする。中には、家畜をやられっぱなしで我慢の尾が切れたと勝手に射殺する農家もいる。これは、その未認可のほうで、一頭は、近づくとこうなるぞと、見せしめのために吊り下げられている。犬好きとしては、犬そっくりの犬の仲間として、見るに忍びない光景ではある。

こういう話を聞いていると、なるほど北米から狂犬病がなくならないワケがよくわかる。狂犬病は、別に犬だけでなく、アライグマやスカンクといった、向こうではクリッターと呼ばれる小動物が媒介することもありうるからだ。しかもあの国土の広さである。野犬もいるにはいるが、スタン君によれば、野犬の数と置かれている状況の悪さを考えると、たぶん中国が世界最悪とのことだった。上海とか北京といった大都市周辺に万単位でいるというのだから恐れ入る。

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ほとんど犬なので、ディンゴのカブは、とても可愛い。可愛くて実際にも子犬のようにじゃれる。しかし、そのじゃれっぷりには限度がない、というか子犬のそれより、かなり強烈なのと、そばに親が入るから要かなり注意だ。ディンゴの中には、柴犬のように白いのもいる。珍しいので、つかまえられるケースが多いとのことだ。子供も白い。突然変異的に現れる希少種だそうだ。

と、犬とその親戚筋の話となると止め処もなくなるので、今回はこの辺にしておこう。次回も犬の親戚筋の野生編、とくにオオカミに重点を置いて大クルするつもりだ。 ちなみにスタン君は、コヨーテやディンゴ、そしてオオカミたちの狩りをする様子から、獲物のどこら当たりから食べはじめるのかといった彼自身による観察ノートから、野生化した犬、つまりが野犬たちからオオカミに至るまで、その生体の健康を保つためにありとあらゆるレシピを試した記録ももっている。ちゃんとカロリー計算までして、内蔵肉なども部位別に含有水分量から栄養素に至るまでの知識もある。すごいぞスタン。次回は、そこらあたりについても触れるつもりだ。

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ディンゴの殺処分に反対し、また交通事故で親を失ったカブたちの面倒をみる人たちもいる。これはその一例で、完璧に飼主の女性に慣れているカブたちだ。交通事故は、狩猟でやられたか、なんらかの理由で親が戻らず、弱っていたカブたちをレスキューしてのことだそうだ。それでも来は抜けない。1歳を過ぎて発情した際、急に野生に戻るのもいるそうだ。

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アメリカン・フットボールNFLのスーパ=スターの座から、自宅の敷地内で闘犬賭博を開帳していたばかりか、負けて戦えなくなった犬たちを射殺していたことも明るみに出、一瞬にして動物虐待の象徴としてその名を地に落としてしまったマイケル・ビックを表したイラストである。血を流して死んでいる犬たちの中で茫然自失としているのがヴィックだ。イラストの作者から掲載許可をもらえたが、その際のクレジットは不要だと言われた。スーパースターのエースQB(クォーターバック)の名声が地に堕ちたことを死んで行ったピットブルたちと共に表した悲しい作品である。

NFLと言うと、犬好きは大型犬のニューファンドランドを思い浮かべるかもしれない。がしかし、ここでいうそれは、米国のプロ・フットボール・リーグのことである。その正式名称はNational Football Leagueと言って、全米各地を本拠とする34のチームで構成された、アメリカン・フットボールのプロ・リーグ組織のことを指す。その頭文字をしてNFLと言うのだ。英国でフットボールといえばサッカーのことを意味するが、ここではヘルメットに防具で身体をかためたアメフトのほうを指す。

ところで、日本でもアメフトはそこそこの人気を誇るスポーツで、学生だけでなく、プロではないが社会人リーグもある。その日本一の座を決する全国選手権試合をライス・ボウルというが、言ってみれば、この名称はドンブリ飯ともとれる。まあ、ドーデモイイことなのだが、いつもその名を耳にする度、丼に盛られて湯気を立てている白飯のことが思い浮かぶ。そんな日本のアメフト界の選手、そして指導者たちにNFLのことを聞くと、決まり文句のように必ず出てくるフレーズがある。それは「神の領域」というものだ。

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左は、大学2年次のドラフトでの目玉選手となり、2001年のNFLドラフトでアトランタ・ファルコンズから全体1位指名を受け、入団発表の会見場に立つヴィック。アフロ(アフリカ系)アメリカンのQBで全体1位指名を受けたのは、NFLがいまの態勢になった1970年以降で初めてのことだった。右は、自分のプレイに満足気にグラウンドを去る際のヴィックである。その後の本人によれば、細かく複雑なゲームプランを憶えること以外、練習は常に誰よりも遅く来て、だれよりも早く帰ったそうだ。それが彼の内なる傲慢尊大さを育み、成長することを拒んだのだろう。

これはバスケットボールの世界も同じで、選手や指導者たちに、なぜNBAには日本人選手が登場することがないのかと問うと、必ずと言っていいほど、「神の領域」というフレーズが出てくる。NBAの場合は、身長という見た目にも分かりやすい差が厳然としてある。フットボール界もNFLとなると、それはものすごいガタイの選手ばかりのように思える。だが、日本人でもイケるのではないかと思えるポジションもあるのだ。

バスケットボールでいえばポイント・ガードという比較的身長の低い選手が多いポジションである。とはいえ、これはサッカーでいう10番、いわゆる司令塔のような役割というか存在なので、日本と欧米におけるバスケット界の層の厚さが段違いなこともあって、背が低くとも才能はある、ということだけでは難しいようだ。かつては田伏選手という天才的な日本人プレーヤーがNBAアリゾナ州フェニックスに本拠を置くサンズのセレクションに残ったものの、スタメンは夢のまた夢。単なるワンポイント起用される枠にやっと入れただけで、結局は戦力外通告され、日本に返るしかなかった。

で、フットボールだが、こちらのほうは身長の差というよりも、総合的なフットボール能力の差がモノを言う。そして、それは肉体の見た目だけでは分からない。体格的には、日本人でもいそうな選手はいる。ところが、反射神経や試合センスとなると、歴史や競技環境の差がもろに出る。フットボール・チームは、攻撃のオフェンス、守備のディフェンス、そして得点後のキックオフ等で出番となるスペシャル・チームの3チームで構成されている。米国プロ・スポーツの華でもあるNFLには、他のスポーツ各界からの精鋭も集まる。そんな彼らは、ポジションごとに求められる能力のスペシャリストなのだ。幼年では幼稚園から、そしてプロ候補としては大学に至るまで全米の学校にあるフットボール・チームの数を考えれば、その層の厚さは推して知るべしだ。そして、プロになる、それも上位指名となれば、それはものすごい契約金と報酬が約束される。

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これがマイケル・ヴィック邸である。自宅の裏手にある、黒く塗られた小屋というか建物に闘犬場があった。2007年シーズンの開幕直前にこの邸宅と背後の施設に家宅捜索が入ったのである。そして、そこで発見されたのは、目を覆うしかないものばかりだった。なんとそこには、傷ついた犬たちの他、数多くの闘犬の墓場もあったのである。

たとえば、いまは引退してしまったが、NFLのチャンピオン決定戦であるスーパーボウルに出場し、優勝経験もあるデンバー・ブロンコスのQB(クォーターバックというポジションで、フットボールにおける司令塔だ)だったジョン・エルウェイは、大学の日米野球のときのエース・ピッチャーであり、5番バッターとして来日していた。それでも進んだのはフットボール界だった。NBA界のスーパースターでナイキ社のトップブランドとしても有名だったエア・ジョーダンことマイケル・ジョーダンもそうだ。彼の場合は、高校時代までは野球をしていて、その後、バスケットに転身し、NBAで6回もシカゴ・ブルズをチャンピオンの座に導いた。

その間、3連覇した後、ジョーダンは、突然引退を表明し、野球界に転じた。それは直前に強盗に殺されて亡くなった父親、そして自分の夢でもあったメイジャー・リーグへの挑戦のためだった。しかし、2Aからはじまった彼のプロ野球人生は、2年目にして選手会のストライキによってくじかれた。そして彼は、再び古巣NBAのブルズに復帰し、またもや3連覇した。ちなみに、ストライキでファンからそっぽを向かれたMLBの人気復活の礎となったのは、日本の誇る世界の野茂英雄だ。ボクは、あの頃の野茂選手にどんなに勇気づけられたことか。両リーグでのノーヒット・ノーランに、ルーキー・イヤーでのオールスターへの出場等々...。おっとまた脱線が過ぎたようだ。

と、そんなモノスゴイNFLにおいて、2001年、ある途方もない選手がドラフトの全体1位で指名されアトランタ・ファルコンズに入団した。その名はマイケル・ヴィック。米国のバスケットを除くあらゆるスポーツ界における驚異的な才能の持ち主で、誰しもが彼のプレイに度肝を抜かれた。彼は、14歳以降、野球をプレイしていないにもかかわらず、MLBのコロラド・ロッキーズからドラフトで指名されたこともあった。そんな彼は、バージニア工科大に進み、卒業前に当時としては全体指名1位としては初のアフリカ系アメリカ人のクォーターバックとしてファルコンズの一員となった。それはNFLが現在の形となってから、1970年以来の快挙でもあった。要は、マイケル・ヴィックは、それだけの評価を得るに十分な才能を有していたということだった。

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マイケル・ヴィックの人気を表すのに格好なものといえば、このナイキのヴィック・モデルのシューズだろう。これらは発売されるや、あっという間に売り切れたそうだ。無論、あとからプレミアム込みの高値で売る算段のバイヤーたちの大量買いもあっただろう。言ってみれば、楽天イーグルスに入団したばかりのマー君モデルをナイキがわざわざ作ったようなものだ。そんなことは普通あり得ないので、それだけヴィックの人気が高かったことが察せられようというものだ。

ヴィックは、たしかに、そら恐ろしいほどの才能と体力、そして身体能力の持ち主だった。それは天才の名に相応しいものではあったものの、天才ゆえの気まぐれ的な性格もあり、度々、大切な練習をサボった。サボっても、本番となればヴィックのやりたい放題で、どんな難局にあっても、彼の才能と力でチームは勝利を得た。そして正QBの座を得てからの2年目、その当時は不人気だったファルコンズの全試合のチケットを完売状態にし、チームをプレイオフにまで導いた。しかし、好事魔ナントヤラで、そんな天才ヴィックの周囲には暗雲がたちこめてきていた。たとえ人気があっても、アメフトは1人で戦うものではない。彼は次第にチームの中で浮いて行ったのである。

その後、ヴィックは2003年シーズンを怪我で棒に振るも、翌04年には完調の状態で復帰し、チームはスーパ=ボウル一歩手前のNFCチャンピオンシップ・ゲームにまでコマを進めた。しかし、複雑な戦略をとるアメフトの世界のトップ・リーグであるNFLでチームは、噛み合うことなく05年、チームはシーズンを再開で終える。この年、シリーズ戦の一環として開催されたNFL TOKYO 2005にファルコンズは来日し、その中にヴィックの姿もあった。そして翌06年には、チーム内の歯車も噛み合いはじめ、地区3位となる。そうして迎えた2007年、NFL界のスーパースターは、神の領域の天国から一転してこの世の煩悩の地に堕ちるのである。

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ヴィック邸の背後にある闘犬賭場の内部捜査中の当局の面々。運んでいるのは、証拠品であったり、息も絶え絶えの要治療の犬たちでもあった。闘犬場のあった建物の壁に積み重ねられているのは、犬小屋だ。どれも黒く塗られているところが、行なわれていた闘犬の残酷さと相まって異様な感情をかき立てる。

全米を統括する動物愛護団体のASPCAとFBIは、2004年よりジョージア州とフロリダ州の闘犬賭博の捜査をしていた。そして、2006年、ヴィックの従兄弟がマリワナの不法所持で逮捕された際、ヴィックの地所で闘犬賭博が開帳されていることを知る。その闘犬場は、アトランタ郊外の豪邸の庭の裏にひっそりと建てられている小屋であり、そこに踏み込んだ捜査官たちは、建物の中で傷ついた犬たちや、その周辺にある犬たちの墓を発見した。その場所は、すべてマイケル・ヴィックの地所であり、そこでは負け続けた犬たちの処刑も行われていたことも判明し、多数の逮捕者が出た。そして、その中にはヴィックの姿もあったのである。話をはしょると、結局ヴィックは事情聴取の際の偽証と、闘犬賭博開帳の主宰者として起訴され有罪となり、1年11ヶ月の服役を宣告された。その判決を受けてNFLは、彼の無期限出場停止処分決め、その直後にヴィックは投獄されたのだった。

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左は、公判中の囚人服を着用中のヴィックの絵である。ご存知のように法廷内は撮影厳禁であるため、このような法廷画が使われるのだ。右は、陪審員である犬たちに非難されているマイケル・ヴィックを描いたマンガである。こうして見ると、法廷画は、禁止されている闘犬か賭場の開帳容疑のほうが結審したあとの別な容疑での公判中のものと思われる。犬たちに非難されているヴィックは、きちんとスーツを着用しているので、これはまだどの容疑も結審していない判決前の裁判中のものだ。

ヴィックは、投獄後、CMのスポンサーへの違約金、裁判費用等の総額が資産を上まわり、破産を申請するも却下されてしまう。そして2009年6月には保有権のあったファルコンズから放出を宣告され、失意の中、同年の7月20日に刑務所より出所する。そこで彼を待っていたのは、愛する家族たちとファン、そしてファンたちの嘆願と彼の心からの反省を受け入れたNFLコミッショナーからの出場停止処分だった。

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左は、スーツ姿であることから察するに、これは公判中の被告立ち会いの下での現場検証時のものだ。背中にMARSHALとあるのは、警部、警部補のことで、犯行の場が市街区域であるシティではなく、その管轄街の、たとえば郡で発生した際に出番となる。ハリソン・フォード主演の映画「逃亡者」で、真犯人を探すために逃亡するリチャード・キンブル医師を追いつめるトミ−・リー・ジョーンズがそのU.S.マーシャルの役だった。U.S.がつくと、連邦管轄になるのだ。右は、裁判での判決を終え、収監される直前の写真である。スーパースターが堕ちた瞬間である。その面持ちは重い。ちなみに闘犬は、現在全米50州のうち、ワイオミング州を除く49州で重罪となっている。ワイオミング州では、まだ軽微な罪のままとなっている。

ものすごい身体能力の持ち主とはいえ、彼の年齢もすでに29。2年近いブランクは、さすがのヴィックでも「選ばれた精鋭達がベストを尽くす」NFLの場で通用することはなかろうと、どのチームも彼と大型契約を結ぼうとはしなかった。その中で、エースQBを移籍によって失うことが明らかとなっていたフィラデルフィア・イーグルスというチームがあった。以前からヴィックの選手としての能力を高く買っていたイーグルスのオーナーとGMは、犯した罪を引き続き何らかの形で償うことを条件に初年度160万ドル(現在の為替にして1億3千万円)、2年目は09年の状態を見てのオプションで500万ドル(約4億円強)という契約でヴィックを獲得した。

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この手の事件が起きるたびに登場するのが、ご存知、動物愛護の過激派であるPeTAの面々だ。押し黙った表情で怒りの主張をする者もいれば、感情むき出しで非難する連中もいる。気持ちは察せなくもないが、ボクは、このPeTAのやり方に与することができない。命は何であれ同様とは言うけれど、人を殺傷することをいとわない動物愛護テロリストの資金源になることは、どう考えても理解できないからだ。

その09年度のシーズン終了後、ヴィックは、米国のジャーナリズム番組としてはもっとも歴史と実績のあるCBS60ミニッツという番組に単独出演し、辛辣で遠慮を知らない同番組のインタビュアー相手に、事件が発生し、投獄され、出所後にファルコンズに拾ってもらうまで、子供時代にまでさかのぼってのすべてを赤裸裸に語った。ボクはその番組を偶然にも見る機会があったのだが、見ていて驚いた。そこには、無邪気ともいえる大男が、犯した罪を心から悔い、涙を流しつつ、ありとあらゆる質問に動ずることなく真摯に答えていたのだ。彼によると、闘犬賭博は、彼の育ったバージニア州のニューポートニューズという町では、何も珍しいことではなかったのだそうだ。それを広い自宅の地所に建てた真っ黒に塗られた専用の施設で開催するのは、彼にとって罪悪感とはまったく別の、ごく当たり前の娯楽であったということだった。ちなみに、彼はそれが重罪であることも騒ぎになってから知ったという。

これをして彼を一方的に責めることはできない。実際、そこで行なわれていた残忍な行いは別としても、彼の生まれ育った場所では(ちなみに彼が生まれたのは1980年なのだが)、それが闘鶏や闘牛のようなもので、当たり前にあったという事実だったのだ。そのことを見逃してはならない。ところで、英国当局の調査によると、リーマン・ショックに端を発した金融危機によって不況となった英国で、いまもっとも懸念されているのは、各地で開催されている地下闘犬の賭場の急増だそうだ。そこに集まる人間には上流、知識、労働等の階級すらないそうだ。人間、それが当たり前の世界で育ったり、また、気持ちが荒むことで、闘犬のような、ある意味、残忍さを伴う賭博が流行してしまうらしい。聞けば、「夢の国」があることで知られるボクの住む千葉の某市にある市場の裏では、20年ほど前まで、ごく普通に闘犬が行なわれていたそうだ。

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マイケル・ヴィックに励まされ、勇気づけられた擁護派たちもいる。彼らは、ヴィックを無罪放免にしろと主張しているわけではない。罪は償わなければいけないが、我々は君を見捨てたりはしないと訴えているのだ。ヴィックは、まだ彼のことを敵視するPeTAにはともかく、彼らのファンの期待に答えることを、いま実行している。それは評価していいはずだ。

ヴィックに話を戻すが、インタビュワーが、彼にいま、もっとも悲しいことは何かと聞かれたとき、彼は天をあおぐように上を見ると、幼い娘と息子が、子犬を飼いたい、けれど、なぜうちでは飼ってはいけないのかと聞かれることだと言って、大粒の涙を流した。彼は闘犬賭博開帳の罪で投獄され、模範囚として刑期を大幅に短縮されて出所することが許されたが、まだ犬を飼うことは許されていないのだ。自分の犯した罪によって、それには関係ないわが子の望みを叶えてあげることすらできない。そのことに彼は涙したのだ。そして、彼は、彼の主宰した闘犬によって命を落としたピットブルたちの亡骸、そして修復可能かどうかも疑わしい、しかしまだ存命中の犬たちの写真を見て、それらから目を背けることなく、謝罪し、神に許しを請うた。そこには、天から授かった才能を持て余し、周囲がいさめることもなかったがために尊大傲慢になっていた、かつてのヴィックの姿はなかった。彼は、愚かな人間ではない。彼は自分の無知と傲慢さを知り、それによって人間として成長したとボクは思っている。

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上の2枚は、何度見ても胸が痛くなる、発見され、保護された2頭の姿だ。右の犬は、顔面修復が必要なほど傷んでいる。どうすればこうなるのか。ある意味、これこそが人間の業の深さを表しているともいえるのではないか。2段目と3段目は、保護され、リハビリ中の犬たちである。プロの、犬のリハビリに人生を捧げた面々と彼らの努力により、戦うことだけを教えられていた犬たちは、人と共生する犬としての本来の幸福を取り戻しつつあるそうだ。それを聞いて、ホッとするのはボクだけではないだろう。ちなみに、この施設はユタ州の某所にある。この施設の趣旨に理解を示し、微額でも寄付をして会員となった者だけが訪れることができる。ボクは、この施設のネット会員で、機会があれば、いずれ訪問したいと思っている。

かくしてNFLの正QBとしては、異例に安い金額で契約したヴィックは、文字通り生まれ変わった。それまでトレーニングらしいトレーニングをすることもなかった彼は、その鬼となって身体と心を作り直す努力をした。その姿は、厳しく苦しいトレーニングメニューを作成した、これまた鬼と呼ばれた同チームのコンディショニング・コーチさえも涙させた。そのコーチによれば、ヴィックは苦しくなればなるほど、彼を支えてくれた家族やファン、そして亡くなり、傷ついた犬たちに対する謝罪のことばをつぶやき、限界を超えるほどの頑張りを見せたという。NFLのチーム所属のプロのコンディショニングコーチ歴30年。そんな鬼コーチは、練習に打ち込む選手を見れば、その人柄などが手に取るようにわかるという。そんな彼から見てヴィックは、本物であり、サビついてなんかいない。そして心の底から自分を変えようとしていることが察せられ、自然と涙がこぼれたのだそうだ。

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この事件の世間に及ぼした激震ぶりは、有名なスポーツ・イラストレーテッド誌の表紙を飾ったことでもわかる。同誌は、スポーツ誌でありながら、犬たちの健康回復ぶりを数回に渡って連載した。犬に詳しい方ならご存知の通り、表紙の犬は、闘犬に用いられることの多いピットブルだ。その攻撃性(?)ゆえに飼育を禁止している国は欧州にあるが、実にナンセンスな話だ。以前にも本ブログでも触れたが、犬は飼い方と躾の仕方次第だ。ピットブルでも、幼児と仲良く幸せに暮しているのも多数いるのだ。犬種のせいにしてはいけない。

厳しい練習をこなし、かつての勘と身体の動きを取り戻したヴィックは、あらためて神の領域にあるスポーツのために生まれてきた男であることを示した。通常、QBというポジションは、無数にある作戦とその動きを記憶する頭脳に加え、鋭く正確なパスを通す肩の強さ、そして瞬時に適正な判断を下す能力を求められる。そしれ、それだけでも大変なことなので、脚力や頑健さは2の次とされる傾向にある。

しかし、ヴィックは、それらのすべてを備えていた。打ち所が悪ければ脳震とうによる失神や、選手生命を終える怪我をしてもおかしくない相手チームのディフェンス攻撃が当たり前のフットボールの世界で、そのリスクを避け、自らをかばう動きを見せるのは、QBとしては珍しくない。ところが、ヴィックは、ヘルメットを弾頭とするミサイルのようなディフェンスを瞬時にして避け、100m12秒フラットの脚力で走り、場合によっては、ディフェンスの選手たちを引きずりながら自ら得点することもある、真のオールラウンダーと呼べるQBだった。NFL入団当時に比べれば多少は落ちるにせよ、復活したヴィックが試合で見せた動きは、彼の永久追放を叫んだフットボー・ファンをも黙らせた。

今年のシーズン、12月16日付のNFLのサイトでヴィックは、QBのトップ5の1人に挙げられている。さらに、試合には負けたが、対シカゴ・ベアーズ戦では、スタジアムの全観客の度肝を抜く驚異的な「針の眼」を通す見事なパスを通して得点を決めて見せ、同時にNFLの全チームと世界中のファンにヴィック健在であることを示してみせた。以下のURLは、NFLの公式サイトのもので、同ゲームのハイライトとして、「針の眼」を通すシーンの映像を見ることができる。アメフトを知らない方には申し訳ないが、4thダウン、残り9ヤードの場面。もうパスしかあり得ないと警戒する4人のディフェンス選手たちが、ボールをキャッチするレシーバーの周囲にうごめく中、その集団のそこしかないという、まさに針の眼を通すヴィックのパスは、まさに驚異的である。

http://www.nfl.com/videos/philadelphia-eagles/09000d5d81c7fe9f/QB-Vick-to-TE-Celek-30-yd-pass-TD-4th-down-conversion

また、以下のURLは、赤いファルコンズのユニフォームを着ていたスーパースターのマイケル・ヴィックが闘犬賭博の開帳と偽証によって有罪となり、投獄され、そしてカムバックをはたした一連の出来事を早足で追った映像だ。本文を読んでからご覧のなれば、英語がわからなくても、内容はおわかりいただけることと思う。

http://www.nfl.com/videos/philadelphia-eagles/09000d5d81c9cdf6/Michael-Vick-Then-and-Now

現在、ヴィックはフィラデルフィア・イーグルズの正QBとして、プレイオフ進出のため、同じ9勝4敗で地区トップのニューヨーク・ジェッツと順位を争っている。きわめてハードなスポーツなので、試合の開催は週1回のみ。そのイーグルス対ジェッツの地区の頂上対決が来る12月19日(日)に開催される。たぶん日本で生中継はないだろうが、その直後にNHKのBS等で放映されることもある。なので、努力するようになった天才QBのヴィックの活躍を見てみたいと思われた皆さんは、新聞のラジオテレビ欄をチェックしていただきたい。ちなみに、彼の背番号は7番だ。

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出所し、復帰後、時間があれば、闘犬撲滅キャンペーンに参加し、いかに自分が無知であり、残酷なことをしてきたかを熱弁するマイケル・ヴィック。ボクは、このキャンペーンでの彼のスピーチ映像を最初から最後まで見たことがあるが、それは真剣かつ真面目で心打つものだった。改心し、罪を悔い改め、視野を広げた者だからこそ言えるであろう言葉には、ずっしりとした重みがあった。彼自身のはともかく、彼の奥さんと娘さんは別人格なのだから、当局もヴィック家で犬を飼うことを許してやっていいとボクは思うのだが、いかがだろうか。

ヴィック本人は、現在シーズン中ではあるものの、義務づけられた出所後の社会奉仕 の時間を終了した後も、近隣の小学校や中学校をまわり、動物虐待の無意味さ、動物愛護の大切さを、自らの体験を交えて語り、収入の1割を闘犬廃止運動のための基金に寄付している。彼は、大きな代償を払って多くのこととものを学んだ。そして、それは、彼の口調と言うか、しゃべり方、人と接するときの態度が、逮捕投獄の前後で大きく変わっていることからも察せられる。彼はいま、再び犬を飼うことの許可を得るべく、裁判所に申請中であるが、これに対し、前の汚染ペットフード事件のときにも登場した動物愛護過激派として知られるPeTAが猛反対している。彼らによれば、「それは小児性愛者に小児を与えるも同然の愚行」であると言うのだ。いくらなんでも、それは言い過ぎだろう。

この広い世の中、身体的な才能は別として、ヴィックのような生い立ちで、その中で見聞きしてきたものがすべてで当たり前と思って育ってきている世界観の狭い、狭量な人間はゴマンといる。わが家の近くでも、自らの不明をすべて自分の犬や、よその犬のせいにし、自分の犬の幸福すら考えたこともない連中がゴマンといる。その中には、欧米であれば虐待と受け取られかねないことをしている人たちもいる。ボクも人間であり、大それたことではないにせよ、無知ゆえに多くの過ちを犯してきたし、これからも未必であろうけれど、過ちを犯すはずだ。故・相田某ではないが、人間であるからだ。でも、そんな局面に相対したとき、それがどんなことであれ、ボクはマイケル・ヴィックのことを思い、自分をただそうと思っている。

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チーム、ファン、そして自分と家族、そして自分の属する愛護団体への基金のため、いまも全力でプレーするマイケル・ヴィックから、ボクは目を離せない。彼の犯した罪は別として、彼はまさに「神の領域」にいるプレーヤーの一人なのだ。
この「神の領域」とは、厳しい競争の中、身体と頭脳、そしてその両方があって生まれる
センスのすべてが、同じ人間とは思えないレベルに達していることを意味している。コメの飯を食い、体格も劣り、層が薄いゆえにセンスが磨かれることも叶わない、プロのない日本のアメフト界からしてみれば、NFLは、まさに神の領域なのだ。

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ニューヨーク大学の栄養学の名誉教授にして主任教授でもあるマリオン・ネスル博士による問題の著書「ペットフード政治学/Pet Food Politics」の表紙である。この本を書き上げるまでに収集した資料はそら恐ろしいほどの量で、それはすべて超のつくアナログ的な図書館ネットワークによるものが大だった。ネスル女史は、07年より前、04年にタイで発生したマース社のPという有名な製品で6千頭以上の犬が死亡した事件を契機に調査を始め、同書を書き上げている最中に07年の事件が起きた。そんなワケで、人々の記憶に07年の事件がまだ新しい時期に、実にタイムリーに出版されることとなった。実にねばり強く根気のいる取材を元にしたドキュメンタリー/ノンフィクションだが、女史の書き手としての腕と茶目っ気のおかげで、へたなミステリーの名著顔負けの「寝る間を惜しんで」読める内容となっている。邦訳の登場が待たれる。出版不況と言われるが、出版社のみなさん、ペットとペットフードに対する危惧のある飼主さんの多い昨今、この本は確実に売れますよ。なんなら翻訳監修しますよ。

前々前回の#53から前回の#55に至るまで続いた07年のペットフードのメラミン汚染とペットの大量死事件だが、お読みになった皆さんのほぼ全員が感じた通り、それはとても後味のよいものではなかった。中国は、案の定、政治問題化させてコトを複雑化させ、スケープゴートに重罪人の大量逮捕者を出し、死刑となる者もいた。とはいえ、死刑となったのは、メラミン問題とは関係のない連中だった。薬物の許認可権者という重責にありながら、ヒトの命をもてあそんだ罪の重さはあれど、ペットフードには直接的な責任はなかった。問題の責任者の特定ができないということは、裁判の被告も決まらず、裁判も開廷されないということでもある。しかし、それもようやく連邦ではないものの、裁判が開廷されるそうな様子である。

米国側では、FDA関連の法律は、どれも改正された時期が30年代と古く、それによると小麦グルテンであったはずの小麦粉入りメラミンの安全性検査は、製造元にも輸入元にも、さらには販売元にも義務化されていなかった。さらに、問題の製品の製造工場検査は中国側では行なわれる事もままならないため、米国FDAの調査団が結成された。だが中国政府は、彼らへの入国ビザの発給を断固として拒否した。内政干渉という理由である。そしてそれは、政治問題に発展していくのだが、けっきょく中国政府はビザを発給した。なぜかといえば、もはや彼らにしても、どう調査の着手していいのかわからず、正確な結論を導き出す事さえできないほど、中国内の自治体と産業界のモラルが崩壊していたからだ。何かを見つけると、それは地方の党幹部の耳に入り、もみ消されてしまう。それが米国の専門家の手に委ねられればとなったのだろう。一党独裁で人口が多すぎる国だと、どうしてもそうなるのだ。

しかし、「食」の問題と危機は、もはやペットだけでなく、ヒトのものまで及んでいる。産地偽装なんてことは、もう可愛い部類に属する。残留農薬による安全性は無論のこと、求められる栄養素とその含有量すらまともに期待できない野菜類もそうだ。わが母は、栄養士にして調理士で、彼女はその昔、昭和30年代と50年代の野菜の栄養成分を比較して腰を抜かしていた。それだけ栄養成分は減っているのだ。家畜や家禽もしかり。まともな飼料や環境で育てられたかどうか疑わしい家畜や家禽もいる。実際、中国では牛や豚、そして鶏の飼料にたっぷりとメラミンが含まれていた事が判明している。妙な言い方になるが、本来あるべき、正しい調味料や添加物が用いられているかどうかも不明な加工品等々、食に関する不信を感じさせる事には枚挙のいとまがない昨今なのである。

いまや「食」に関する不安が叫ばれるのはヒトの「食品」とて同じということだ。そんな状況にある中、ペットフードに何か妙なことが起きていることは想像に難くないと言える。そんなヒトのもペットのも関係なく、とにかく「食」と「消化吸収」に関する知識全般のトッププロで、その世界を常に俯瞰し、またミクロ・レベルの世界もつぶさに見てきた人がいる。それが上の写真の本の著者であるマリオン・ネスル博士だ。茶目っ気も人並み以上の博士というか女史は、上の本だけでなく、食に関する名著を数多く書き上げてきた人としても知られている。オーガニックという、いまではごく当たり前の概念も、彼女は20年以上も前から提唱しているのだ。

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Pet Food Politicsまで計5冊の本を出しているネスル女史。手前のFood Politicsでは、市場価格ゆえに出荷できる優良な野菜や果物が廃棄される、消費者よりも国益と企業の利益が優先される、歪んだ「食の世界」が描かれている。同書によって過剰な作付けを改め、消費者、そして産地の土壌へのケアまでが考慮される運動が各地で起きた。それはファストフードに対するアンチテーゼとして生まれた、地産地消やきちんとした料理による食の大切さを意味するスローフードという運動に発展するのだが、そのスローフードなる造語も、彼女と欧州の有機農法推進者たちとのやりとりの中で生まれたものだ。ちなみに、ネスル女史も、なかなか料理が上手だそうである。

ボクは、Pet Food Politicsで彼女の存在を知ったのだが、それ以降、それまで出版されてきた彼女の著書の多さと質の高さにビックリした。そして、海外の書評誌を見ると、どれもこれもが最高ランクの評価を受けていること、専門書としては望外のベストセラーもあり、ありとあらゆる料理研究家や食のウルサ方たちから全面的な信頼を寄せられていることも知った。そしてひょんなことから女史のメールアドレスを知り、本ブログでペットフード汚染問題を取り上げたい旨のメールをお送りしたところ、彼女の著書からの引用を快諾してくれたうえに、それはものすごい量の資料のファイルを提供してくれたのだった。それらは、すべて彼女の根気と情熱でもってかき集められた宝物である。それを、どうぞお使いなさいなと、ポンと出してくれたのだ。

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これは女史から提供いただいた資料の中にあった米国の全国紙USA TODAY紙である。トップを飾る汚染ペットフードの記事によると、2007年の一件とは、いささか異なる薬品混入によるペットの大量死事件が、3年前の04年のタイにおいて、すでに発生しているとある。それによると製品はマース社のPチャムという製品で、薬品汚染された製品により、6千頭あまりの犬が死亡したとある。これは明確な事実の報道である。ただし、このときはタイにある同社所有の工場で起きたことというところに、また大きな問題があることを示している。下請けではない、自社の工場で、しかも致死量の薬品が混入するとは、どういうことなのだろうか。もはやトップブリーダーのお墨付きなど得られないだろう。

マリオン女史曰く、同書の執筆にあたっては、それはまるで詐欺を発端に起きた役所もからむ大量殺傷事件の事件後の調査を、関係する政治家や役人、そして悪党共の中を手探りで行なうも同然だったそうだ。単純な事件のはずが、有名ブランドを保有する大会社の経営陣(こいつらが、いわゆる政治家だ)、製品に目を光らせるべき輸入元と役所(役所とは中国の輸出税関とFDAのことで、これが役所と役人だ)、そしてリコール後も、バーコードのステッカーを上から貼って売り続けようとする小売チェーン(メラミンを小麦グルテンと言い張り、表示に手を加えて輸出した中国メーカーと、リコール後も販売し続けたこいつらも立派な悪党だ)等を相手に調査を続け、証拠を集めるのは、まるで彼らが巣くうペットフードの炭坑の中を証拠を求めて掘り出しに行く炭坑夫も同然だったそうだ。そして、そんな彼らから伸びる魔の手を事前に察知するには、カナリアならぬチワワをカゴに入れて連れて行くような気分になったそうだ。実際、ペットフードの汚染事件では、チワワとかの小型犬の多くが命を落としたのだ。

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炭坑のカナリアを知らない方々が多いことを知ったので、その一例をお見せすることにした。過日のチリでの炭鉱内落盤事故の記憶もまだ新しいところだが、あのように地中深い炭坑の中では、空気の状態が見極めにくい。警報機の類もあるにはあるが、もっとも確実なのは、空気の汚染に弱い、小鳥のカナリアなのだ。このように、カナリアは、世界中の炭鉱内で活躍しているのだ。

実際、この事件とその詳細を記録した同書の余波は大きく、飼主やペット用品を商いとする良心的というか、まっとうな業者の間では、ペットの食を見直す動きがはじまった。その動きも、ごくまっとうなものもあれば、そうでないもの、また、なんと評価していいやらワケがわからないものにまで及んだ。まっとうなものは、さておき、そうでないものとは、どういう根拠があってそうするのかが明確でないもの。そして、犬の身体と彼らの求める栄養素と消化吸収のメカニズムを系統的に学ぶ事もなく、言ってみれば「ヒトの感」に頼るものである。真剣であればあるほど、犬の側に立って見るべきモノを、自分のつたない知識と感と視点にだけ頼るという、ある意味無茶な考えである。

人間は、実に業が深く、浅ましい面がある。そしてそれは、ペット関連の業界でも見事なまでに見て取れる。いまや、「正しい」とか「ワンちゃんのための」とかいうマクラ言葉だけで押し通し、国や自治体の認可もなにもない、自己流、身勝手流なペット栄養士やら何やらの資格ビジネスが横行している。中には、きちんと法人格を取得し、無茶なことをしているところもあれば、法人格もへったくれもない、しかし注目に値する評価すべきことをやっているところもある。とはいえ、いずれにも共通していることは、もはや北朝鮮や、ヤマハのエレクトーン教室と同じことである。ペットの食の世界の「偉大なる領主様」を崇め奉り、資格の階級を上り上がるために試験を受け、その都度、料金を払い、インストラクターとしての有資格者を目指させる。しかし、その資格には、何の権威の裏付けもないのだ。

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左は、国内のペットのホリスティック・ケア信奉者たちのバイブルとされているピットケーン博士による著書である。同書を読んでみて、ボクは何の違和感も感じなかった。だが、この書を元に都合よく勝手流を説いている本は実にお粗末で、内容が都合よく曲解されていたり、完全に誤読されていることがよくわかった。訳本は出版されていないらしいので、この本をテキトーに読んで理解した向きの言葉をまた聞きした程度のインストラクターのメッキをはがすのは、ちょっと勉強すれば造作ないことである。博士は、ANHC/Animal Natural Health Centerなる団体を結成し、そこでのEducation programなるものも主宰しているが、その講習内容には、けっこうマユツバなことも登場する。いずれにせよ、これがその世界のバイブルだ。無論、いいことも書いてあるのだが...。右はアニマル・ヒーリングという、いわば動物のための「癒し」の指南書である。ちゃんと筋肉や腱の配置とか、デリケートなのと、そうでない部分との知識がなければ、可愛がるために撫でるくらいの効果しかない。なんなら、きちんと料金は払うから、うちのスミレと近所の小鉄君にしていただこうじゃないか。その代わり、ヘタなことをしたら、ただじゃあ済まないからね。

その中で、もっとも悪用というか、本来の目的から外れた形で利用されているのがホリスティック医学、あるいはホリスティック・ケアというものだ。Holisticとは、ギリシャ語の「Holos」を語源とし、「全体」「関連」「つながり」「バランス」などと意訳されたものということを主張する向きもいれば、西洋医学だけでなく、漢方やハーブ、民間伝承をも含むあらゆる可能性を追求するWhole Medical Careを提唱する、米国の有名医学博士の著書名からとられたという説もある。

なにはともあれ、ホリスティック医学は、「身体だけでなく、目に見えない心や霊性と「環境」まで含めた全体的な視点で健康を考える」とある。それはそれでよろしいことだとボクは思う。なんとなれば、現代の医学ではどうしようもないことなら、なんでも試してみていいと思うからだ。しかし、それについても、信用は担保されるべきだ。どういうことかといえば、獣医師なり、きちんと系統だった知識のある者が探求し、効果のあった手法を明らかにすべきだと思うからだ。

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仕事柄、海外へ行く機会が多いが、少しでも時間があればボクは書店とスーパー巡りをする。本については、実際に購入するのは帰国後、アマゾンからだったりするのだが(そのほうが割安だし、荷物にならないしで。いまや荷物の重量オーバーの料金はベラボウに高いのだ)その際に見つけたのがこの二つだ。左は、なんと犬猫馬に聞かせると癒し効果があると言うCDだ。スミレに聞かせたら「だからドーシタ」という顔をされ、寝室に消えてそこで寝てしまった。しつこくそこまでCDプレーヤーを持って行ったらいい顔をしなかったばかりか、別な部屋に逃げられた。左は、これが大真面目な本で、動物を冷気ならぬ霊気で癒す、という指南書である。なんだか、ペットに箸でフードを食べさせるノウハウを外国人に習うがごとくの内容である。信ずる者は救われる、の乗りのものかもしれないが、はたしてそれが犬猫たちの幸せになるのかどうか。浜の真砂は尽きじとも、とはよく言ったものだ。

ガンであるとか、現代の最新の医学でも対応不能なことは多い。何軒もの獣医師をハシゴしても、どうにもよくならないことだって少なからずある。しかし、だからといって、ボクは素人の単なる思いつきを試す事はしない。なんとなれば、下手をすれば百害あって一利無しで、危険である場合も十分に考えられるからだ。しかし、元から大した知識も経験もないのに、ヒト目線で「イイコト」や「イイモノ」は犬猫にとってもいいからという短絡的な思考で、しかもそれをホリスティックという名の下で、お仕事にしようとしていて、実際にしている向きがゴマンといるのだから、おおコワイの世界だ。

実際、そんなホリスティック・ケアを売りにするインストラクターなる人たちに、ボクはワラをもすがる気持ちで頼ったことがあったが、してくれたことはボクを疑問の渦のまっただ中に陥らせた。やることなすことのすべてが「〜とされる」という言葉付きで、明確な根拠などなにもないのだ。さらに言えば、最初から最後までスミレのことを「ワンちゃん」と呼びやがった。 失礼、元居、そうお呼びになるだけだった。ちゃん付けで呼ぶ事も癒しのひとつかと皮肉のひとつも言いたくなったが、そこはグッとこらえた。この時点でもうボクの不信度の針はレッドゾーン突入寸前である。それから中には、アロマテラピーとして何かの香油を炊き、マッサージやら何やらをして、スミレを怒らせ、噛み付かれそうになって腰砕けになった方もいた。

そして、そんな不思議治療師から最後に出された紙切れにあった請求金額と思しき数字は8千円だった。ボクはアタマにきた。当家の大事なワンちゃんが、気持ちよくないとお唸りになり、お噛み付きになろうとしたくらいお粗末なマッサージと、トイレの消臭剤よりいくぶんマシな匂いを充満させ、そんでもって見当違いのお診立てをし、(スミレの剣呑な態度は糖分の不足ではないかと言い放った。小学生の子供じゃないんだよ)それで8千円というのはヒドイ。なんで最初から、それくらいかかると言わないのかと聞いたら、初診料も含まれているという。答えになってない。どこが決めた料金なんだ、そもそもどこの資格があるんだと聞いたら、ずいぶんとセンスの悪い、宝塚のベルバラ風デザインのインストラクター証なるものを提示された。何の意味もないパウチされただけのタダの紙切れである。

けっきょく、このインストラクターは、2千円にしますというので、それを支払い、領収証を書かせた。さっそく彼に資格を与えたホリスティック・ケアなるところを調べてみたところ、ちゃんとサイトはあったが、実に薄っぺらで内容のないものだった(尊大そうなおばちゃんが会長として出ていたっけ)。片っ端から調べてみると、そういうところには、必ずタイアップか、権威付けのための獣医師がいる。そして、何らかのコメントをしていることもあるのだが、どれもこれも薄っぺらな内容だった。しかし、ごく一部ではあるが、きちんと系統だった学問をおさめた上でホリスティック・ケアを取り入れている、信用できそうなところもあった。その比率、ボクがザッと見た数の中だけで、1割未満というところだ。いずれにせよ、現代の獣医学が正式な臨床例と検査を通じて認めるところにまで至っていないものは、このホリスティックの分野にカウントされるようだ。しかし、そこに霊的云々みたいなことを言い出すところがあったら、それはちょいと警戒したほうがいい。

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ロサンゼルス郊外在住の、ボクの友人で某有名バンドのベーシスとがいる。彼は日本通で言葉はたどたどしく語彙もないが、文化について、京都や奈良の寺社については、へたな日本人よりよく知っている。そんな彼は大の愛犬家でもあって、犬のマッサージの話をしたら大いにウケた。そして、近くにある雑誌店で愛犬家向けの雑誌を見つけると、そこの広告欄に「東洋の秘技の犬のマッサージ」の出張サービスがあるのを見つけ、その場で、すぐに出張を依頼した。これはそのときの様子で、やってきたマッサージ嬢は、まずはバッグから携帯枯山水を取り出し、それを付属の道具でならした。そして念仏を唱えながらマッサージをはじめた。そこまででも十分に笑える内容だったのだが、それをこらえるのに大変な思いをしたのは、犬を仰向けにする際、その頭部に三角の布を取り付けたときだ。それは仰向けにするときの礼儀だと言うのだ。どう見ても三角巾ではなく、それは仏様の頭部につける天冠てやつだ。いわゆるお化けが頭に付けている三角形のあれだ。仏様にもなってもいないのに、礼儀ってのはなんだ? ウプププとなりつつも見ていると、友人の愛犬は、突如不機嫌になり、ムキッパでマッサージ嬢を威嚇するや、奥の部屋に走って逃げてしまった。その際のマッサージ嬢いわく「ヴァイブ(レーション)が合わなかったのね。あなたの犬は、もっと基本的な部分からの治療が必要よ」とのこと。彼女が去ると同時に、ボクと友人は、文字通り笑い転げた。携帯の枯山水に念仏、そして天冠と、米国の日本かぶれのやることは、この程度のことが実に多いのだ。そして、それが本式であると信じているからたまらない。そんな彼女もお師匠さんから習ってメンキョカイデンしているのかもしれない。

ネスル女史も、そこいらのことについては、よ〜くご存知だ。電話で話をしたときのこと、ホリスティック・ケアという言葉を出したとたん、受話器と言うか、太平洋を超えた向こう側のMacの前の女史は、見事なまでにゲラゲラと笑い出したのだ。いわく、彼女が認めるホリスティック関連のものは、毒性のないハーブ、酵素、酵母関連の、まだ医薬品とは呼べないものの、効果が認められる健康食品、そして、犬の筋肉の特性と解剖学の知識のある者による触診のためのマッサージ的行為とリハビリのための運動だけだそうだ。アロマテラピーをされた件の話をしたら、彼女は画面の中で爆笑していた。そして言った。「それがオカネになると思えば、スグにそれをビジネスにする人間はいくらでもいるし、それに乗る人間もいる。でも、一番タチが悪いのは、大した基本知識もないまま、それを信じきってしまう思考力のない人たちね」。ボクもその通りだと思う。

ところで、ボクの友人で、以前にも本ブログで登場したZKNYの男こと、カズちゃんが発した名言がある。いわく「粉にされたら、もうオシマイ」。つまりが粉にされてしまったら、もう何がなんだかワカラナイ、という意味である。たしかにそうだ。そして、それはネスル女史も、そうだと同意した。彼女によれば、もはやトレーサビリティの態勢がしっかりしていないメーカーの製品は信用すべきではないという。たとえば、肉骨粉にも品質の善し悪しがあってその実態はピンキリである。まずは原料レベル、そして加工時と加工後の保存状態である。きちんとした流通ルートを通る家畜や家禽、つまりがビーフ、ポーク、ラムやチキンは、政府の検疫態勢の目が届く施設で決まった手順と衛生環境の下で処理される。ところが、そうではないものも世の中には、ゴマンとあるのだ。

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上はいずれも肉骨粉の製品である。左は、イェーツ社製のもので、農業用の土壌改良剤である。肉骨粉と言っても用途はいろいろとあるのだ。右は、シャクティ・ブランドのもので、これは鶏や七面鳥といった食用鶏専用の飼料である。これだけでなく、いろいろなものと混ぜる前のもので、混ぜた後のものを配合飼料などと呼ぶのだ。国内の自治体が処理用として、政治問題化しやすい団体に破格の値段で処理委託し、肉骨粉化されたものは、肥料でも飼料でもない方面に用いられた、との記録がある。ボクの知る、日本のあるメーカーは、このイェーツ社製の肥料を自社製フードの原料にしていた。バラすぞと言ったら、文明堂のクッキーの詰め合わせの大きな缶が届いた。送り返して保健所と農水省に報告したが、その後、どうなったのかは知らない。

ここで、そのキリの中のキリ、最低の中の最低な例をご紹介する。それは、とある肉骨粉製造会社の製品原料の中に相当数の、保健所で殺処分された犬猫類が含まれていたという実に衝撃的な事実で、それが起きたのは何と日本だ。時は01年、四国は徳島県の鳴門市と隣り合う3つの自治体が、未認可の徳島化製なる業者に、殺処分した犬猫の死体の市外処理を委託していたのだが、それが発覚するまで、同社では合計3493頭もの犬猫が肉骨粉に加工されていたのだ。それらの肉骨粉が無縁仏として弔われたというなんてことはない。それらは製品として同社から取引先に出荷された。この数字は、コトが露見した際の2001年度の資料にある数字だけで、同社による殺処分された犬猫の引き取りは、1978年から行なわれていた事も判明している。

この事実だけでも愛犬家や愛猫家にとってはココロ穏やかではない。しかし、これと同様のことは各地で行なわれていたというから恐ろしい。あらためて「粉にされたらオシマイ」なのだ。ちなみに、このことが露見してから、県は傘下の自治体の不始末に陳謝した。そして関連する各省庁の出先機関は、このことの火消しにやっきになった。だからか、このことが事件として、きちんと報じられることはなかった。新聞は地方であればあるほど、その地域の実力者の所有か、あるいは息がかかっている。だから報じられない。そして、この徳島化製なる会社は、解散し、もはや存在しない(とされている)。でも、それまでは、自治体から合法的に集金をするための、ある団体関連の会社であったことはたしかだ。とはいえ、ここでは、これ以上は踏み込まないでおこう。

この徳島化製のような会社は、全国いたるところにあって、どれも規模は小さい。そして、そこで製造された肉骨粉は、取引先のより規模の大きな食品工業会社に引き取られ、ありとあらゆる分野の製品の原料に用いられた。この「あらゆる分野」が明らかにされると大騒ぎになるからこそ、役所の出先機関は必死になって火消しをして、焼け跡がわからぬように処理したのだ。ボクは、その先のことを、ある程度調べ挙げて知っているが、ここではとてもじゃないが書けないおぞましさだ。そして、なぜそのようなことが起きたかと言えば、これまたヤヤコシイ状況となっている、とある社会問題における利権問題が絡んでくる。徳島化製で検索してみれば、そのことがわかるとだけに、ここではとどめておこう。

ネスル女史に話を戻すと、いまや彼女は、ペットフード業界における要注意人物リストのトップに君臨している。某有名ブランドの大会社は、彼女からのあらゆるコンタクトは無論、来訪や面会すらも拒んでいる。最近、彼女は、旧友でもある、獣医学の世界では世界をリードする米コーネル大学の動物栄養学の博士であるマルデン・ニーシャイム博士との共著で、"Feed Your Pet Right"「あなたのペットに正しい食事を与えましょう」という本を上梓した。

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たぶん、犬猫の「食」に関しては、決定版といえる本がこれだ。どんな獣医と言えども、動物栄養学については、彼らほどの知識と経験はない。だからして、たとえば名著で知られる米国の某有名獣医の本の「食」の項も、この本に比べれば、実に薄っぺらいものとなる。なんとなれば、獣医師とフード・メーカーの場合、野球選手と用具メーカーのそれと同じ関係にある場合が少なくないからだ。下は、執筆を終え、出版社の校正係からのOKも出て、それではプロモーション用の写真撮影を、となった際の一幕である。少年少女の魂をもつお茶目な二人に呼応してか、ニーシャイム博士の犬たちが喜んで収拾がつかなくなったときの1枚とのことだ。この本も翻訳版が出れば、日本で出版された多くのトンデモ本が消し飛ぶことになるだろう。雑誌のフード関連の別冊も含めて、の話だ。悪書追放のためにも邦訳が出版されてほしいものだ。

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本ブログをお読みになっている皆様、もしこの本の邦訳版が出版されたら、必ずや入手して熟読していただきたい。書き手としても優秀な、その道のトッププロが、わかりやすく書いてくれたペットの食のバイブルと言っても過言ではない一冊なのだ。同書は、そういったこと以外でも面白く読める。これだけのタイトルの本なのだから、チャンスとばかりに、あらゆる意味で利用しようと考えればいいのに、大方のビッグネーム・ブランドの会社は、来社すること、電話してくることさえ拒んできたというから呆れる。つまりが、それだけスネにキズ持つ身である事を、自らバラシてしまっているも同然なのだ。何も速読する必要はない。少しでも英語が読めて、辞書を(ネット上でもあるそれ)をひく事いとわない愛犬家なら、原書で手に入れるのも一興だ。各有名紙、有名書評誌でも、満点の評価を得ているから、けっして難しいだけの栄養学の本ではない。彼女の性格からしても、それはあり得ないことはボクが保証する。

ところで、ネスル女史とのメールで、そしてネット電話のスカイプでのやりとりをしている際、専門用語をフンフンと解しているボクに、どこかの獣医大学でも言ってたことがあるのか、と聞かれたことがある。そこで、NZのM大で教えていた二人の女性教授の話をしたら、旧知の仲であることが判明した。抗議途中の休憩時にバテたボクのほっぺたを自分のほうに向かせ、チョコレートを口に放り込んでくれたことなどを話したら、ああ、彼女達らしいわと、再びゲラゲラと笑った。ボクとしては、オレはアシカかサーカスのクマか、と思ったのだけれど、いまとなってはいい思い出だ。

最後に、女史が言った印象的だったことをお伝えしよう。

「たぶん、こっち(米国)よりも日本人のほうが、より賢い消費者、そして飼主たりえると思う。なんでかといえば、アメリカ人の多くは、モノを考えない、無知と無関心を罪とも思っていない人が多いから。あとは偏見ね。なんでも自分のかぎられた知識だけで決めつけず、できるだけ多くの意見や情報を集め、そこでより正しいと思われる判断をすることが大切。それには、犬という動物の特性を知り、そこに人間の虚飾や偏見、そして視線を混同させないこと。本当に愛犬のことを愛しているのであれば、それは当たり前にこととしてできるはずよ。そして世界的なブランドであれ、もう04年や07年の事件で、その信頼は地に堕ちたのだから、それをそのまま信用するような愚をおかさないことね。人が愛犬に対しておかす過ちの原因は、そのほとんどすべてがそこに、目の前にあると思っていいのよ。」

実に頭の痛いひとことである。なにせ、日本の愛犬家は、自分が犬を愛することのほうが大事で、犬の幸せについては考えていないことのほうが多いのだから。それに最近は、まるで何も考えていないヒトのほうが多いくらいだし...。ウ〜ン、である。

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上は、メラミンの構造図と、それを3D化した立体図だ。こいつのおかげで腎臓のトラブルで死に、そして死を免れても相当な障害を受け、いまも治療中の犬や猫達がいるのだ。

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もはや、この風刺マンガにキャプションは不要だろう。普通ならBeware of the dog、日本でお馴染みの「猛犬注意」を意味するフレーズなのだが、それがドッグフードとなっている。それだけ世間を騒がせた話題だったのだ。

前々回からお送りしてきた2007年に発生したペットフードのメラミン汚染とペット大量死事件だが、けっきょく、そのコトに気づいたのはペットの飼主である一般消費者であり、ペットフード・ブランドを保有、販売していた大会社、そして下請けとは呼ぶには相応しくないほどの大規模な相手先ブランド専門のメーカーではなかった。ここであらためて整理すると、汚染フードを製造していたのは、安物から超のつく高級品ブランドの下請けメーカーで、それはカナダに本社があり、米国のカンザス州とニュージャージー州にドデカい工場をもつ、自社ブランドをもたないメニューフーズ(以下、MF社)という会社だった。

そこに問題の「確信犯的な」偽の中国製小麦グルテンを納入していたのは、ラスベガスに本社のある商社の子会社で、デンバー州にある会社だった。後述するが、そんなワケで、ある意味、米国側の各社は、中国の犯罪的ともいえる偽の商品を押し付けられた被害者、あるいは法律用語でいうところの「善意の第三者」とも見ることができる。後述するが、そのため、この汚染フードによるペットの大量死事件は、妙な方向に動きだし、その結果として、亡くなったり、障害が残ったペットの飼主たちの溜飲が下がる方向には進まなくなるのだから、腹が立つのだ。

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これは事件の発生当初、「異常な状況」への対処チームへの参加要請を受けた心ある獣医師からの要請文書のコピーのファクスを受け取ったサクラメント・ビー紙が同紙の日曜版の社会面に掲載したメラミン汚染ペットフードの犠牲者と目される犬や猫たちである。どれも急性の腎不全と代謝不能な結晶体が腎臓の内部で起こした壊疽、つまり部分的な組織の死滅状態によって命を落とした犬や猫たちである。正確な掲載日は手元にあるコピーでは、その部分がないのでわからないが、07年4月の早い時期であることはまちがいない。

それもこれも、コトがペットフードであったことだ。ペットフードはヒト用の食品とか扱いが異なる。とはいえ、ヒト用ではないもののフードというからには食品は食品だという声もあることだろう。だからして連邦食品医薬品局(以下、FDA)の管轄なのだが、 植物、農作物用の肥料もプラント・フード、金魚の餌もフィッシュ・フードと呼ばれる英語の世界ゆえ、そうはいかない。でも「食べ物」ではあるので、その安全性をチェックする義務はメーカーにあるはずだ。実際の話、輸入食品の安全性の担保も、日本では輸入した会社の責任となっている。

しかし、それはMF社にせよ、MF社に納入した輸入商社でも実施されていなかった。というか、されてはいたのだが、実に簡易的なものだった。前回でも触れたのでおさらいとなるが、化学者はモノを、物質をその構造図で見る。構造図とは、亀の甲ら状の模様の連続したような図で、それが何のものであれ、見たことのある方も多いだろうと思う。そんな構造図を見て、特徴が似ているとなると、それは同種のものとして扱えるのではないかとの仮説が立てられやすいらしい。メラミンとタンパク質も同じ構図で、お互いの含む窒素の量が似ている事から、メラミンがタンパク質の代わりになりうるかもしれないと考えられたのだ。

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愛犬家、愛猫家のために、米国FDAのペットフード・リコール・リストを閲覧する方法をお伝えしておこう。FDAの正式名称はU.S. Food and Drug Administrationといい、そこには、Protecting and Promoting Your Healthとある。つまりは国民の健康を守り、発展させるための省庁であるとうたっているのだ。上は、そのトップページである。悲しいかな、農水省も同様の取り組みをしているようなのだが、いかんせん同省のサイトは見づらく、資料を見つけにくい。したがって国内で流通している製品についての情報は、なかなかわからない。唯一、原料のトレーサビリティを確保しているのは日清ペットフーズ社だけだ。トップページ右上の空欄に、たとえば"Pet food recall of 2010"と入力してGOをクリックすると下のページに飛ぶ。

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すると、検索結果が上のように表示されるので、英語が不得手でも、愛犬、愛猫のためだと集中して見てみると、2段目にPet Food Recall Products Listとあるのがわかる。要は、2010年度にリコール届け出がされたペットフード製品の一覧、ということだ、で、ここをクリックする。するとジャジャ〜ン。下のリストがABC順に、つまりが先にキャット・フード、次いでドッグ・フードの製品名のリストを見る事ができるのだ。この画像では見えないが、画面をスクロールして行くと、ゾロゾロと出てくる。まさか、というあの高級ブランドも例外ではない。往々にしてこのページの常連だったりするのだ。

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上の矢印の中にブランド名(ちゃんとスペルをまちがえないように)やCat、Dog、そして何らかのヒントとなる名称を入力してGOをクリックすると、該当するページがあれば、そこにジャンプする。ちなみにスミレを命の崖っぷちまで押しやったブランドの名は、スクロールしていくと、あった。とはいえボクは驚かない。なんとなれば、そのブランドは、リコール・リストの常連だからだ。下は、FDAにおけるリコールの緊急度レベルの解説である。一番上の緊急性のもっとも低いLevel I からIII、そして「市場からの回収」と「摂取後の対処には(それなりの)医療用器具を要する」という各レベルの解説がされている。

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メラミンのタンパク質応用の研究は、50年代頃から行なわれ、実際の動物実験は60年代に米国で実施され、次いで70年代に入ると欧州で養殖魚を対象に行なわれ、いずれも悲惨な結果となって、その研究は打ち切られた。ここで勘違いしてほしくないのは、化学者は別に何も悪いことをしたワケではない。同様な仮説とそれを実証するための実験によって、どれだけ有益なものが人類にもたらされたかわからない。薬学なぞは、その典型だ。しかし、その陰には失敗も数多くあれば、当初は素晴らしい発明と思われ、広く利用されたものの、けっきょくマズイとわかってその使用が国際的に禁じられることとなったものもある。

その代表例がフロンガスだ。フロンのおかげで電子回路の洗浄は容易にでき、電子機器の性能は著しく向上した。また冷蔵庫やエアコンも普及した。しかし、それが大気に放たれると、結果的に地球上の生物生存のよりどころであるオゾン層の破壊につながることが、相当あとになってわかったのだ。それもこれも文明と共に発展した天文学とその最新の観測法によって判明したのだ。文明の発展の影には、このようにわれわれ一般人の知るところとなった例もあれば、知られないままにオクラ入りとなったものもゴマンとある。しかし、それを忘れた頃になって悪用する輩が出てくるとは、誰も思ってもいなかったのだ。

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誰だ、このオッサンは。ビリー・ジョエルである。最近の若い向きには名の通りが悪いかもしれないが、数多くの名曲をヒットさせた米国のピアニストでありシンガーソングライターだ。オッサンは、フロン・ガスがオゾン層を破壊しているという報道に対し、その製造元であるデュポン社の陰謀だと騒いだ。いわく、同社がフロンで儲けた後の二番手として、その代替品を売るためにフロン悪玉説を唱えているのだと。しかし、そのデュポン社陰謀説は天文学者と彼らによる最新機器による計測データで一蹴された。オッサンは、すまなかったと、自分の至らなさを謝罪した。これは、そのI'm sorry と言った直後に水を飲んだ際のバツの悪い、オッサンの表情だ。

中国政府=中国共産党の産業育成を担当する部門は、発展する工業界で廃棄されるメラミン樹脂の処置に困っていた。そこで、彼らは、国内の工業界における起業家たちに対し、タダ同然で手に入る素材として、それを提供していた。そんな中には化学者もいて、当然のことながら構造図を見て、その窒素量からタンパク質として利用できる、あるいはタンパク質と偽ることができると考えた。メラミンは、無色なうえ無味無臭の樹脂の結晶体だ。パウダー状だと真っ白に見える。そのままでは動物性蛋白と偽るには無理があるので、こいつを植物性の、しかも需要のある小麦グルテンや米グルテンとすればわからないだろう。そのままでは、なんなので、ちょいと小麦も混ぜればそれらしく見えるだろう、検査も米国で用途は犬猫用だというから、ヒトの食品のそれよりも大雑把な検査しかされず、バレないだろうと考え、それをそのまま実行したのだ。

その際、実際に本物の小麦グルテンの粉を製造販売している会社が邪魔となる。となれば、管轄地の党幹部に賄賂を握らせて、そこを閉鎖させてしまえ、となった。この事件についての取材では、他社よりも一歩も二歩も先を行くサクラメント・ビー紙(以下、SB紙)の記事によると、そういう状況だったらしい。そして、後になってわかる事なのだが、汚染というよりは偽小麦グルテンの輸入元の商社、納入先でありペットフードの製造元であるMF社、そして信頼のブランドを保有する販売元の大会社のいずれも、それを原料や製品段階で細かくチェックしていたところはなかった。彼らの底流にあるのは、「たかがペットフード」という考えであり、要するにタカをくくっていた傲慢さがあったのだ。

けっきょく、米国やカナダのペットの飼主である消費者の次に、あるいは同時期かそれよりも若干早い時期の、憂うべきコトが起きていることに気づいていたのは、製造元のMF社、そして自社製品を与えて安全性をチェックするための犬猫を飼育する部所のあるメジャー・ブランドを保有する大会社の担当者だけだった。「えっ! メーカーのMF社も気づいていたのか?!」と思われる皆様、どうやらそうだったらしいのだ。ペットの不具合に飼い主たちが気づいていた頃には、MF社だけでなく、中堅以上のブランドで自社内に動物実験施設を保有していた会社の現場担当者たちには、既知のことだったのだ。

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閑話休題。リコールされるのはペットフードだけでない。絶対量で言えば、ヒト向けの家畜や家禽ミートのほうが、はるかに多い。このTボーン・ステーキは、本来ならばスーパーのヒト用の肉売場に置かれるはずのものだった。それが、この通り、犬を意味するCanineをもじったK9用というレッテルを貼られている。なぜかといえば、このステーキ肉が枝肉にされた処理工場の衛生状態が劣悪で、食中毒を発生させる恐れがあるとされたからだ。犬や猫の胃液は強力で、ヒトがバタンQとなる菌でも平気で消化してしまうのだ。

たとえ自社ブランドの製品の安全性の確認のために飼育されているとはいえ、現場の担当者たちも人の子、そんな供与実験用の犬や猫たちと毎日顔を合わせていれば、情が移る。ある意味、きちんとしていないとマズイので、散歩なんかにも連れ出すし、同ブランドのおやつなんかも与えるので、製品が安全であれば、犬猫好きにとっては天職のように思える職場だ。ところが、実際はそうではない。雲の上、あるいはそこまでいかない高みから、犬の肝臓の具合を調べよという命が下れば、現場に詰めている獣医師は、躊躇なく犬や猫を開腹し、それを調べて報告を上げる。その際、その犬なり猫が回復するような配慮がなされるかどうかは、その会社の方針なり「徳」による。

しかし、そんな徳なぞないのが現状だ。そこにいる犬や猫は、牛や羊、豚やラットと同じ扱いを受けている。そんなワケで、07年の事件当時、その状況に疑問を感じた現場から内部告発の映像が流失した。末尾にあるのは、YouTubeでも見られる、その映像そのものだ。心臓、気の弱い方は見ないほうがいい。しかし、信頼のブランドとされる大看板の裏で実際どのようなことが起きていたのか、起きているのかを知っておきたいという方は、覚悟を決めてからご覧いただきたい。ボクは見た。スミレの具合が悪くなり、とにもかくにもその原因として考えられる情報をと思い、必死でネットを検索していたときにそれを発見した。そのときのショックと怒りを忘れることはないだろう。

話を事件に戻すと、結果として、陰の大メーカーにリコールの届け出をせざるを得ないプレッシャーを発生させたのは消費者の力だった。有名ブランドを保有、製品の販売をする大会社の、雲の上にいる担当役員はしつこく言うが、「(たかが)ペットフードのことなんだろう?」と言って、タカをくくっていたのだ。彼らは当初、そこまで騒ぎが大きくなるとは予想だにせず、眼下で起きている事態に真剣に対処しようとも考えてすらいなかった。これが超のつく巨大企業の、まるで雲の上にいて眼下の世界を見ている経営幹部たち特有の(雲の)上から目線だ。地上の出来事にピントを合わせるのに時間がかかるのだ。

彼らは、日本の、サラリーマンの成れの果てである経営陣とは人種が異なる。最初から経営のプロとしての道を歩み、社内の出世階段を上がってくる会社スゴロクのマス目を歩んできていない。彼らは最初から企業経営というチェスのプレーヤーなのだ。無論、中には人間に対する理解ある、いわば徳のある人もいる。しかし、それは少数で、経営のプロほど、この上から目線の傾向が強い。彼らにとっては、株価と株主対策がすべてであり、それ以外のヒトとモノは、そのためのゲームのコマでしかないのだ。

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ようやく汚染されていた「毒フード」の裁判がはじまったことを報じるオンラインの愛犬新聞のDOG NEWSの12月3日付版である。発生以来3年を超す年月を経て、ようやく原告と認定され、訴訟を起こす事を認められた裁判がはじまったのだ。しかし、これが短期の示談による決着となるか、メーカー側のカネに物を言わせての長期戦となるかは、まだ見通しが立っていない。しかし、ようやくはじまったのだ。無論、被告であるメーカー側の代理人は、カネ食い虫の、しかし凄腕の弁護士たちばかりだ。

消費者のことを第一に考えなんてことは2の次。それは担当部所とそこの長のケアすべきことであって、そこから先については数字しか必要とされない。ある意味、それは植民地や占領下の国の政治の世界に似ている。選出の票を投じるのは母国の株主(=国民なり政府)で、あり、彼らの発する言葉は、政治家や官僚、そして広告代理店の営業職のようなもので、それをそのまま受け止めてはいけない。というか、なにを言っているのかわからないことのほうが多い。もうのらりくらりの世界だ。

フジTVの買収作戦で演じられた村上ファンドとライブドア、そして迎え撃つフジTVの攻防のことを憶えておられる方も多いと思うが、あのときの村上ファンド代表の村上、ホリエモンを含むライブドアの経営陣を見て、そこに人の徳を感じた人はいなかっただろう。ボクは、ホリエモンという人間にはまったく興味がない。しかし、しかるべきときに「嫌い」という理由だけで最低限のドレスアップをすることもできず、さらに、仲間内か、自分と同じ思考回路の人間以外の理解は一切考えない、そんな態度を見ていると、その神経のあり様を疑う。成功すればなんでも許されるワケではないのだ。

ペットフードのメジャー・ブランド保有会社の経営陣、そしてMF社の本件に対する発言の数々は、まさにノラリクラリで、言語明瞭なれど意味不明瞭だった。日本の政界、官界にもその典型があった。それは2001年の1月まで存在した「影のエリート官庁」とも、各省庁から上がってきた書類をホチキスでとめるだけの「ホチキス官庁」とも呼ばれた総理府の外局であり、中央省庁のひとつでもあった経済企画庁だ。そこが発表していたレポートは、どの省庁を名指しする事なく、また傷つけまいとする配慮により、なにを言いたいのか、素人にはまるでワケがワカラン内容だった。それをバカな国民に代わって意訳してくれるのは新聞であったり、テレビのニュースに登場する経済評論家であったりしたのだが、その言語明瞭にして意味不明瞭な内容は、外には向いていない内向きの最たるものであるとの皮肉を込め、永田町文学と呼ばれた。

考えてみれば、これも国民をバカにしている証左である。ちゃんと意味がわかるような内容にさせることなく放置してきた政治家の罪も重い。そして、その結果、法令の文章は、句読点の位置をちょいと変えただけで、まるで内容の異なるものとなるほど複雑化し、政治家の手に負えないものとなった。役人に骨抜きにされる、というのはそういうことだ。Aという目的のために企画され、承認されたはずの法が、できてみたらBになっていたみたいなものである。ボクは、民主党の支持者ではないが、そんな悪習を野放しにしてきたのは自民党の与党時代だったことは憶えている。それも高度経済成長なる時代の名残があったから許されてきたことなのだろう。しかし、もうそろそろ永田町の身内主義はヤメにしてもらいたいものである。

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ペットフードのメラミン汚染騒ぎは、議会での公聴会の開催にまで発展した。このとき、なぜだかMF社とその製品のOEM供給を受けていたメーカー首脳には、カメラが向けられなかった。ただ声がするだけという異様な中継だった。上の写真の左は、缶入りのMF社製ドッグフードを手に質問中のディック・ダービン上院議員(イリノイ州選出の民主党員だ)と、まるで役に立っていなかったご存知AAFCOのエリック・ネルソン局長だ。AAFCOは、ペットフードのパッケージに必ずと言っていいほど印刷されている米国の飼料検定協会だ。FDAが事前検査してないなら、なんであんたのところがそれをやってないのよ。この公聴会も歯切れの悪い答弁の連続であった。

ペットフード・ブランドから発せられた事件に対するアナウンスも、想像に難くない通り、法務担当者と顧問弁護士たちのフィルターをチェックを受けたものだ。したがってそれらは政治家の答弁書の様相を示していた。「まさか」というショックは、消費者も彼らも同じだと、平気で言い放ったところもあった。まあ、それはそうなんだろうけど、責任の所在を考えれば、そんな被害者側に立つ発言は、消費者にとっては無神経きわまりないことである。でもチェスのプレーヤーにとっては、盤面という社会と、その上に立つ消費者の発する言葉なぞ聞こえないのだ。

脱線に次ぐ脱線で申し訳ない。話を元に戻すと、事件が予想外の広がりを見せ、その驚嘆すべき規模とデタラメぶりが白日の元にさらされるや、メジャーなメディアも、これおを追うようになる。カリフォルニアの州都であるサクラメントに本社を置くSB社は、米国の一地方紙である。やれることには限界がある。そして彼らは、事件の国内での事情には他社より一歩も二歩も先んじていた。そんなワケで、ニューヨーク・タイムズ等のメジャーどころは、中国担当者や特別取材チームを編成し、中国側のコトと次第を詳報した。

その結果として判明したのは、中国で真実を明らかにすることは難しい、ということだった。問題のメラミン汚染された、というか後になって、内容のほとんどがメラミンだった小麦グルテンを製造、出荷していた農産物関連製品の会社である江蘇省徐州市にある徐州安営生物技術開発有限公司は、偽グルテン出荷の事実を真っ向から否定した。彼らは、そもそもグルテンを製造する工場を有していないし、問題の製品についても、もともと食用でない物質として出荷し、それを表すステッカーもきちんと添付していたと主張した。しかし、それらのウソは、ことごとく崩れて行った。下請けのトラック運転手は、同公司が工場を保有している事を証言し、またステッカーも、それがないと輸出検査に通らないことへの対策でしかなかったことが濃厚となった。それよりなにより、袋には、ちゃんと小麦グルテンと印刷されているのだ。


ペットフード騒動の約1年後に勃発した赤ちゃんミルクのメラミン混入事件の被害者家族だ。ご主人が手にしているのは、急性腎不全で亡くなった赤ん坊の写真だ。この夫婦は、双子で生まれた子供達に銘柄の異なる粉ミルクを与えていた。その理由は、何かあったら大変だからだ。そして、その大変なことが実際に起こったのだ。中国政府の面子は丸つぶれである。もはや、あの国の拝金主義の内情は、政府でも管理できないレベルにまで達しているという事だ。

ことが中国国内で、しかも地方の腐敗した党幹部もからんでくるとなると、それはもうシンプルなことではなくなり、複雑な政治問題へと変わる。第一、農産物関連製品の商売胃をする会社がなんで多量のメラミンを出荷するのか。しかも、同公司は、工業界社からタダ同然で払い下げられた大量のメラミンを在庫していたのだ。バツが悪いことに、それを記録した書面が見つかったのだ。そうなると、もう尖閣諸島の騒ぎではないが、中国は自分たちに都合の悪いことを政治問題化させる名人でもあるので、コトは複雑化するばかりの様相を示してきたのだった。

そんな泥沼となったその後をはしょってお伝えすると、中国はペットフードやその他の中国製品と国のモラルに向けられる懐疑の視線を振り払うことに必死となっていた。なにせ、根拠なしに、とにかく中国が一番という中華思想なる思想のある国だ。メラミン利権というものがあるのかどうかはともかく、その恩恵に預かる一部の党幹部は、国際世論なぞ、どこ吹く風と一向にメラミンを食品や飼料に用いることの問題点を認めなかった。中国政府は、そんな一部の勢力を抑え込み、思い切った処分を行なった。それは、国家食品薬品監督管理局という中国のFDAの元局長による、邦貨にして1億円近い薬害もみ消し事件の収賄容疑に端を発したものだった。

ああ、恐ろしや。中国内の拝金主義は、自国民のための薬害までをも引き起こしていたのである。その元局長は死刑判決を受け、製薬会社のCEOは自殺し、デタラメな薬で多くの命が失われた。そしてそのついでとばかりにメラミンの不適切な使用容疑者も数多く摘発された。実際、この元局長以外にも、その家族が信じられない巨額の賄賂を受け取っており、その総額は、元局長ですらわからないそうだ。かくして中国には、新たな食品と医薬品のリコール制度が発足した。そして米国で露見した、小麦グルテン実はメラミンの一件は、中国ではウヤムヤとなった。しかし、その2年後には、赤ちゃん用のミルクい同じメラミン汚染が起き、死亡者まで出るに至ったのだ。中国の闇は深い、と言わざるを得ない。

一方の米国では、事件のおかげで法的な不備も次第に明らかとなっていた。まずはFDA管轄の法である連邦食品・医薬品・化粧品法/FFDCAによると、ペットフードもヒトのそれと同じく、清潔で危険な物質を含まず、ラベルに事実・真実が記載されていることを含む全体的な安全性を求めている。しつこいようだが、これはれっきとした全米をカバーする連邦法だ。なのに、FDAは、ペットフードの出荷前の事前検査を義務化していなかったのだ。この法の盲点というか、ほころびは、同法が1930年代に改正されて以来、ノータッチであったことによる。日本と同じく、悪党による悪辣な所業がどんなものになりうるかの想像力のない立法であり、現代の状況には、まるで対応できていないのだ。となると、そう、メーカーの法的責任は、実にかぎられたものとなってくる。腹立たしいこと、このうえないが、そうなるのだ。

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上の左はFDAにおけるメラミンの検出作業のひとつで顕微鏡によるそれだ。メラミンは、その検出を短時間にピンポイントで行なうのが難しい。それゆえに簡易検査法なる、窒素量の検出だけで済ませてきたところにメラミンの悪用を許す穴があったとも言える。右は、顕微鏡で発見されたメラミンの結晶だ。こいつがタンパク質と勘違いされるのだ。

ある意味、法治国家における限界である。しかし、強力な動物愛護団体であるPeTAがこれに噛み付き、法改正と同時にFDAの責任者の解任を求めた。このPeTAとは、People for the Ethical Treatment of Animalsの略で、言ってみれば「動物の倫理的扱いを求める会」となる。このPETAというグループは、その崇高な目的をもちつつも手荒いこともいとわない面があり、動物擁護過激派と呼ぶ向きもいる。毛皮のコートを着用している人にペンキをかけたりする騒ぎやパフォーマンスを行なうことでも知られている彼らだが、それとは別にFBIにテロリストと認定されている動物解放戦線のパトロンとなっているとも言われている。

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これはPeTAのデモ活動の一例だ。カゴの中にいる黄色いビキニ姿の彼女たちは鶏を表しているようだ。胸にあるカードには「卵を得るため、ヒヨコ(女の子という意味のスラングでもる、つまりが鶏だ)たちは、病んでいる」つまりが「病んだ飼育環境下にある」と訴えている。

こうなると、これを機会にと目立とうとするのは、政界に身を置く人間の性で、それは洋の東西を問わない。議会では、FDAを含む関係者を集めての公聴会が幾度となく開かれ、コトがコトだけに民主党も共和党もない超党派で状況の改善に努力しようとした。無論、中には、その尻馬に乗って、そのフリをしていた議員もいて、それは共和党員だった。やっぱりね。現在、この事件を発端に、ようやく80年近く手を付けられていなかったFDA管轄の各法律に手が入れられようとしている。換言すれば、まだ改正されていないのだ。その中で注目されているのは、ペットフードの安全性を確保するための定期的な検査や品質管理を義務化することだ。そして、このことは事件が風化しはじめると同時に、財界の味方である共和党員たちが足を引っ張るようになってきている。そんなワケで、FDAはメーカー申告によるリコール銘柄を発表することはしているが、事前の安全性確保まではできていないのが現状なのだ。

この事件は、掘っても掘っても終わりが見えて来ない、根の深いものだ。実際、中国政府と中国のFDAは、事件の原因となった小麦グルテンが中国内で生産され、出荷されたことを認めていない。にわかには信じ難いが、その姿勢を貫いている。そして、原因究明のための調査団の入国ビザの発給をも拒んだ。その後に同じ事が赤ちゃんミルクの製品で起きたのだから、何をか言わんやである。中国は面子を潰し、そしてまたも死刑判決を受けるモノが出てという、お決まりのパターンとなった。思うに、中国はもはや共産党だけではコントロールできない状況になっているように思える。ちなみに、中国政府は最終的にFDAの調査団にビザを発給した。彼らにとってもどう手を付けていいのかわからない状況となっていたのだろう。でも日本に対してだったら、断固拒否したはずだ。

それはさておき、米国内において、この事件が残した数字を挙げてみる。まずはFDAに寄せられた問い合わせと苦情の数、1万5千件以上、メニュフーズ社のほか、中国製の原料によるメラミン汚染の認められたペットフードのブランド/製品の数、130以上。 汚染ペットフードによる死亡例、文字通り数えきれず。なんとなれば、確実な死亡要因として認定するには、解剖の上、腎臓のサンプル検査を行なう必要があったからだ。とはいえ、リコール前の出荷数とリコール後の回収された製品数の差は、死亡例が1万を超えたとしても何ら不思議はないまでになった。

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命を落とすことはなかったが、その後もいまに至るまで、メラミン汚染フードによる腎不全の後遺症と戦っている犬たちもいる。左のベンは超のつく大型犬のグレートデインで、写真は透析治療中のところだ。平均寿命が短いグレートデインにとって5歳はシニア期ともいえる。だが、長い闘病のせいか、もうすでに老境に至ったように見える。右は、離乳期にメラミンたっぷりのフードにヤラれたヨーキーことヨークシャーテリアのペブルズだ。ペブルスは、まだ発症する前の段階で飼主が気づき、ことなきを得たが、それでもそうなりに食してはいたので、後になってから腎臓の不調に悩まされている。法の不備を知る教訓としては、あまりにも高くついた代償だといえよう。

最後に、実に後味の悪い結末となるが、この騒ぎはまだ決着を見ていない。飼主である消費者によるMF社とペットフード・ブランドへの集団訴訟は、それこそ数えきれないくらい行なわれているが、示談なりの決着を見ているものは、わずかだ。その後のブッシュ政権時代のツケとして起きた経済危機や、一向に改善されない失業率等々の問題を抱え、なおかつ中間選挙で大敗を期した民主党オバマ政権にとって、ペットフード問題たるや、二の次、三の次の課題である。太平洋のこっち側の日本においては、ようやく昨年になって、ペットフードの安全確保のための法が施行された。とはいえ、日本のフード業界の世界も相当に怪しい面がある。その点については、証拠と資料のプールがある程度たまってきたところで取り上げるつもりだ。

最後の最後に、本件についてひとことだけ申し上げたい。昨今の食品関連の報道の数々を見るかぎり、コトは、ペットフードにとどまる話では、すでになくなっている。ヒト向けではない、ペット用のフードであるからと、無茶がまかり通ってきたのは、何も米国だけではない。しかも、それはヒト向けのものにまで及んでいる。牛の飼料に牛の肉骨粉を配合したことで発生したBSEなどは、日本人が大好きな英国発のものだ。相手先ブランドで製造する無名な、しかし規模の小さくないメーカーは日本にも存在するのだ。

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ボクも大好きだった英国チョコレート界の雄、キャドバリーである。口溶けがよく、味わい深いことでは、米国のハーシーがワックスに思えるくらいの美味しさだと思っていた。ところがショックなことに、同社のチョコレート製品(無論、ヒト向けだ。同社は犬猫用のそれは製造していない)からもメラミンが検出されたのだ。その原因は、どうやらメラミンを含む乳牛用飼料にあったとされている。ファンとしては悲しくも残念なかぎりだ。

それは主食たるフードよりも、トリーツとも呼ばれるおやつ類の製品の中で目立たないが、しっかりと存在している。あるブランドのおやつを食べさせたとたんに、愛犬のシーズー3頭の具合がおかしくなった例もある。メーカーであると信じて袋にあった番号に飼主が電話を入れるや、その会社とは所在地も名前も異なる某メーカーから慌てた声で電話がかかってきたというから、日本も米国を笑うことはできない。愛犬や愛猫、はたまた愛鳥や愛亀等々のペットたちに何を与えるかは、飼主次第なのだ。

次回は、米国のペット大量死事件を引き起こしたメラミン汚染関連事件の番外編をお送りする。今回の3回シリーズをお送りするにあたっては、本稿でも触れたが、ニューヨーク大学のマリオン・ネスル博士をはじめとする、多くの方々の助力を得ることができた。次回は、07年に起きた事件の前後に、まるでその予兆とも思えるように起きた事件や、事件を契機に起きたさまざまな動き、言ってみれば飼主や動物学者たちの間ではじまったムーブメントについてをお送りするつもりだ。その中で、ネスル女史の著した名著や、泣く子もだまるコーネル大学の動物栄養学博士との共著による最新刊についても触れる予定だ。

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マリオン・ネスル博士とかつての愛犬のマディソンくんである。「かつての」と言うのは、この写真がけっこう前のものだからだ。いまの女史は、顔はそのまんまで髪だけグレーになっている。切れ味鋭く、さっぱりとした男勝りのレディである。協力のお願いメールを出したら、返信と共に、急にネット電話のスカイプをかけてきたときはビックラこいたボクであった。テレビ電話だったのでスミレを登場させたら、彼女は大喜びしてくれた。"I like your dog!"だそうである。

注意:
文中でも触れたが、下の映像は、気の弱い方、心臓の弱い方には、見る事をオススメしない。でも、愛犬家、愛猫家として覚悟をもちたい、事実をしかとこの目で見ておきたいと思われる方は、気をしっかりと持って見ていただきたい。この映像は、幾度となく第三者の手によって削除されつつも、事件を風化させてはならないと思う人たちの手によってネット上のあちこちで見られるようになっているものだ。これは事実の記録なのだ。

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毛沢東主義の読者がいたとすれば申し訳ないが、これはあまりにも悪どい偽小麦グルテンを平気で輸出していたのを黙認していたと同時に、それが国内の食品工業界にまで出回らせ、国の宝でもあるはずの赤ちゃんを死に至らしめたことに抗議した、立派なパロディ・アートなのだ。だからこれを見て怒りを感じた方は、どうぞアートの下にあるURL宛に抗議していただきたい。何のパロディかは、全米酪農家協会の名物広告の Got Milk ? というキャンペーンのそれだ。このキャンペーンには、各界の著名人、セレブたちが無償で出演していて、このキャンペーンに起用される事が名誉とされている。さらに、中国政府は、自国内の化学製品工場で廃棄物として出るメラミンの処理に困り、その再利用法の創出もできるかと起業家たちに大量に供給していたのだ。そんな背景については本文に記した。下は、その有名なGot Milk ?キャンペーンに登場した、X-MENのウルヴァリン等で知られる歌に踊り、映画、舞台と何でもござれの俳優、ヒュー・ジャックマンだ。Got Milk? の特徴は、各界の有名人がミルクを飲んだばかりであることが口を見てわかると言う設定になっている。ボクは、彼を銀座で目撃した事があるが、男でもシビレる長身の実にカッコイイ二枚目だった。X-MENのウルヴァリンの爪が見えるから、映画のプロモーションの際のものだろう。ところで、日本では、これを真似て(社)中央酪農会議というところが「牛乳〜に相談だぁ」というCMをやった。そのまんまGot Milk?でやれば一番売りたい世代にウケたのにな、と思うのはボクだけか?

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いまからほぼ4年前、2007年1月上旬の某日のこと。ミシガン州シカゴに住むエリン・バウコウスキさん(67)は、愛する猫のタミーの調子が何だかおかしいことに気づいた。ミシガン州の冬は寒い。エリンさんの住むシカゴは、ときに零下20度を下回ることもある酷寒の地だ。シカゴは全米有数の大都市で、アールデコ華やかりし20年代にその最盛期を迎えている。だから、ニューヨークに負けないくらいアールデコの建築や意匠が街のあちこちにあふれている。酷寒の地でも、そこに人々が集い、居続けているのは、水源としての巨大な湖があることに加え、元々が農民が多い地域でもあったからだ。

それはさておき、酷寒の地なので、冬場になるとタミーは暖炉の前から離れない。しかし熱くなれば身体をゴロンとさせたりして自ら体勢を自然に変える。それが子猫から10年間、暮らしを共にしているタミーの冬の間のいつもの光景だった。そんなタミーが、暖炉の熱で背中が熱くなっても、なかなかゴロンとすることができない。さわってみると、暖炉側に向けていた背中は燃えるように熱くなっている。それでもタミーは身体をもだえさせるだけで、いつものようにゴロンと身体の向きを変えることができない。よく見ると苦しそうな表情もたまにだが浮かべている。

エリンさんは、さっそく獣医に診察の予約を入れた。酷寒で路面が凍り付くシカゴは、クルマで出かける事はリスクが高い。フリーウェイでの玉突き衝突の報せは、朝の交通渋滞情報では毎度のことである。初老で足の具合も少々悪いエリンさんにとって、それはなおさらだ。しかし、ご主人に先立たれ、子供たちも独立して家を出ている彼女にとって、タミーは毎日の生活を共にする家族も同然だ。幸い、かかりつけの獣医師のところまでは、フリーウェイを利用する必要はない。

彼女はふと、もしや食べ物が原因ではないかと思った。Fという缶詰のフードは子猫時代から与え続けていて、これまでに何の問題もなくきていた。しかし、第六感か、何かが気になった。そこで、ゴミ箱から缶をひろい上げて手に取ると、そこにあるメーカーのカスタマーセンターのフリーダイヤルにかけてみた。しかし、かけどもつながらない。幾度となくかけてみても「回線が混み合っているので、おかけ直し下さい」の自動音声が流れるだけである。イヤな予感がはいよいよ増してきた。ことによるとフードが原因であるとの不安は、的中しているのかもしれない。そう思うや彼女は、防寒具に身を固めると、クルマのキーを手にして外との気温差がさほどもない寒いガレージへと向かった。万が一のことを考え、タミーのために別なブランドのフードを買っておかなければと思ったのだ。

同じ頃、タミーが長いあいだ食してきた歴史あるFブランドの缶入りキャットフードのカスタマーセンターのオペレータたちは、鳴り止まない電話にてんてこまいの状態となっていた。別会社のプレミアム・ブランドやスーパーのオリジナル・ブランドのフード商品のカスタマーケアのサービス係も同様の状態にあった。そして彼らは、きちんと決められた手順通りに先方の名前と住所、電話番号を聞き、相談内容をメモし、これまた会社側の用意したマニュアルの手順通りに応え、最後に顧客の手元にあれば、缶のラベルに印刷されているシリアルナンバー等の情報を読み上げてもらい、それを目前のコンピュータに入力した。そして受話器を置くと、それらの情報をそのまま、次の担当部署へ送り、すぐさま点滅する電話のボタンを押し、次の客の対応にとりかかった。

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エリンさんとこのタミーが約10年間食べ続けた信頼のブランド「F」のキャットフードがこれだ。ここにその問題の根深さというか、業界の闇の部分が垣間見え、そら恐ろしくなってくる。ブランドとは一体ぜんたい、なんのためのモノなのだろうか? それは信頼に足るイメージの象徴でなければならないはずだ。なのに、それがいとも簡単に裏切られたのだ。無名のショボいメーカー製の廉価品ではなかった、となれば、いったい消費者は何を信用すればよいのか? ブランドを保有する会社は、いったいどういうつもりであったのか。

名の知られたペットフード・ブランドを保有する大手は、たいていの場合、犬猫両方のフードのラインアップを擁している。そんな彼らの多くは、自社ブランドの製品を必ずしも自社工場で生産しているワケではない。製品開発のための研究室や、毎日、自社なり下請けの工場で大量に生産される自社ブランドの製品を与え、問題がないかどうかを見るための犬猫の飼育実験施設を保有しているところもある。だが、いずれもアウトソーシング、つまりが外注の下請けに任せっぱなしというヒドイところもある。中には、カスタマーケアの部門さえ外注に出し、お客がかけた先がインドの某所だったなんてことも、いまでは珍しくなくなっている。

このように、同じ時期に、100に近いブランドのカスタマーケアの電話回線がパンク寸前となった。大手のペットフード・ブランド保有会社にとって、それは、数ある彼らの手がける製品分野の一部門にしか過ぎない。彼らのほとんどは、世界を商圏にしている巨大企業で、ある会社はチョコレート、ある会社は乳製品と、それぞれが中核とする食品企業であったり、女性用品や洗剤等の家庭用品がメインの会社だったりする。そういった企業の規模はすさまじく、言ってみれば巨大な草食恐竜のようにも見える。主たる頭脳のある首の先の頭は雲の上にあり、地に付く足や尻尾の先との間には、かなりの距離がある。足の裏や尻尾の先で感じた事が神経を通じて脳に届き、それなりの反応が起きるのに時間がかかることは珍しくない。だが、痛みとなると話は違う。雲の上で判断されたことが下部に届くまでには、さしたる時間はかからない。

そんな組織でも、連日電話が鳴り止まない下界での異常事態には、それなりに反応する。カスタマーケアで吸い上げられた情報は、次なる部所へと報告され、それは製造管理部門へと伝えられた。これは、それらすべての企業においてはどこも同じである。そして各社の製造管理部門なり、商品管理部門が調べたところ、報告された製品のシリアルナンバーは、すべてカナダのオンタリオ州にある下請けのOEM専門のフードメーカーから納入されたものであることを示していた。その情報は、すぐさま雲の上に報告書されていた。しかし、その書面は、他部門からのものも含む書類の山の一部と化してしまい、それはブランドによる初動態勢の違いとなって現われた。そして、そこから先の卸元から小売の現場に至るまでの対応は、会社の企業風土や経営者マインドによる差が大きく生じることとなったのだった。

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問題のあるフードであると判明した際に見せた対応には、企業風土が反映される。これはその中で最低最悪のケースで、米国の悪名高い巨大スーパー・チェーンのウォルマート(以下、WM)の対応だ。何と彼らは、バーコードの上にリコール品であるとわからないように異なるバーコードのシールを貼付けたのだ。WMは、創業当初から従業員の健康保険負担をしないで済むように労働時間を操作したり、出店した先では、昔からある地元の商店が廃業するまで安売り攻勢をかけ、なくなったとたんに値上げするという悪どい手法で知られ、いまでは出店先の候補になったとわかるや、地元では反対デモが起きるほど反感を買われている。資本主義としては間違っていなくても、人の道からそれた最低の行いだ。ちなみにそんなWMは、西友のオーナー会社である。

カナダは、オンタリオ州にあるメニューフーズ社(以下、MF社)は、本社の近くに4千坪、米国ニュージャージー州ペンソーケンに6千坪、っして畜産業で知られるカンザス州エンポリオにはなんと1万2千坪、と総計2万2千坪もの工場設備を所有する巨大ペットフード・メーカーである。管理部門のオフィスと倉庫設備は上記のスペースとは別にあるのだから、その規模たるや凄まじいものがある。わかりやすいかどうかはともかく、よく言われる単位でいえば、東京ドームの敷地の1.5倍だ。オフィスや原材料と完成品のための倉庫スペースを入れれば2個分くらいにはなる。そんなMF社の基本方針は、プライベート・レーベル戦略。つまりが自社ブランド製品は、一切もたない相手先ブランドの製品作りを専門とするメーカーなのだ。そして、今度は、MF社の営業本部の電話が鳴り止まなくなり、次いで本社会議室には、連日続々と取引先が押し寄せてくるようになったのだった。

MF社は、矢継ぎ早に寄せられる問題発生の報を受けるや、原材料の品質チェックをはじめた。とはいえ、できることといえば、同社に出入りする納品業者たちの尻を叩き、報告書を早急に上げさせる事だけだった。その当初において、オンタリオ本社の経営幹部たちは、大した危機感もなかったようだ。しかし、それがキャットフードでなくドッグフードへのクレームにまで達すると、ようやく重い腰を上げて同社の各工場に併設された倉庫内にある原材料の品質検査確認をそれぞれの近くにあるラボに外注した。そして、顧客から寄せられる声のトーンかた危険を感じるや、特別料金を支払って検査作業を特急仕事でやらせたのだった。

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これが化学工場で廃棄されるメラミン樹脂だ。いまのところ、ベニヤ板の化粧板やホルムアルデヒド(ホリマリン)と混ぜて食器や植物の鉢にするくらいしか用途がない。これを粉体化し、ほんの少し小麦粉を混ぜて中国のメーカーが出荷し、それがペットフードの原材料として使われたのだ。米国内での小麦グルテン生産は、せいぜいが自然食品や菜食主義者向けのものしかなく、中国産のそれに比べるとあまりにもコストが高くついた。そして、MF社のような大規模工場の求める量を確保する事もままならなかったのだ。下の写真は左から、メラミン混入食品第一号として認定された不二家ミルキーのような中国産のミルクアメだ。中央は、腎不全や他の健康被害を赤ん坊に与えた中国のサンリュというメーカー製のメラミン汚染ミルク。そして右は、同じメーカーの小麦グルテンを配合していた粉ミルクを中国内で販売していたとネスレ社製品のボイコットを訴える広告だ。

Melamine混入食品一号.jpg Melamine_milk_Sanlu.jpg nestle-boycott-formula.jpg

場所はニューヨーク州イサカにあるコーネル大学に飛ぶ。同大学は、獣医学においては全米をリードすることでも知られ、獣医学や関連することを研究調査する外郭団体も数多く擁している。同大において研究開発された医薬品や治療法には枚挙のいとまがなく、さらに同大の図書館は、動物や獣医学に関連した蔵書や資料の宝庫であることも知られている。要の東西を問わず、私立大学や研究所の多くは、大口の寄付をしてくれる個人や企業、言い換えればパトロンたちのサポートに頼るところが大きい。同大も同じで、関連するある研究所は、大手のペットフード・メーカーからの多額の寄付によって運営され、研究対象もパトロンたちから依頼されたものが多く、そのほとんどすべてに守秘義務を追わされていた。まあ、それは当然のことだろう。

トロいMF社の動きに業を煮やした大手ブランド保有企業は、ある時点で同社だけに任せる事で済ませず、独自に製品の内容成分の検査に着手した。そして、それらのほとんどあの作業は、コーネル大学の外郭団体である某研究所に依頼されたのである。それと同じ動きを見せた者は別にもいた。それは裕福なペットオーナーや特定の犬種や猫種のクラブで富裕層の会員の多いところだった。彼らは彼らでフードが怪しいと思い、それぞれが近くの信頼できる分析機関に成分検査を依頼したのだった。

かくしてNY州にあるコーネル大学系列のラボ、MF社の製造プラントのあるニュージャージー州、カンザス州、そして富裕層のメンバーのいるクラブの有志たちのいる全米各地の検査機関では、何かフードに問題があるとすれば、それは何かを究明するレースが開始されていた。一歩リードしていたのはコーネル大で、具合の悪くなった生体の診察とその後の観察記録と照らし合わせてみても、それは腎臓を直撃するものであり、結果的にそれはメラミンであろうことがわかってきた。最終的には、どこもこれはと思われる容疑者に狙いを定め、検査精度を高めての狙撃、ではなくガスクロマトグラフィによる精密検査を行なった。そして何馬身かの差はあれど、いずれの検査機関が出した答はメラミンということで一致していたのだった。

なぜペットフードにメラミンが混入していたのか? それは、その時点ではまだ謎だった。だが、それを調べるためにコーネル大系列の研究所は、コーネル大内の研究員を含め、同大出身の腎臓や肝臓に関する症状や治療に詳しい獣医師や研究者たちに検体の状態と検査結果の状況を説明し、意見を求める内容の文書をファクスで送った。情報は、それを共有する者、場所、そして組織の輪が広がれば、それだけ外部にリークする可能性が高まる。そこで、本来なら守秘義務等の確認と合意が求められるところなのだが、今回は、各方面からのプレッシャーが厳しく、そんなことをとやかく言っている場合ではなかった。そのため、案の定、この情報は外部に漏れることとなった。

ファクスを受け取ったカリフォルニア州オークランド市の獣医は、それを見て首をひねった。そして、とてもイヤな予感がした。彼は、化学工業の世界でスクラップとされるメラミン樹脂をタンパク質強化剤として飼料に利用する研究が過去に行なわれていたことを知っていた。それは悲惨な結果を生み、ダメの烙印を押され、とっくに放り出されていた研究対象だったはずだ。しかし、そんな忘れ去られたことを引っ張り出して悪用しようとする輩がいたとしても不思議はない。なんとなれば、精度の高い機器を用いない簡易検査であれば、メラミンをタンパク質と取り違える可能性が高いことも彼は知っていたからだ。そこで彼は、ファクスで送られてきた文書に守秘義務のスタンプも注意書きもないことを確認するや、それを地元紙で、硬派のジャーナリズムで知られるサクラメント・ビー紙の編集部に転送したのである。

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当たり前のことながら、カリフォルニア州の州都であるサクラメント市に本社のある新聞社、サクラメント・ビーの本社である。2007年のメラミン汚染ペットフードとそれによるペットの大量死等の報道は、ブランド保有会社やメーカーからの圧力に屈せず、ねばり強い取材を続けた同社が他社を断然リードしていた。ネスル女史というか博士によると、よくぞそこまでというくらいの取材が行なわれていたそうだ。社主の批判が実名で出ている週刊誌の広告の出稿を受けておきながら、その名の部分だけを白抜きにしたりするどこぞの大新聞とは大違いだ。

ここで時は約半世紀前の50年代の末に飛ぶ。その当時の化学界では、工業界で生み出される大量のメラミン樹脂の再利用の道が探られていた。当時の分析法でわかったことといえば、メラミンは大量の窒素が含まれている事だった。そして、それは一部の化学者たちのあいだで、タンパク質に似ていると考えられた。そこで彼らは、メラミン樹脂を加えることでタンパク質の量をかさ上げすることができるのではないかとの仮説を立てた。例えば、牛や豚の飼料に混ぜて与えれば、より多くの食肉が得られるのではないかとの考えだった。そしてそれは、60年代になってから実験され、惨憺たる結果を招くこととなった。その飼料を供与された牛や豚たちは、そのすべてが腎不全や肝硬変を起こし、死に至ったのである。当然のことながら、メラミンの家畜飼料への添加という試みは大失敗に終わり、無理であるとの烙印が押されてお蔵入りとなった。

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無味無臭。しかし体内では分解しようのないメラミン樹脂の粉である。これを小麦粉なみの細かさに粉体化し、さらに小麦粉を少々混ぜられたらあなた、それをグルテンと言われたら信じちゃいますがな。でも信じてはいけないし、メーカーとなればなおさらだ。

しかし、メラミンの再利用の研究は終わる事なく続き、今度はヨーロッパで魚の養殖用飼料に使えるのではないかと考えられた。より高度な陸上動物での失敗はさておき、水中に棲む魚であれば問題ないかもしれないと考えられたのである。しかし、ここでもその試みは失敗に終わった。メラミンを配合された飼料を与えられた魚たちは、時間差はあれど、どれもが白い腹を上にして浮き上がったのである。かくして、陸上の家畜や家禽、そして水中の魚類に対するメラミンの流用研究は終えられることとなった。

しかし、それは冷戦時代の渦中の時代の西側諸国におけることであって、共産圏である東側では、そうでなかったのだった。西側の連中が失敗したとしても、こちら(東側/共産圏)ではうまくやり遂げて、彼らを出し抜くことがえきるかもしれない...。共産圏では、往々にして対立する西側の技術を盗み、それは発展させることを得意としていた。そして、それは東側各国の共産党幹部たちのあいだでの自慢話の格好のネタにされていた。

そんなこんなで、どういう経緯か、タンパク質の代替あるいは強化剤としてのメラミンの応用研究は、当時、東側と呼ばれた共産圏に引き継がれて行った。しかしダメなものはダメなのだ。いくら色も似ていて無臭だとはいえ、漆喰をホイップクリームやケーキのアイシングに流用することはできないのだ。しかし、それは食料を供給する責を負う体制側にとっては、量をカサ増しする裏ワザとして影で脈々と受け継がれて行ったことが伺えた。パンを寄越せと叫ぶ東側各国の人民の数は億単位だ。たとえ害のないレベルであっても、それを添加すれば、かなりの量の小麦を節減する事ができた。なので、それを利用しない手ははなかったのである。

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これは70年代半ばの欧州某国において実施された養殖魚用の餌のメラミン配合実験の結果である。化学者という人種は、物質の構造式を見てモノを考える。それは別に悪いことではない。だが、その用途において、そのことに無理があるかどうかという考えについては、それが人体でのものでないかぎり、実験結果だけで判断を下すしかない。これはその結果であり、メラミンは、含まれる窒素の量からして明るい見通しがあると思われたが、そんなことはないという結論に至ったのだった。60年代に行なわれた家畜の記録資料の写真は、あまりに見ていてツラすぎるので、掲載しないことにした次第だ。

時間を2007年に戻す。取引先からのクレームと原因究明の矢の催促を受けていたMF社は、ラスベガスのケム・ニュートラ社の子会社であるコロラド州デンバーにある納品業者から、納められていた小麦グルテンが、実は小麦グルテンでもなんでもなく、8割がとこがメラミン樹脂で、残りは単なる小麦粉であった旨の報告を受けた。すべての元凶は、中国産の小麦グルテンと表示されている袋の中にあったのである。

そうとわかるやMF社は、メラミンを過剰摂取した場合に生じる身体上の問題をコーネル大系列の研究所に問い合わせ、それと同時にコロラドの商社にこれまでの中国の出荷元との取引実績と経緯の報告を命じ、最後に取引先のクライアントにことの次第の報告をした。しかし、そのときすでにサクラメント・ビー紙は、ペットフードの世界で起きている不可解な事態の基本取材を終え、その状況を生んでいるペトフードのリストアップ作業も済ませ、その調査の包囲網をMF社の周囲に張り巡らせていた。

MF社は、缶やパウチ入りの液状成分の多い、いわゆるウェットフードの専門メーカーである。そこから出荷される別会社のラベルが貼られ、ロゴが印刷された製品は、どれもデリシャス・グレイビィだとか、肉汁たっぷりという印象を与える商品名のものばかりだ。しかし、ここで、そうか、ウェットフードだし、それはあまり日本へは輸入されていなかっただろうから安心だな、と思うのは早計だ。

まず第一に、それらのメラミン入りのMF社製のウェットフードは、確実に日本に上陸していた。その証拠はちゃんとある。なんとなればFDAのリストにあるシリアルナンバーと製造年月日がプリントされた現物があるのだ、ただし、それはそのブランドの日本支社の正規輸入品ではなく、並行輸入品である。そのため、缶には、並行輸入した商社のステッカーが貼ってある。しかし、それがない日本語表示のものもあったので、正規品も輸入されていたと疑われても致し方ない。並行輸入業者がわざわざ日本表示のパッケージを用意するなんてことはあり得ないからだ。仮にあったにせよ、そうなるとそれは偽物となって、まったく別な次元の話になってくる。でも日本の場合、正規品の流通ルートは、きっちりと把握されているので、回収作業の確実さについては米国の比ではなかったはずなので、被害が広がる事はなかったはずだ。

それはともかく、より多く消費されるのはドライフードのほうだ。そしてドライフードに小麦グルテンが配合されていないかといえば、そんなことはない。実にたっぷりと含まれている。そして、それが中国産であるのか、そうでないのかといえば、賭け屋のオッズは0.1対9.9、あるいはその10倍以上のリスクでしか中国産であるほうの払い戻しを受けないだろう。実際、同じ時期に中国産の小麦や米、そしてコーン・グルテンを利用して製造していた米国のドライフードは少なくなく、それらの多くからもメラミンが検出された。ただ、ドライフードのほうが話題にならなかったのには理由がある。

ドライフードの製造は、米国の先端を行く製品の場合、まずは荒めの粉体状の穀類を水で練り上げる事からはじまる。このときある温度調整をしつつグルテンの発生を促すのだが、そのためには、ほんの少しでも油分が入っているとそれができなくなる。このときに高温処理後の栄養損失の補填のためのグルテンを混ぜるのだが、メラミンだと親水性に問題があり、うまくまとまってくれないのだ。しかるに、そんな材料は、製造時にダメとなり、そんなことが続けば納品業者は、事前の内容検査をするようになり、したがって求められる品質の小麦グルテンが納められることとなる。よって、ドライフードの汚染は最小限に抑えられた。とはいえ、実際に汚染されたものもあって、それはそれで故意かどうかはともかく、並行輸入業者と彼らに商品をオファーするブローカーたちを通じ、それらは世界中にばらまかれた。

ここで興味深くも恐ろしい話がある。2009年1月、アルゼンチンの港湾のコンテナヤードに、誰も受取りにくる気配もなく、また送り状も船荷証券もないまま、なぜかそこに日光の直射を受けたまま2年近く放置されていた40フィート・コンテナがあった。海上輸送に用いられるコンテナには、大きく分けて二つのサイズがある。小さい方というか、短いほうが全長役6mの20フィート。そしてその約2倍の12m強ある長いほうは40フィートと呼ばれる。引き取りが遅れたり、来なかったりで放置される区域に置かれたまま2年弱、ようやく港湾当局が、その封印を破り、くだんの40フィートの中身の検査をすることとなった。コトによっては麻薬がらみということもあるので、当局は、それを慎重に行なった。

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幅約2m、高さは種々あるが、大体2.2m〜2.5mで長さは12m強ある。そんな40フィート・コンテナにペットフードが満載され、約2年間もの間、直射日光の下に置かれっぱなしだったのである。添付されていたメモによれば、メラミン汚染のことがスキャンダル化し、それで引き取り手のなくなったコンテナが流れ流れてアルゼンチンのコンテナヤードに放置されていた、ということだ。しかし、賞味期限内であったこと、そしてパッケージには何ら問題ないということで、捨て値とはいえ、ブローカーに売却されたというのだから驚く。

コンテナの中にあったのはなんと、日本でも知られる米国製一流ブランドのドライ・ドッグフードで、その製造日時は、2年ほど前の2006年11月。そして賞味期限はといえば、まだ切れていなかった。荷主不在で当局に応酬されたそのフードは、まだ多少の商品価値があろうということで競売に付され、どこかのブローカーが捨て値で買い受けて行ったそうだ。無論、それがどこにどう流れたのかについては、誰も知らない。ところで、MF社が取メラミン汚染された小麦グルテンを用いての製品製造をはじめたのは2006年11月からであることがわかっている。コワイ、コワイでは済まされないが、ことによると、コンテナ内にあったフードは、ドラム缶等の別な容器に移されて動物園や養豚場等の施設に売却されたのではないかと目されている。

メラミン汚染ペットフードに話を戻すと、いよいよもってコトここに至り、MF社は米国FDA/米国連邦食品医薬品局にリコールを通じて発表した。それは2007年3月16日のことであり、同社のプレスリリースおよびFDAの発表によれば、それらは2006年12月3日から 2007年3月6日まで、同社のカンザス州およびニュージャージー州の工場で生産された大方のドッグフードおよびキャットフードであり、その総数は1,600万食分であった。 しかし、後になってこの日付は二転三転する。なんとなれば、06年11月に製造された製品からもメラミンが検出されたからだ。さらには、同じ製造期間の一時期に製造された製品の中からは、殺鼠剤までもが検出されたのだった。もう一体全体なんなのよ、である。

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MF社製ペットフードのメラミン汚染騒ぎとペットの死亡が各地で報告されるや、全米のペットオーナーたちはパニックに陥った。それはそうだろう。どこぞの名も無き安物から超のつくプレミアム.ブランドまで、その中身がすべて同じものだったというのだから。そんなワケで、米国各地の新聞の社会面では、このように手作りフードを実践しているペットオーナーの記事に人気が集まった。この動きは、極東の地でもあった同種の運動を勢いづけ、その結果として、手作りフードのトンデモ本や雑誌記事が乱発するようになった。ボクは、スミレのためにと、それらのほとんどすべてに目を通した。中には一本スジの通った著者と内容のものも見受けられたが、多くはまさにトンデモ本と呼ぶに相応しいものだった。そういう本ほど、オシャレな編集がされていて、ペットへの幸福よりも、飼主の愛情を重視した妙な内容となっていた。いずれにせよ、この記事の写真にあるオーブンで焼かれたものも、犬が喜んで食べるかもしれないが、彼らの身体にいいものかどうかはまた別問題だ。

かくしてMF社のメラミン汚染のドンチャン騒ぎがはじまった。そして、最終的にその原因が中国産の小麦グルテンにあることが判明し、発表されたのは、リコール届出から2週間後の3月30日になってからだった。このことを含め、メラミンは人間用の食品にも混入している疑いがあると報道したのが先のサクラメント・ビー紙だった。FDAは即時に否定していたが、米国ではなく中国では、すでにそれが起きていることが後になって判明する。そしてそれは、赤ちゃん用ミルクというあってはならないレベルにまで広がり、中国の節操と倫理観のなさを世界中に印象づけることとなったのである。

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スーパーから続々と撤去されていくMF社製のペットフード。ところが、中には撤去するふりをして、実際はバーコードのシールを上に貼り直して店に出していたという、消費者不在の浅ましいチェーン店もあった。それは、ここでは言えないけれど、どっかで言ったような記憶はあるな。さらに言えば、そのチェーン店は、実際に販売してしまったと賠償金を請求したが、バーコードのシールのことが露見するや、それを店長のせいにしたそうだ。資本主義にも最低の倫理観がないとかくも浅ましくなるのだ。初心忘れてナントヤラではなく、そのチェーン店は、創業者からしてそういう精神だったのだから、ある意味、初心貫徹の見事なまでの企業風土である。下は、同じく売場から撤去される赤ちゃんミルク製品@中国の某スーパーである。

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さて、次回の最終回では、その後の事件の経過、そして今日に至るまでの同事件が引き起こした結果についてをお届けする。そこには、まだ漠然とした疑問や謎も少なからずあり、その後の手じまいがどうなったのかも、日本では報道されないままに終わっている。いまや米国では大手ペットフード・ブランドは、犬猫のレスキュー活動、そしてレスキューされた動物たちのいるシェルター施設への寄付やふーどの無償支給といった慈善活動によって、イメージの回復にやっきだ。きちんとした報道はされねど、口コミをバカにしてはいけない。日本における彼らの保有するブランドのフードの売上げは、経営陣が思うように伸びていないようである。そのせいか、米国と同じ慈善活動販促を早々にはじめたブランドもある。しかし、それとて日本における捕獲された犬猫の殺処分の反対運動に与したものであろうことも考えられる。

最後に、以下に2007年当時、FDAから発表された中国製メラミンで汚染され、市場で販売された製品名のリストを記した。そのほとんどは、MF社の製造したウェットフードだが、一部にはドライフードも含まれている。それらのブランドを見て、皆さんはどう思われるだろうか。ブランドとは一体なんなのかが再考されるところだ。


FDA/ Melamine Recall List 2007
(内は汚染小麦グルテン以外で検出されたもの)

◯Dog Food Recalls /ドッグフード
ALPO
Americas Choice, Preferred Pet
Authority
Award
Berkley & Jenson (サルモネラ菌)
Best Choice
Big Bet
Big Red
Bloom
Blue Buffalo (汚染米グルテン)
Bruiser
Cadillac
Canine Caviar Pet Foods (汚染米グルテン)
Champion Breed Lg Biscuit
Champion Breed Peanut Butter Biscuits
Co-Op Gold
Companion
Companion's Best Multi-Flavor Biscuit
Compliments
Costco/Kirkland Signature (汚染米グルテン)
Demoulas Market Basket
Diamond Pet Food
Diamond Pet Food (汚染米グルテン)
Doctors Foster & Smith
Doctors Foster & Smith (汚染米グルテン)
Dollar General
Eight In One Inc (サルモネラ菌)
Eukanuba Can Dog Chunks in Gravy
Eukanuba Pouch Dog Bites in Gravy
Food Lion
Giant Companion
Gravy Train
Grreat Choice
Hannaford
Happy Tails
Harmony Farms (汚染米グルテン)
Harmony Farms Treats (汚染米グルテン)
Health Diet Gourmet Cuisine
Hill Country Fare
Hy Vee
Hy-Vee
Iams Can Chunky Formula
Iams Can Small Bites Formula
Iams Dog Select Bites
Jerky Treats Beef Flavored Dog Snacks
La Griffe
Laura Lynn
Loving Meals
Mars Petcare US Inc (サルモネラ菌)
Master Choice
Meijer's Main Choice
Mighty Dog
Mixables
Mulligan Stew Pet Food (汚染米グルテン)
Natural Balance (汚染米グルテン)
Natural Life
Natural Way
Nu Pet
Nutriplan
Nutro
Nutro - Ultra
Nutro Max
Nutro Natural Choice
Nuture
Ol' Roy
Ol' Roy 4-Flavor Lg Biscuits
Ol' Roy Canada
Ol' Roy Peanut Butter Biscuits
Ol' Roy Puppy
Ol'Roy (サルモネラ菌)
Ol'Roy US
Ol'Roy US (サルモネラ菌)
Paws
Perfect Pals Large Biscuits
Performatrin Ultra
Pet Essentials
Pet Life
Pet Pride / Good n Meaty
Petrapport Inc. (サルモネラ菌)
Presidents Choice
Price Chopper
Priority Canada
Priority US
Publix
Roche Brothers
Royal Canin (汚染米グルテン)
Royal Canin Veterinary Diet (汚染米グルテン)
Save-A-Lot Choice Morsels
Schnuck's
Schnucks
Shep
Shep Dog
Shop Rite
SmartPak (汚染米グルテン)
Springfield Prize
Sprout
Stater Brothers
Stater Brothers Large Biscuits
Stop & Shop Companion
T.W. Enterpriese (サルモネラ菌)
Tops Companion
Triumph
Truly
Weis Total Pet
Western Family Canada
Western Family US
White Rose
Winn Dixie
Your Pet

◯Cat Food Recalls /キャットフード
Americas Choice, Preferred Pet
Authority
Best Choice
Blue Buffalo Co (汚染米グルテン)
Cats Choice
Co-Op Gold
Companion
Compliments
Demolulas Market Basket
Demoulas/Market Basket
Despar
Diamond Pet Food (汚染米グルテン)
Doctors Foster & Smith
Doctors Foster & Smith (汚染米グルテン)
Eight In One Inc (サルモネラ菌)
Eukanuba Cat Cuts and Flaked
Eukanuba Morsels in Gravy
Evolve
Evolve
Fame
Feline Classic
Feline Cuisine
Fine Feline Cat
Food Lion
Foodtown
Giant Companion
Giant Eagle
Hannaford
Harmony Farms (汚染米グルテン)
Hartz Mountain Corp (サルモネラ菌)
Health Diet Cat Food
Hill Country Fare
Hill's Prescription Diet
Hy-Vee
Iams Cat Slices and Flakes
Iams Select Bites
J.E. Mondou
La Griffe
Laura Lynn
Li'l Red
Lick Your Chops
Lick Your Chops (汚染米グルテン)
Loving Meals
Master Choice
Medi-Cal
Meijer's Main Choice
Natural Balance (汚染米グルテン)
Natural Ultramix
Nu Pet
Nutriplan
Nutro
Nutro Max Cat Gourmet Classics
Nutro Max Gourmet Classics
Nutro Natural Choice
Nutro Products
Paws
Performatrin Ultra
Pet Pride
Pet Pride / Good n Meaty
Pounce
Presidents Choice
Price Chopper
Priority Canada
Priority US
Publix
Roche Brothers
Roundy's
Royal Canin (汚染米グルテン)
Royal Canin Veterinary Diet (汚染米グルテン)
Save-A-Lot Special Blend
Schnucks
Science Diet Feline Cuts Adult
Science Diet Feline Cuts Kitten
Science Diet Feline Cuts Mature Adult 7+
Science Diet Feline Savory Cuts Can
Sophistacat
Special Kitty Canada
Special Kitty US
Springfield Prize
Sprout
Stop & Shop Companion
Stuzzy Gold
Triumph
Wegmans
Weis Total Pet
Western Family Canada
Western Family US
White Rose
Winn Dixie
Your Pet

◯Bird Food Recalls/鳥の餌
United Pet Group Inc.

◯Ferret Food Recalls/フェレット・フード
Eight In One Inc (Salmonella)
Ultra-Blend Advanced Nutrition

◯Fish Food Recalls/淡水魚・海水魚用各種餌
Sergeant's Pet Care

◯Rat Food Recalls /ラット・フード
United Pet Group Inc.

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怒りを秘めた目のジャック・ウォルターズ氏が手にしているのは、メラミン汚染ドッグフードで命を落とした愛犬スクーターの遺影だ。スクーターは、ジャックが子犬時代から育てた相棒で、いまは亡き奥様との思い出を共有していた家族の一員だった。子供達が独立してからは、スクーターとの1人と一匹の暮らしを続けていた。わが子も同然な存在ゆえ、超のつく一流ブランドのドッグフードを与えていたのだが、それがこんな結末になろうとは。イエローラブとジャーマンシェパードのミックスだったスクーターは、まだ5歳だった。病気ひとつしない、元気なスクーターは、このことがなければ、あと5年以上は寿命があったはずだ。ジャックは、その後、シェルターにいたスクーターと瓜二つの子犬を引き取り、スクーターIIと名付けて暮している。でも呼び名は相変わらずスクーターのままだ。

今回から数回に分けてお送りすることは、できればあまり知りたくない話ではある。しかし、愛犬家と愛猫家にとっては知っておくべきことであると思い、書くことにした次第だ。それには理由がある。このネットの時代、調べ、知りたいと思えば、おおよそのことはどうにかなる。と、そう思いがちだが、そうでもないことはゴマンとある。たとえば、ネット以前の'50年代や'40年代のこと、しかも栄養成分の代替物質を研究していた化学の世界のこととなると、その頃の記録や資料を見つけ出すことはなかなかに難しい。検索の名手にしても、それらのものは見つからない。無茶な発想ゆえに無謀な試みによる失敗の結果の場合、紙の記録はどこかに残っていても、あえてウェブサイトに載せる事をしない。さらに、その研究をしていた本人なりが高齢であったり、すでに他界している場合も多い。失敗は不名誉なことでもあるので、記録はネット上に載せられることなく、そのまま放置されてしまうのだろう。

'07年に米国とカナダ、そしてアルゼンチンで発生したペットの大量死という、おぞましい事件にしてもしかりである。その当時の報道や事実を改めて知りたいを思い、調べればワケなくわかるものだと思っていた。ところが、そうは問屋が卸さなかったのだ。断片的なものや詳細には踏み込んでいない概要の報告なり記録はある。それならいくらでも見つけられる。ところが、一本スジを通してあの事件を追ったものとなると、これがない。ない、というのは不正確で、実は以前にはあった。前にそういったサイトをチェックしては、いわゆるブラウザの「お気に入り」の中に入れておいた。ところが、再訪しようとしたところ、それらのサイトはもうなくなっていたのだ。ことごとく。

サイトのURLはちゃんと把握している。なのに、何らかの理由で消滅していたり、同じでも内容がガラリと変わっていたり、あるいは07年の事件についての記述だけがまるでなくなっているのだ。これはどう考えてもおかしい。なんらかの強い意思が働き、言ってみれば、それらのことを闇から闇へと葬り去っている、そんな気にさせられる、実に不可思議な状況にある。そんな印象を受ける。

となれば、いまのうちにできるだけ当時の報道記事等を集め、そのてんまつなり、事実をきちんと知っておきたいと思った。いったいぜんたい、あの騒ぎは、なんだったのか。どういう経緯でどんなことが起き、そしてどんな結果となったのか。それはすさまじいと言っても過言ではない騒ぎだったはずなのだが、日本のマスコミで大きく取り上げられることはなかった。ボクの記憶では、フジのFNN系がもっとも詳しく報道したと思う。とはいえ、それでも伝えられた内容は、事件の輪郭というか概略だけで、それ以上踏み込まれることはなかったし、その後の詳報もなかった。

あの事件については、日本の愛犬家も愛猫家もすべからく知っておくべきだ。なんとなれば、プレミアムと呼ばれている多くの高級フードはたいがい米国産で、国内産でも動物性蛋白質は、輸入品に頼っているところが少なからずであること。さらに、国産と称し、国内の工場で製造しているメーカーであっても、原料のトレーサビリティをきちんと表示できているところは一社しかないからだ。また、製造工程には安全性なり、責任はもてるものの、原材料は、そのかぎりではないところもは少なくない。そして、同じ人間の所業として、いまや米国なみのことが、銃による殺傷事以外のことなら、ここ日本で起きてもなんら不思議はないからだ。

以前、テレビのモノがができ上がるまでの工程を見せる番組で、某国内ドッグフードメーカーの工場の製造工程が映し出され、原料が完成品となったところで、工場長氏が登場してこう言った。「ご覧の通り、100%安全です!」。そこで思わず、エエッと言ってしまった。製造工程をザックリと見せただけで、なんでそんなことが言えるのか? だったら原材料の検査工程まで見せろよ、とボクは思ったのだが、そこは安直な番組の作りと取材先への心遣いもあって、そんなところは放映されなかった。で、実際のところ、そのメーカーは、使用している原材料のトレーサビリティの可否の表示はない。日本のドライフード・メーカーで、それをきちんとしているのは日清だけだ。

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これが北米最大の猫および犬用ウェットフード・メーカーであるカナダ、オンタリオ州にあるメニューフーズ社の看板だ。あれだけの騒ぎを引き起こせば、日本ならとっくに消滅していてもおかしくない。ところが米国では、というか同社のあるカナダでは、オーナー株主が変わっただけで、いまも存続しており、サイト上で堂々と「96銘柄以上の製品を市場に供給しているプライベートレーベル専門の(OEM)メーカー」であることを誇っている。ちなみに、カナダにあるのは同社の本部で、工場は畜産業が盛んなことで知られる米国カンザス州にある。興味のある向きは、同社のURLを記しておくので、ご一見を。http://www.menufoods.com/

さて、それではまず、おさらいとして、何が起きたのか、その概略を振り返ってみよう。2007年の3月17日の金曜日、米国食品医薬品局(以下、FDA)が、メニューフーズ社(以下、MF社)なる、ペットオーナーもペットフードを取り扱うショップもあまり耳にしたことのないカナダのペットフードメーカーの製品リコールを発表した。まあ、ここまではよくある話だ。ところが、リコールされた量が1,600万食という膨大な数であることに世間は腰を抜かさんばかりに驚いた。誰も聞いたことのないメーカーなのに、1600万食とは尋常ではない。そして、その尋常ではない数は、その後6,000万食にまでふくれあがった。その数字の陰には、ペットフード業界が消費者たちには絶対に知られたくないことがあったのだ。

ペットのオーナー、そしてペット・フードを販売する小売店だけでなく、FDAも驚いたのは、MF社が製造販売するウェットフードが、廉価品専門スーパーの最大手であるウォルマート社のプライベートブランド(以下、PB)のオール(ド)・アルから、プレミアム・ブランドの中のプレミアム・ブランドとされる大手トップ・メーカーの製品まで、その中身がすべて同じという事実だった。そして、リコール対象の製品は、すべて中国製のメラミン樹脂という、ペットフードであれ何であれ、食品に配合されるべきではない成分で汚染されていたのである。最廉価のウォル・マート社のPBブランド商品とIやYといったプレミアム・ブランド商品の価格差は4倍強もあったというのに、中身はまんま同じだったというのだからビックリ仰天である。フザケルナである。

さらに、そこにはもうひとつ大きな問題があった。それはFDAの初動体勢で、MF社からのリコールの届け出から消費者への公表まで、いまでは「謎」とされる3週間の空白期間があったことだ。アウトソーシングしていたものとはいえ、自社ブランドで販売される製品を自社内で飼育する犬や猫たちに試験供与していた会社、そして愛犬や愛猫に問題のフードを与えていた飼主たちは、1月の終わりから2月のはじめ頃にはその異変に気づきはじめていた。飼主たちは、ペットの様子がおかしいと感じ、缶やパウチに表示されているメーカーのカスタマーセンターのフリーダイヤルに連絡して問い合わせていたのだ。そして、同じ頃、ブランドを保有する会社でも、自社飼育していた犬や猫にも問題が発生していた。それが、リコールが公表される3週間以上も前だった。そして真っ先に変調を来たしたのは猫だった。そして被害は、リコールが公表される以前の段階で小型犬から大型犬へと、広がっていったのである。

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上の猫はメラミン汚染フードによって腎不全となったタミーだ。タミーも前脚に障害があることも手伝い、飼主はとても大切にしていてできるだけ信頼できる有名ブランドのフードを与えていた。2007年の事件は、信頼に足るはずだった有名ブランドの製品ですら安心できないという教訓をわれわれに残した。そして、それは北米史上最大のリコール事件とも呼ばれるまでになったのだった。残念ながらタミーもこの世を去った。

FDAによるリコール情報が公表されるや、それは米国やカナダのマスコミによって大きく取り上げられた。そして、それまで元気だったペットの急な体調の悪化を懸念していたペットオーナーたちは、リコールされた銘柄リストを見るや、ハタとひざを打った。なぜなら、愛犬そして愛猫たちに与えていた、いつものフードの名前がそこにあったからだ。愛するペットの体調不良、あるいは病気の原因が何であるかがわかったからだ。そしてリコールの理由が「不適切な原材料」の「汚染」であり、それは本来グルテン、つまりが小麦を原料とする植物性タンパク質であるべきなのが、実は安価な家具や食器に使われることの多いメラミン樹脂だったということを知ったのだった。

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上の左は、中国産の小麦グルテンの25kg袋である。右は、米国内さんの製品で、同量での価格を比較すると30倍にもなるそうだ。つまりが、米国内産のグルテンでは、動物性タンパク質よりも高価でペットフードには使えない。ということで中国産を使うのは、資本主義として、実際にもより価格の安さを求める市場ゆえ、中国産を使用せざるを得なくなる。それはいい。だからと言って事前の成分や品質のチェックを怠ったことの言い訳にはならない。

リコールされ、の理由がメラミンの汚染だということがわかったのがリコールから約3週目のこと。この謎の3週間のあいだに適切な治療が行なわれていれば、救われた命も少なからずあったはずだという指摘がされた。だが、FDAは沈黙したままでウヤムヤとなった。いま、ネット上にある関連情報でこのことに触れているサイトはない。次回で後述するが、そこにはれっきとした理由があった。しかも、それは極めてお粗末なものだった。

メラミンとは、価格が安く、着色しやすく、ホルムアルデヒドを用いて熱成型しやすいことで食器から家具等に至るまで広く使われている、古くからある樹脂素材である。それは後に、ペットフードだけでなく、赤ちゃん用のミルクにまで混入され、中国国内では死亡者まで出る大騒ぎとなった。ペットフードでのことは知らなかったとしても、赤ちゃん用のミルクの事件は記憶している方は数多くいるはずだ。

この汚染された中国製の原料とは、先にも触れた小麦グルテンだった。一見、セメント袋のような業務用のそれには、たしかにWheat Gluten(小麦グルテン)と表示されている。小麦グルテンとは、ひらたく言えば植物性のタンパク質で、より高価な動物性のタンパク質の代用品として用いられる。水でよく練り上げた強力粉を水で洗い流すとネバネバもっちりとしたカタマリが残る。それがグルテンで、日本でも、お麩という名で知られている。生麩というものもあって、それを使った饅頭などはボクの好物でもある。菜食や肉食を禁ずる宗教の精進料理、とくに中国のそれでは、肉の代用品としても使われている。

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自作の小麦グルテンのカタマリだ。小麦粉には薄力粉と強力粉があるが後者はグルテンの含有量がより多く粘りが強いことを意味する。これをちぎって煮て味付けをし、油で揚げたりすると鶏の唐揚げ風になる。調理の仕方や工夫次第で、肉の質感のある、しかし肉ではない植物性の蛋白源となる。このカタマリを作るのに、スーパーで売られている一般的な強力粉2袋を要した。

なぜグルテンをペットフードの原料に使うかと言えば、缶やパウチ入りのウェット・フードであれドライフードであれ、いずれも高温で処理されるゆえ、どうしても栄養の損失が起きる。その損失したタンパク質を本来あるべき量に補填、調整するために必要不可欠なのが小麦や米のグルテンなのだ。なぜグルテンかというと、その理由は明解で、本来ならそうあるべき動物性タンパク質よりはるかに安価な上に製造上扱いやすいからだ。要は、表示されているタンパク質の含有量を、全米家畜用飼料GメンともいうべきAAFCOが好ましいとするラインをクリアするためには、うってつけの、しかも安上がりな代用品なのである。

結論を先に言うと、問題の小麦グルテンを製造出荷していた中国の企業は、自分たちが出荷しているのがグルテンでもなんでもない代物であることをハッキリと知っていた。当初から小麦粉とメラミン樹脂の粉を混ぜた、ただの有害で使い道のない粉であることを知っていたのだ。当初は、そうではなかった。輸入元である米国デンバー州の商社は、当初は、中国の別なメーカーから、れっきとした小麦グルテンを仕入れ、それをカナダのMF社の製造部門である米国カンザス州の工場に納入していた。

ところが、ある日突然、その中国企業が理由も不明なまま倒産か廃業してしまい、納入業者は、予定通りに安価な小麦グルテンが仕入れられなくなるという事態となった。MF社は巨大なペットフード・メーカーである。原料納入の遅延となれば、それなしの損失が発生し、クビを切られるのがオチである。そこで、コロラドの商社は、新たな供給元を探し、見つけたところが、カネのためなら最低の倫理観も捨てるという会社だったのである。最終的にそれと同じものは中国内にも流通し、赤ちゃん用のミルクにまで混入し、死亡者まで出る騒ぎを引き起こした。それもこれも中国政府、つまりが中国共産党による、共産主義でもなんでもない、経済の自由化という聞こえのいい、しかしその実態は、人間の劣情ともいえる拝金主義に国民を走らせたツケによるものだった。

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メラミンと聞くと、ボクは安価な家具の表面に貼られた化粧板が思い浮かぶ。着色も容易で、印刷もできると安価なメラミン樹脂は、家具、特にテーブルや棚板の表面に使われる事が多い。ホルムアルデヒドと重縮合なる高分子化反応によって、加工性の高い、熱硬化樹脂になる。そんなメラミンが利用されたもので、家具に次いで身近なものが食器である。ホルムアルデヒド、つまりがホルマリンを用いるため、その毒性が懸念され、メラミン樹脂製の食器が学校給食に使われていた事が問題視されたこともある。石油由来の樹脂としてはきわめて安価で、タンパク質と似た窒素含有量を特徴とするゆえ、これを代替栄養とすることが研究された時代もある。実は、それこそが今回の事件の裏にあることで、それは次回で詳しくお伝えする予定だ。

ところで、話は少々脱線するが、ボクには在香港の中国人の友人がいる。れっきとした中国人だが、彼の育った香港は、長い英国による統治下と自由貿易の中継基地として、自由な民主主義社会の空気に浸ってきたほぼ一世紀もの歴史がある。1997年の7月、99年にも及ぶ英国の統治下から中国へ返還された後も、香港は、中国本土とは別扱いの特別行政区とされている。別な言い方をすれば、それゆえ香港人は自由であることの尊さを知っていて、観光のメッカでもあるゆえ、海外を含む中国の外の国や地域の価値観があること、それらのことを尊重することを知っている。誤解を恐れずに言えば、中国本土の国民に比べ、いい意味でも悪い意味でも国際的に成熟している。スレてはいるが、やっていいことと悪いことの区別は国際レベルで理解しているのだ。

ボクは、以前、ひょんなことから、趣味の品であり、ある種の芸術品でもあり喫煙具という実用品でもあるパイプの逸品の数々を、委託され、米国のネットオークション・サイトであるイーベイを通じて販売したことがある。それらのパイプは、目利きの好事家の目を釘付けにする逸品の数々で、それらを販売する際に、それはとても勉強になる体験をした。それらのパイプをほしがったのは、まっとうな人たちだけではなかった。その考えや行いを理解するのが無理難題なオタクや、あわよくばだまし取ろうとし、ダメでも品が届いてからキズがあったなんだと難クセをつけて返金なり割引を求めてくる輩がゴマンといたのだ。そんな連中は、まだ取引実績が少なく、取引後に買い手からの高い評価を得たい売り手のまわりをうろつき、あの手この手を繰り出してくるのだ。

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これが早世したデンマークの天才パイプ作家、ミッケによるパイプだ。彼は、スポーツ新聞のオッパイの写真が掲載されているページをのり付けした箱や紙製のチューブに手製の皮袋をセットにしていて、このような欠品なしの品となると珍しいのだそうだ。裏側には、本人の作であること、そして製作年とその年の何個目かを表す刻印がある。懇願されてイーベイに出したところ、開始1,000ドルだった価格は、3日ほどで小型車が1台買えるくらいにまで跳ね上がったので、腰を抜かさんばかりに驚いた。要は、有名作家によるゲージツ作品ということでもあったようだ。ボクにはまるで関心のない世界である。

そんな連中は世界中にいる。いまや昔のようにポピュラーなものではないとはいえ、パイプ愛好者の数はまだまだ世界レベルで見ればゴマンといる。逸品ゆえ、委託を受け、ボクがイーベイに出品したパイプの数々には、世界中の愛好家の目を引いた。そして、その中には、ありとあらゆるレベルの悪党共もいて、それぞれの手練手管で、望みの品を手に入れようとした。そんな悪党共の中で、もっとも稚拙ながらもあくどい手口で知られるのがアフリカ諸国と中国本土の買い手だった。それは、ほかの逸品を販売している、評価の高い売り手の取り引き条件を見ればわかる。アフリカ諸国と中国のバイヤーとは取引しないと明記されているのだ。こちらもそれにならい、取引条件にいずれの地域のオファーも受け付けないことを明記した。その際には香港も中国としてカウントし、香港からの入札があっても断固断り、黙殺した。するとそれに対し、烈火の如く怒り、抗議の声をあげた愛好家がいて、彼とは、その後、なんと友人関係となったのである。

彼が怒ったのは、香港人と中国本土の人間を同一視したことにあった。「われわれ香港人は、一世紀近くもの英国統治下において、国際的な常識感が備わっている。その点において、そうでない中国本土の中国人と本国人をひとからげにしてほしくない」というのだ。そして、きちんとした手順を踏み、そちらが提示する写真と説明に偽りがないとなれば、苦言を呈することなく、正当な評価を残すことを誓うと言い、なんなら日本にいる弁護士の知人を介してもいいと言い切った。そこで、あるパイプは、最高額で入札した彼の手に渡ったのだが、タイミングよく日本への出張も決まり、彼はそのパイプを東京で受け取ることとなった。彼は、日本の衣料品業界の大手と取引があり、その打合せを兼ねて来日することとなり、その際に直に会って手渡すこととなったのである。

その彼とは夕食を共にし、その際に香港人と中国本土人のメンタリティの違いというか「差」についての話を滔々と聞かされた。彼は、日本から送られてくる布地を中国本土にある縫製工場に送り、製造時の品質管理もし、仕上がった完成品を日本へ送るという仕事を父の代からしていて、いまでは、布地の手配から、求められるレベルの製品作りが可能な工場の選定までをも引き受ける、日本の某メーカーにとってはなくてはならない会社の二代目だった。来日の際は、旧正月という時期もあって、奥さん同伴であったのだが、結婚して子供ができるや、紙オムツも粉ミルクも中国製は危ない、すべて日本製でないとダメだと言い張られ、大げさだなあと半ば呆れながらも渋々とそれに従ったのだそうだ。

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ご記憶にも残っているであろう、中国内でのメラミン汚染された粉ミルクの被害者の赤ちゃんだ。この子は一命をとりとめた。しかし、腎不全のような症状にその後も苦しめられることとなったそうだ。けっきょく、治療の不備や遅れやらで5名の赤ちゃんが命を落とした。赤ちゃん用のミルクに小麦グルテンを配合する事ですら信じられないことだが、実際、それがグルテンでもなんでもなく、単なるメラミン樹脂の粉とわずかな小麦粉に過ぎなかったということに中国メーカーの確信犯的な倫理観のなさと恐怖を感じる。

すると米国ではペットフードの騒ぎが起き、次いで中国でも赤ちゃん用の粉ミルクのメラミン混入事件が勃発し、奥さんの懸念は現実化した。たとえ値段が2倍、3倍であってもそうしておいて本当に良かったと、つくづく思ったと彼は言っていた。聞けば、メラミン入りのミルクは、日本における明治や森永といった、ちゃんと名の通った銘柄で、日本で報道されているかどうかは知らないが、中国製の紙オムツで、やたらと赤ちゃんのお尻がかぶれる製品も少なくないのだという。

なんでそんなことが起きるのかといえば、中国本土で共産党の一党独裁の下で生活する一般市民は、外の世界にふれる機会も少なく、ある意味、妙に大人びた子供のようなイノセントなメンタリティであるからだという。よくわからないと言うと、役人や軍人は信用しないが、そうでないならと信用しがちな面がある。そのため拝金主義に走った連中の餌食にされてしまうのだ。そのために中国本土は、とんでもない格差社会となり、いまや人々は軍人、役人にかぎらず人を信用しなくなり、完全な家族、血族主義になってしまっているという。

また、そこには中華思想なるものもある。中華思想とは、中国こそがアジア圏の中心的存在であり、すべてにおいて優位にあるとする尊大傲慢な考えである。現代のように通信が発展していない「昔」のせまい世界観の頃において、このアジア圏は、世界全体という意味でもあったはずだ。何の根拠もなく、自分たちが日本や韓国、そしてさまざまなアジアの国々よりも勝っている、優れているという考えが中国人にはある。そして、共産主義とは名ばかりの階級主義的社会の中、それ以前の大昔から伝わる「役人は腐敗するもの」という格言もあり、それが事実であることを彼らは身をもって知っている。ゆえに、家族、あるいは身内の血族主義となり、他人を踏み台にしてもという、自己中心的な考えに走りがちになるのだという。もう悪循環である。

いまでこそ価値観も広がり、また投資としての意味合いもあって、モダンアートを含む西洋絵画の世界的なオークションの場に中国人の姿があるのは珍しくなくなっている。しかし、かつて共産主義革命が起きる以前の富裕層たちの内なる中華思想は、徹底していて、たとえ買えてもヨーロッパの巨匠画には手を出さなかった。買っても、中国で巨匠とされる芸術家よりも下に置き、ぞんざいに扱った。本心から素晴らしいと思う芸術作品があっても、それが中国のものではない、という理由で破壊したり、廃棄した例もあったそうだ。中華思想とは、かくも歪んだメンタリティをも生むものなのである。それを知ると、中国における微妙な反日感情のことも多少は理解できるような気がしてくる。彼らが日本人に支那と呼ばれる事を嫌い、騒ぎ立てるのは、歪んだ逆差別によるものなのだ。欧米諸国がChinaと呼ぶ事はOKでも日本や韓国ほかはダメなのだ。許せないのだ。戦時下の云々は単なるこじつけなのだ。

話を中国産小麦グルテンに戻すと、これはオカシイとなってグルテンの中身を調べたら、実はグルテンのグの字もない、ほとんどメラミンでお気持ちとして小麦粉が少々入っていただけというのは、いくらなんでも米国人というか、出荷先をバカにしすぎだろう。検査されれば一発でバレてオシマイとは思わなかったのだろうか。そして、輸入元の商社はともかく、MF社は事前の検査をしていなかったということなのか。と、さまざまな疑問や思いが頭の中をよぎり、?マークの嵐となって混乱させられる。この「なぜ?」といがあまりにも多い事件を実に根気よく、ねばり強く調べ上げ、その全体像をまるで上出来のミステリーのような見事なノンフィクションの書にまとめられた方がいる。それは女性で、米国はニューヨーク大学のマリオン・ネスル教授である。

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オフタイムに愛犬と過ごすマリオン・ネスル教授である。ネスル女史は、ボクの求めに快く応じ、著書である"Pet Food Politics"を書き上げるために、根気よく収集した調査資料を提供してくれた。PDFファイルで送られてきたその量は膨大で、読み込むだけで相当な時間とエネルギーを擁した。その資料は、'50年代にはじまったメラミンの代替栄養研究の資料まで含まれていた。

ネスルというのは英語発音で、そのルーツの本国発音ではネスレと読む。コーヒーや乳製品で知られる欧州系のあの会社のそれと同じだ。そして、その欧州系の会社は、実は欧州市場を牛耳るペットフード・メーカーの大手プレーヤーでもある。そんなこともあって女史は、「名前が笑えるでしょ」と言った。そう、ボクはいま、そのネスル女史との交流がある。ちなみに女史は、大の愛犬家だ。そして米国の栄養学の世界では、けっしてあきらめない、根気とねばり強さで数々の研究論文をモノにし、優秀な後継者たちを育成したことで一目置かれている存在だ。そして優れた書き手であることでも知られている。次回からは、そんなネスル女史から提供を受けた、数々の資料をもとに2007年の事件の詳細をお届けする予定だ。

最後に、このペットフードのメラミン汚染事件は、赤ちゃんミルクにまで波及し、そして日本の食品工業や外食産業をも巻き込む大騒ぎとなった。しかし、悲しいかな、熱さ過ぎればナントヤラで、わずか数年ほど前のことなのに、それらのことはすでに人々の記憶から風化しはじめている。さらに言えば、産地偽装も、あれだけの騒ぎになったのに、最近になってまた中国産ウナギの国産偽装がバレて業者が逮捕されたりしている。そこ二人減の業の深さを感じてしまうのはボクだけではないだろう。

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右から、自社のプロデュースするピッツァのクラストにメラミンが混入していたことが判明し、謝罪するサイゼリア経営陣。返金で対応すると言っていたが、そうそう古いレシートを持っている客は、そうはいないだろう。ボクの住む浦安からそう遠くない総武線本八幡駅の近くにあった開業して間もない頃のサイゼリアは、ちゃんとキッチンで調理されている洋食屋だった。まさかこんな業態になるとは思わなんだ。いまのサイゼリアのキッチンは、ゴキブリの出る余地もない、システマチックな調理現場と化している。中央は、中華まんじゅう等の冷凍食品の多くにメラミンが混入していて回収することとなった際の新聞記事、そして製造元、丸大ハムの社長の謝罪会見だ、ところが、この社長、オキマリの頭を下げての謝罪の後、(混入量を考えれば)メラミンなんてどうってことはない、というトンデモ発言をぶちカマシた。企業風土が知れるというものである。

これらのことは教訓となって活かされず、必ずやと言っていいほど再発している。それを防ぐ規制なり、より思い懲罰等の手だても後手後手である。要は、ペットフードもそうだが、われわれ自身も我が身にいつふりかかるやもしれないことを覚悟すべき、ということだ。なにせ、日本の食品会社が全国的に販売していた肉まんやあんまん等の食品、そして安いことで人気のあるイタリアン・ファミレスの人気メニューもメラミンで汚染されていた事が続々と判明したのだから。いくら国内産といっても、原材料の一部が輸入品であれば、それに何か好ましからざるものが含まれていてもワカラナイ。ボクたちは、いまそんな「食」に囲まれた時代に生きているのだ。

さて、次回からは、2007年の事件がいかにして起こったのか、その詳細と、それが起こるべくして起こった背景にまで踏み込んだレポートをお送りする予定だ。そう、もうこれは、もはや単なるブログなんぞではなくなってしまっているのだ。

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約半年がとこ前、そしていまの小春ちゃんだ。16歳と高齢な小春ちゃんは、お転婆だった若い頃からアレルギーとかに悩まされていたそうで、昨年、冬前の頃に免疫不全となり、失礼を承知でいえば、まるでラスカルのようになってしまっていたのだ。無論、飼主さんは気が気じゃない。会社を興したばかりで散歩の時間がズレて長いあいだ会えなかった時期が続いたが、久々に再会したら上の状態になっていた。そして、下は、食をブッチに変えてからの結果である。もう、ドーダ、ドンナモンダイである。よかったね小春ちゃん、そして飼主のIさん。お役に立ててボクもうれしい。

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スミマセン、久々のブログのアップです。というか、もうこれはずでにレポートであってブログではないか。それはともかく、2007年の米国でのペット大量死事件、別名メラミン混入事件のレポートには、もう少しお時間をいただきたい。そのスジでは超のつく有名なニューヨーク大学の栄養学の女性教授から、想像を絶する資料をいただき、それにきちんと目を通し、理解するのが相応していた以上に大変な作業なのだ。

マリオン・ネスル教授は、PET FOOD POLITICS(ペットフード・ポリティクス/政治学)、副題が「炭坑のチワワ」というベストセラーを著された御方である。愛犬家でもある、女性教授であり、根気のカタマりのような優れたリサーチャーでもある。同書は、くだんの事件を精査し、そこから食品全般に渡る、知られざる現況にまで足を踏み入れた名著である。そこいらのスリラー本まっさおなくらいの面白く、また恐ろしい告発の書でもある。副題は、かつて炭坑夫が坑内のガス発生を知るための警報機代わりに持ち込んだカナリアのことをもじったものである。ドッグフードを掘り出す炭坑には、カナリアならぬチワワが必要ということだ。

ラッキーにもコンタクトがとれて資料を見せていただけまいかともう知れたら、ページ総数900を超すPDFのファイルが送られてきた。これがまた、あらゆる意味ですごい代物で、興味深さ100%、専門用語の登場率200%で、読解するだけでヘトヘトになるくらいだ。それを、愛犬家、愛猫家の皆様に代わり、ボクが読み込んで、ひらたくしてお送りする、とこういう予定である。乞うご期待なのだが、もう少しじかんがかかるので、とりあえず、最近のめぼしいことについてお送りすることにした次第だ。なんか、この言い訳、どっかで見たような気がするが、まあ先に進んでいただきたい。

そうは言っても、ネタはバレバレなのだが、たとえそうであっても、これはぜひお伝えしたいことでもある。やはりというか、生きて行く上での「食」は、きわめて重要であり、もっと関心をもつべきことだとボクは声を大にして言いたい。キャプションにもあるとおりだが、小春ちゃんは、御年16歳と御高齢である。女優でたとえれば、森光子である。その森光子も、彼女のライフワークである「放浪記」では、すでに見所のでんぐり返りができなくなったことは、演劇ファンや芸能に詳しい方なら先刻ご承知の通りだ。昨年の夏から秋にかけての頃の小春ちゃんは、そんな森光子に例えれば、もうそろそろ、でんぐり返りは無理かな、とプロデューサーが思いはじめた頃、みたいな感じだった。


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放浪記は、作家の林芙美子をモデルとした戯曲で、森光子のこの有名なシーンは、売れない作家が、自分の作品が記事となって新聞だか雑誌に取り上げられたことを知り、その喜び、うれしさを爆発させたものだ。友人の森光子ファンによると、このでんぐり返しの封印は、2007年の11月29日に公表され、翌30日のスポーツ新聞の芸能欄や情報番組の芸能コーナーで大きく取り上げられたそうだ。画像は、その友人からいただいた。映像でほしいのか、画像でほしいのかと聞かれたときは、正直オドロイた。ちなみに彼は島倉千代子ファンでもある。どうでもいいことだが。

見たところ、いわゆるごくフツーの老犬というか、お年を召された赤柴さんというところで、それ以上でもそれ以下でもない、という感じだった。まあ、お足はゆるりと、動きも、ちょいと遅めで、というくらいで、お元気でなにより、お達者という感じだった。だが、その先からは、あまり会う機会がなかった。なんとなれば、ボクは、清水の舞台から飛び降りるがごとくの心境で、ブッチの輸入代理店をはじめるためのジェットコースターに乗りっぱなしの状態となったからだ。要は、お散歩タイムがかち合わなくなり、しばし合えない時期が続いていたのだ。

今年の猛暑がまりにも強烈だったので、記憶が飛んでしまった方もおられるかと思うが、昨年から今年にかけての冬もけっこう寒かった。寒いわ、起業するという現実を知らないでオキラク状態だったボクは、想像していた以上に大変な現実に直面し、動揺しつつも混乱していた。そんな時期が数ヶ月ほど続き、その間は、これまで何回か書いたことだが、夜の10時が朝の10時に感じられる日々が続いていた。そして、そんな状況も一段落し、どうにかお日様があるうちにスミレと散歩する事ができるようになっていた。そんな折り、小春ちゃんと久々の再会を果たしたのだが、そのときは本当に驚いた。どうしちゃったのよ、というくらいに容貌が変わってしまっていたからだ。

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上の写真に見える足元に注目。このように顔だけでなく足元のほうの毛も、ところどころだが、ごっそりと毛が抜けていたのだ。すべての足元が、大なり小なり、脱毛状態だった。下は、いまの状態である。しっかりと毛が復活している。言ってみれば「でんぐり返りの復活」である。なんだそりゃ。でも、これは大きな違いで、円形脱毛症が完治してカツラをかぶらなくてもよくなった以上の成果である。なんてたって小春ちゃんは女性だからね。このたとえも、なんだそりゃ、だな。

目のまわりとマズルのあたりの毛はゴッソリと抜け落ち、足元や尻尾の先のほうは、まるでアトピーの症状のように、これまた毛が広範囲に抜けていた。飼主のご夫妻は、すでにお仕事から引退されている身で、息子さんも独立され、公務員としてお仕事をされている。つまりが、ご夫妻にとって16歳のメスの小春ちゃんと。もう一頭いるオスの大ちゃん(10)は子供も同然、しかも、ご夫妻は、最後の犬という覚悟をもっていらっしゃる。 そんな存在である愛犬が、かくもという状態になったら、そりゃ大変である。もう気が気でなくなる。

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小春ちゃんの頭部を俯瞰した図である。目のまわりの毛はご覧の通り見事に復活している。頭部も若干薄めだったところも濃くなっている、というか戻っている。これは犬猫に限らずヒトにも言える事だ。ヅラではないアプローチで薄毛とハゲを治すリーブ21の処方には、食も含まれていると言う話だが、それはうなずけることである。なんで、そんなことを知っているかと言えば、友人が利用していて、教えてくれたからだ。幸いな事に、ボクにはその悩みがない。この友人は、久々に会った際、最初にした事は、ボクの頭髪を引っ張ることだった。

獣医師の見立てでは、高齢による免疫不全ということであったそうな。そこで、愛犬家パラメータでは上位にある奥さんは、東に身体にいいフードがあると聞けば、きわめて高価であってもそれを取り寄せ、西にこれまた身体にいいサプリメントがあると聞けば、高価なうえ、思わずぶん殴りたくなる少量であっても、それを発注しと、できることをすべてやってみた。でも、小春ちゃんの状況は好転しない。そうなると、人は精神的に追いつめられる。そりゃそうだ。16年間、楽しい時期、つらい時期を共にしてきた愛犬である。いつかはお別れのときがくる。でも、それまでは、できるだけ長く明るく、健康的に生きて行きたいと思うのが人情だ。クォリティ・オブ・ライフを持続させたいではないか。

ところが、それがうまくいかないとなれば、ハラハラする。ハラハラは心身によくない。ハラハラは、犬にも伝播する(by シーザー・ミラン)。久々に会った小春ちゃん同様、飼主さんのご夫婦にも元気がなかった。そんなときにブッチの話となった。奥さんは、公園のいつものお仲間さんの中では、変人(少なくともフツーじゃあないと思われている事はたしかだ)のボクに理解があって、「話のできる」、わかってくれる方だった。 だからブッチのことは以前から話に出ていたし、そいつを日本に持って来れまいかと考えている旨もご存知だった。

とはいえ、小春ちゃんのことで心労の重なっていた奥様は、予想外にもブッチに対して無反応だった。それも理解できる。西に東にと、ココロを奔走させていた身にとって、 モノがちがうと言っても、それはどこぞのフードやサプリの業者が口にするセリフと何ら変わりがないのだ。しかし、奥さんは、同じ赤柴で3歳になってからアトピーで悩まされるようになって、あちこちの毛がごっそりと抜け落ちていた姫ちゃん(8)の状態がかなり改善されたということをお伝えしたら、そのことにいたく興味を抱いてくれたようだった。ちなみに、姫ちゃんは、当ブログの第13回「元姫君のお姫さま」に登場してくれている。

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うわさの姫ちゃんである。姫ちゃんの場合はアトピーで、とくに目立つのが尻尾と太腿の薄毛、そして足元の脱毛状態だった。足元は症状が重いのと、夏場の草に触れる事がよくないようで、まだ劇的な変化はない。でもほかの尻尾やももあたりは、飼い主さんの妹さんが4ヶ月ぶりに遊びにきた際、その劇的な改善ぶりに驚きの声を上げたそうだ。うれしい話である。姫ちゃんは、その名の通りのお姫様らしい、可憐なという形容が相応しい可愛らしいメスの赤柴ちゃんだ。サイズも小さめというか、日本犬保存会の規格内だ。スミレは規格外だ。

そして、神の思し召しとでも言うべきか、そのときに、普段は遅めの時間に散歩をしている姫ちゃんが、まるで舞台監督からキュー出しをされて袖から登場するがごとく、お出ましになったのである。小春ちゃんの飼主さんは、さっそく姫ちゃんの飼主さんから話を聞き、ブッチを食べるようになってからの改善状況を細かく聞いていた。そして、そうか、そうなのかという顔をしつつも、そのまま帰られた。

これはもう、食べてみてもらうしかないな。と、そう思ったボクは、比較的近所でもあるので、お試しにとブッチを3種類届けた。聞けば、取り寄せたフードはドライであったので、それだけでも違いは大いにある。老犬にとってカロリー過多な食は酷であり、さらにドライとなれば、貴重な体力はその消化吸収に浪費させられてしまう。ちょうどそのころ、これまでにないブッチを知ってもらおうと、思い切ったプレゼント作戦を決行中でもあったので、何はともあれと黒白青の3本を届けに押しかけたのだ。

その結果は、ご覧の通りである。Iさんによれば、小春ちゃんを診てくれている獣医師のご夫婦は、その状態の改善ぶりに驚き、あらためて食の重要性を再認識したと、口に出してそう言われたとのことで、奥さんは、どんなもんだいとばかりに喜んでくれた。そして、いまやその獣医師さんとそこの受付嬢さんも、いまやブッチの愛用者となってくれている。さらには、ウワサを聞きつけた公園のお散歩仲間たちもしかりだ。下は、ブッチでいつも元気な赤柴のアカちゃんだ。飼い主さんは、ケンネルで兄弟の赤と黒の柴を見て気に入り、兄弟を割くのもいかがなものかと両方連れて帰った。黒いほうはクロちゃんという。

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ブッチによって改善されたのは、皮膚や毛の再生状況だけではない。健康度というか、なんというか、物事に対する反応、動きすら、それまでの小春ちゃんとは打って変わった状態になったのだ。Iさんによると、散歩に出かける際、玄関を出て、靴のひもを結わく際、小春ちゃんのリードを地面に置いても心配させられるようなことはなかった。動きはトボトボとゆっくりなので、ちょっくらそこまでと勝手に歩き出しても、靴ひもオッケーとなった時点でも、数歩先でつかまえることができたからだ。ところが、ある日の事。同じようにしていたところ、小春ちゃんは、足取りも軽く、家のあるブロックの角を回り込み、もう一方の角にほうまで達していたのだそうだ。

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単なるピンボケではない。うれしいピンボケなのだ。なんとなれば、正面から撮影しようとしたとたん、小春ちゃんは、プイッとアチャラのほうを向いたのだ。え? そんな動き、前はしなかったじゃん。スゴイじゃん。という1枚なのだ。下は、仕方ないなあとあきらめていたところ、あなた、ずいぶんと落ち着きがないわねえ、とまるで、毎度のごとく通知表に書かれていた文句のごとくのセリフを目で言っていた瞬間である。ちゃんと美人さんに戻った。よかったね、小春ちゃん。ちなみに背後に見えるのはスミレだ。

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いまの小春ちゃんは、はじめて会った3年ほど前の頃よりも、もっと動きが軽快なように見える。いま現在の状態の写真を撮るため、彼女のまわりをバタバタと動き回っていたら、「アンタ落ち着きがないわねえ」という感じで、スッとこちらを向いたりするのである。まだ尻尾の先は、ちょっと抜け毛状態の部分が残っているが、足元なんか、もう昔の状態に完全に戻っている。アトピー症状のようだった足先の部分は、完全に毛が、きれいに生えている。それもこれも食の改善によってであると断言できる。なんとなれば、飼主のIさんが、そう言っているからだ。もったいないから、ブラジル産プロポリスのサプリはフードに加えたが、使い切ってからは加えていないそうだ。

手前味噌だが、といいつつ、本ブログは、ある意味手前味噌的なものではあるけれど、小春ちゃんは、ブッチを愛用し、それによって食の重要さを示してくれた。さらに、弟分の大ちゃんは、あまり食にはうるさくないタイプで、「ごはんよ〜」「あっそ」という感じだったのが、ブッチを食べるようになってからというもの、「メシはまだか」と、食事時になると、冷蔵庫の前でよだれを流すようになったそうだ。それもまた良し。なんとなれば、食に興味を失った犬は、犬らしくないからだ。

そんな小春ちゃん、そして大ちゃんと、ブッチの社外広報となってくれたIさんのおかげで、公園のお散歩仲間でブッチの愛用者の輪は、確実に広がっている。ありがたくもうれしいことである。取扱い品目に加えていただいている業者さんも確実に増えている。とはいえ、ボクとスミレと仲間達の乗る船は、まだまだ木製の手漕ぎのボートだ。けれど、小春ちゃんや、その他のブッチを愛用してくださっている皆さんとその愛犬のわが広がっていく様には、とても勇気づけられる。そして、いずれはこの木造のボートにも船外機が付くことはまちがいないと思っている今日この頃である。

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よかったねという表情のスミレ。最近のスミレちゃんはいかがなさっているの? とメールで何件かの問い合わせがあったので、最後に登場してもらった次第である。おかげさまでスミレは絶好調である。3歳を過ぎて急に落ち着き、ある意味ホッとしつつも、しかしヤンチャな頃が懐かしく、ちょいと寂しい気にもさせられる今日この頃である。過日は、奥さんが玄関に行った際、彼女の食べかけのマックのパンの部分を我慢できずにいただき、大目玉を食らっていた。最近は、怒られる前に舐めまくり、ボクの口をふさぐという高等戦術まで憶えた。

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ビッグ・ワン・パーティ大会本部のとなりに陣取ったブッチ・ジャパンのブース。営業部長のスミレは、やる気半分、不穏な雰囲気半分の複雑そうな面持ちだ。犬は嗅覚で、その犬の大きさ等々のことがわかってしまう。目前の空気は、自分のン倍は当たり前というのガゴロゴロという匂いでいっぱいなのだ。

去る10月の17日、晴天やや曇りという天候に恵まれた日曜日、長野県は南佐久郡南牧村野辺山にある滝沢牧場にて、日本では珍しい超大型と大型犬のための「参加型」と銘打たれたビッグ・ワン・パーティ(以下、BWP)というイベントが開催された。ボクは、同イベントに出店者としてスミレとスタッフと共に同地に出かけてきたのだが、いやまあ行ってみて驚いた。右を向いても左を向いても、そして後述するが、上を向いても超大型犬と大型犬が文字通りゴロゴロといたのである。そして「参加型」という意味もよくわかった。なんとなれば、同イベントは朝10時の開催宣言から、わずかなランチブレイクを除いて午後3時過ぎの閉会まで、参加型のゲームやレースが次々と行なわれるのだ。それらの出し物を以下に記す。

10:00  集合写真・犬種別撮影

10:30  おマタくぐり(全員参加ゲーム)

11:00  大椅子取りゲーム予選(同)

11:30  着替えバトンリレー(団体ゲーム)

12:00  借り物競走(15組)

昼食/仮装パレード

13:30  二人三脚(団体ゲーム/20人)

14:00  椅子取りゲーム決勝(個人)

14:30  色別対抗リレー(団体ゲーム/15人X5チーム)

15:00  表彰式

15:30  終了 

 
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と、まるで小学校における大運動会の様相である。上は、プログラム冒頭の十時だよ全員集合の様子である。でもって、こてれが実に素晴らしかったのだ。競技やゲームに参加しなくても、デカイ犬のオーナーでもそうでない犬好きも、来てみて楽しむことに意義がある、そんな感動的とも言えるイベントだったのだ。何に感動するかと言えば、広いところで、愛する超大型や大型犬と広いところで戯れることのできる機会は少ない。まずはそれができる。そしてデカい犬は少ないゆえ、同じ犬種であれ、別犬種であれ、超大型、大型犬と暮らしている、という分母を持つ同士の交歓の場であることだ。さらに言えば、元飼主の方も少なからずいて、旧交を温めているところも見かけられた。大型犬の寿命は、悲しいかな短い。超が付けばなおさらで、たとえばグレートデーンなどは10歳を超すものは、ほとんどいないのが現実なのだ。

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ビッグ・ワン・パーティ最後のほうの一幕で、長寿犬の表彰である。このゴールデンは、御年16のご長寿である。中型や小型ではそう珍しくはないが、超大型、大型犬では超のつく長寿なのだ。各所から、ああ、今年もいらしてる、といった声が聞こえるのも、このイベントならではのことだと思う。みんな短い一生を共にしていることを実感せざるを得ない境遇なのだ。それゆえ、みなさんは、このゴールデンによって勇気づけられるのだ。16歳というだけで感動である。ありがとうと、涙、涙である。

ナリがデカイだけに、そんな愛犬を失ったときのショックも大きい。そんな愛犬と共に、このBWPに参加し、出会い、仲良くなった友人たちと、愛犬を亡くした後も、デカイ犬たちとくんずほぐれつの競技をしている光景に目を細め、旧交を温め、そこでかつて元気だった頃の思いで話に興じている。そんなところがあちこちで見受けられたのだ。短い寿命を終えて天国に召されるときのショックの大きさゆえか、超大型と大型犬のオーナーさんには多頭飼いされている方が多い。それはたぶん、とにもかくにもデカイ犬が好きだからだろうが、そんな愛犬が天寿を全うしたときのショックを和らげることの一助にもなるからなのだろうと思った。

これで10週目.JPG

これで10週目だとか...。スミレくらいあるな。しかし可愛いなあと、飼主さんに断ってから可愛がる直前である。その後、最終的にカックンされることになろうとは夢にも思わなかった。下は、まるでモアイ像のごとく並ぶニューファンドランドだ。カナダの水難救助犬でもあるが、愛犬仲間のM君のニューファンのレウさんは、カナヅチなんだそうだ。大きいのは60kgを超える。普通の女性より重いしデカイ。

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しかしまあ、大型犬は子犬もデカイ。でもって、まるで手応えのある縫いぐるみのように可愛い。セントバーナードなんぞは、4ヶ月だというのにスミレとほぼ同サイズである。こりゃなんとも可愛いと思い、飼主さんの了解を得てから、しゃがみこんでナデナデしていたら、その横から、親犬が出てきて、ボクの顔の前にマズルを近づけるや、レロンと、アゴからオデコまでをきれいにひと舐めされた。その際、背筋を伸ばした状態でしゃがみ込んでいたボクは、そのまんま後に、仰向けの状態で倒れた。そしたら、周囲のデカ犬たちがドッと押し寄せ、とっかえひっかえやってきては、それぞれが好きなようにボクの顔を舐めて行った。

最初の2頭くらいまでは覚えていたが、3頭目のヨダレが顔にデロリンとタレたところで目を閉じたボクは、もうドーデモよくなり、そのまんまでいた。ようやく一息ついて首を上げると、シャツもオヨダでデロンデロンである。こりゃドーニカせねばと思い、立ち上がろうとまずは四つん這いになったら、今度は、巨大なニューファンドランドに背後からカックンカックンとされてしまった。それを見て飼主さんたちはゲラゲラと笑うばかりで、ボクもそうするしかなかった。まさか、オマケにカックンされるとは思わなかったよ。

とまあ、そんな光景が当たり前というのもなんだが、あって不思議がないのがBWPなのだ。四つん這いになったとき、脇を急に固められたときはオドロイタよ、おっかさん。背後をとられた関取の気分みたいだったけど、その直後にドスンドスンとこられたときには、最初、何がなんだかわからなかった。小型犬や中型なら、リードを引っ張って制御するのも簡単かもしれないが、ニューファンドランドのしかも、その中でデカイほうの部類となると話は別だ。いやあ、イイとは言い難いけど、貴重な体験をさせてもらった。これからのボクは、メス犬のココロがわかるようになるかもしれない。なワケないな。以下は、当日に参加していた各犬種のお姿である。残念ながら、期待していたジャイアント・シュナウザーとレギュラーのプードルはいなかった。

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大型犬の定番のセント・バーナード。とりあえず大きい。目のまわりの毛色の違いで表情が豊かである。

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真っ白な毛色に目の横にうっすらとライトブラウンのラインが走ったり、走らなかったりのグレート・ピレニーズ。デカイゆえのグレートという名前は、なるほどである。ジャイアントしかり。まるでプロレスの世界である。

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ニュー・ファンドランドご一行様。とにかく、おっとりと大人しく、甘えん坊なニューファン、略してNFL。NFLとなると、今度は米国プロ・フットボールの世界である。

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またもやグレートで、こっちはデインあるいはデーンのグレート・デーンだ。デカイ甘えん坊である。向かって右のタン色がモミちゃんで、そのとなりにいるのが大椅子取りゲームで活躍していたお嬢さんだ。

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こと体高でいえば、このアイリッシュ・ウルフハウンドがギネス級だろうと思う。ボクが英国にいた頃、近所に5頭飼っていたお宅があったが、小学生時代のボクにとっては馬くらいのサイズに思えた。下は、当日参加した数々の中で唯一のオオカミ犬である。オオカミの血を引く犬で、それが1/4か1/8かはワカラナイ。でもご先祖様の地を色濃く引いているのだ。ボクは純粋なしかし飼いならされたオオカミにご挨拶させていただいた経験があるが、飼主以外には、ちょいと感情を排したスゴ味にある風貌だった。
オオカミ犬だよ1の1.jpg オオカミ犬だよ2.jpg

面白かったのは、初めてのロングドライブと外泊に加え、にぎやかなイベント会場の雰囲気、そして彼女にとっては見上げるばかりのビッグサイズの犬たちに圧倒されたスミレが、ふだんなら自分からそうすることはまずないのに、クルマのほうに行ってキュンと鳴いた。そしてドアを開けるやいなや、飛んで乗り込み、すぐさま横になって寝込んだことだ。思うように惰眠をむさぼることもできず、ようやく広い場所に来たと思ったら、巨犬の国に来てしまった。こちらを向いていないとはいえ、ブースのそばには、司会者の趣味がバッチリと反映された80sの曲が大音量で流れ、イベント進行の司会の声が響く。聴覚も鋭いことも手伝い、スミレはとにかく眠りこけたかったようである。で、実際にそうしたのだ。

車内で眠るスミレ.JPG

すべてがオーバーロード状態で車中に逃げ込み、コンコンと眠るスミレ。当初は、下のようにクンクンする余裕があったのだけれど...。もしかすると、クンクンしているレウさんとは、春に一度会っているからで、そのい確認もあったのかもしれない。
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BWPの会場では、ニューファンのレウさんと飼主のM君など、TwitterやFacebookで知り合った方々にお会いできた。そしてブッチは、寿命の短いビッグ、そしてジャイアントな犬の飼主さんたちからの関心も集め、おかげさまでイベントスペシャルとして用意して持参したフードは見事に完売した。カタログも、持って行ったぶんは、ほぼなくなった。

昼の仮装1.JPG 昼の仮想 II.jpg

引き続きイベント会場の様子をお届けする。上はお昼のランチタイムを利用した仮装パレードの一幕である。チョンマゲのズラたあ、恐れ入った。下は犬種別撮影のもので、レオンベルガーだ。そして、これまた、あまりお目にかかる機会のないピレネーゼ・マスチフである。

レオンベルガーご一行.JPG ピレネーゼマスチフ.JPG

ところで、最後にブース出店者の各社より、一頭の犬を選んでの特別賞の授与があったのだが、ブッチ賞は、会場にほど近い北杜市からやってきていたMさんご一家のモミちゃんというタンのグレートデーンが選出された。モミちゃんは12月25日生まれゆえにそう命名されたのだそうだ。モミちゃんが選ばれたのは、Mさんのところの、たぶん中学生とおぼしきお嬢さんが、手綱さばきも見事に、大椅子取りゲームの予選で見事な動きを見せていたこと。モミちゃんは、まだ10ヶ月になるかならないかなのに、ほぼ成犬のサイズで巨大だ。しかし、まだパピーなので、リレーのときだったか、レース中にウンPをしてしまい、それで負けた。

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上から、椅子取りゲームで空いているイスを目指し、愛犬と失踪する飼い主たち。ルールでは、飼主がイスを確保して坐り、すぐに犬もオスワリをしなければイケナイ。皆、真剣である。それがイイのだ。勝つためには、粉の中のアメも素早く探し出さなければならない。昔、人気のあったTV番組、底抜け脱線ゲームのようである。司会の第一声が思い出される。「さあ、みなさま一週間ぶりの脱線タイム、底抜けに笑っていただきましょう」。下は、そんな競技の数々を、固唾をのんで見守るお婆ちゃんと孫だ。「あれま、転んじゃったよ」と言ったかどうかは不明だ。
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そのときの負けた悔しさと恥ずかしさによるものか、お嬢ちゃんは、スニーカーを脱ぐやいなや、ベソをかきそうになりながら、パッコンパッコンとモミちゃんをド突いていた。そのアンバランスな光景と申し訳なさそうなモミちゃんの表情がとても印象に残ったのだ。各競技もよく考えられていて、それを参加者は、ちゃんと勝ちに行くつもりで出場する。それがとてもいいのだ。遊びであるからこそ真剣にやって楽しむ。そして、それが楽しさを倍増させるのだ。二人三脚というのを見て「?」となった方もいることだろう。これは人が二人三脚で、それぞれが大型犬を連れて走るというものだ。大型と超のつくそれのパワーと慣性は、小型犬、中型犬の比じゃないからね。

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惜しくも予選で敗退してしまったが、大きなグレートデーンのモミちゃんとの連携が印象的だったことでブッチ賞を授与されたときのMさん母とお嬢ちゃん、そしてモミちゃんだ。モミちゃんはブッチに興味津々である。これで10ヶ月だよ。

そうして終了したイベント会場から、参加者たちが消えるのも早かった。なにせ日曜日の中央高速そばの会場である。渋滞箇所があるのは目に見えているからである。われわれブッチ隊も、早々に片付け、関係各位にご挨拶をして退散したのが、そのほぼ30分後。その直後の中央高速では、けっきょく、のべ40km近い大のつく渋滞を体験した。そして都内に到着するまで4時間半もかかった。わかってはいたけれど、八ヶ岳にほど近い高原の野辺山から東京に近づくに連れ、その気温の違いにはあらためて驚かされたのだった。

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上は、東京から個人参加されていたバーニーズの飼主さんと大型キャンパーで参加されていた飼主さんたちの一部。大型犬との旅となれば、しかも多頭とのそれとなれば、キャンパーは実に理にかなった足というか、賢明な選択肢となる。皆さん、あれからの帰り道はいかがでしたか? そして下は、主催者スタッフに皆さんのごく一部である。実に大きな愛を感じることのできたいいイベントでした。それもこれも皆様の努力と愛の賜物でございます。本当にお疲れさまでした。
主催者の皆様の一部.JPG



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